いつの世にも悪は絶えない…

その頃 徳川幕府は火付盗賊改方という
特別警察を設けていた
凶悪な賊の群れを容赦なく取り締まる為である

独自の機動性を与えられた
この火付盗賊改方の長官こそ　<鳥火野平蔵>
人呼んで　<満願成就の平蔵>　である


〔ワォー　ワンワンワンワン〕


《両替商　近江屋》

　「おっ　押し込みだー」〔バチョ〕
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　「わあああー」〔ベチョ〕

　　　　「お助け…」〔べチョ〕

　　　　　　　　　　　　　　　　「ぎゃああー」〔グチョ〕



・・・・・・・・・・

<翌朝の近江屋>

「ひでーこと　しやがる」
「女　子供まで　容赦なしだな　こりゃ」
「加藤様　こっちの　手代なんぞ　鼻の中までですぜ」


「皆のもの　ご苦労」

「お待ちしてました　鳥火野様」

「こりゃ　ひでーな　で　誰の仕業か目星はついたか」

「どうも　朽ち縄の源八の一味が　
　また　江戸に舞い戻ったみてぇで
　↓　　　　コイツが　落ちてました」



「朽ち縄の源助　南蛮渡来のパイを使った　
　急ぎ働きのパイ投げ強盗か…ゆるせねぇな」






・・・・・・・・・・
　

<三日後の夜四つ　街道はずれの蕎麦屋　遠井>

「朽ち縄の頭　上手く行きやぁしたね」

「おお　これで　しばらく江戸とも　おさらばだ」




〔ガタッガタッ　ドン〕

「だっ　誰だ！」



「火付盗賊改方　鳥火野平蔵である　
　朽ち縄の源八！　神妙に縛に付け！」

「やべー　満平だ！　火盗の満平だ！」

「おいおい慌てるな源八！　お上にも慈悲はある！　
　お前に最後の機会をやらあ　無駄知識を言って　
　　　　もし　満へぇ～出したら　見逃してやろう」

「おお　本当か！　無駄知識だとー　やってやらぁ！　
　　　　　　いいか　取って置きのを　言うぞ　
　　　　　　　　　　みんな静かに聞けよー　シーッ」





「千利休の…　　　　　本名は…　　　　　　『田中』…」






「へぇーへぇーへぇーへぇー…へぇー」
「へぇーへぇーへぇー…」
「へぇーへぇーへぇーへぇーへぇー…」

「千利休の本名は『田中』…　 五拾四へぇー」




「残念だったな　朽ち縄の　
　銀の脳も貰えねぇな　
　悪いがそのネタ　活戸屋に脅された事件で有名になった
例の富士屋の瓦版で　前に読んじまったよ　
　ホラよ　五拾四文だ　冥土の駄賃にしな

　さあ　あきらめて　神妙に縛に付け！朽ち縄の源八！
　ものども　ひっ捕らえろ！　手向かうヤツは斬って捨てー」


〔ビッシッ　バッシッ　ドッカ〕

「イテテテ…　糠喜びさせやがって　
　よく見りゃ　審査員はみんな　火盗のヤツじゃねぇか
　　　　　　　　クッソー　　憶えていやがれ　平蔵！！」

「だまれ！　引っ立てー」






・・・・・・・・・・


《鳥火野平蔵邸》

「殿様　お酒の用意が…」

「おお　千代か　月が綺麗だぜ」

「あの殿様　お聞きしても宜しゅう御座いますか？」

「うむ　なんだ」

「例の『満へぇー』というのは　本当に出るのでしょうか？」

「『満へぇー』か……　　出ねぇよ
　『満へぇー』は　出しちゃ　いけネーんだよ」

「はあ　出ないのですか」
　
「与力の森田　　ヤツにはどんなに驚いても
　十八へぇー以上は出さねぇように言ってある」

「一義様にで　御座いますか？」

「おお　そうさ」

「何故で御座います？」

「番組構成上の都合ってヤツさ」

「じゃあ　どうして　捕り物の度に　あのような事を」

「俺の極悪人たちへの裁きってとこかな　俺も酔狂が過ぎるのよ」

「どうも殿方のなさる事は　女の私には解りかねます」

「解からねぇか…　そりゃ　違いねぇ　ははははっ
　　　　　　　　　　　どうだ　お前も一杯付き合うか」

「はい　殿様…」


　　　　　　　　　　　　　　　　　終



　　　
♪エンディング・テーマ　　ジプシー・キングス

『インスピレイション』



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投げてはいけない◆パイ投げパイ◆