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2005/09/06
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カテゴリ:灯屋小劇場
《ある戦乱後の京》
桜花朝陽





《京の町外れ 闇黒寺》
箱庭シリーズ:五重塔(ゴールド)

「一体さん おはようございます」

(チェッ 朝から 貧乏くせい ガキが 来やがった…)
「おはようございます 吉松さん 今日はどこかへ お使いですか?」

「今日は旦那様の言い付けで 一体さんに御用がございまして」

(また 句京屋のヤツ また何かたくらんでやがるな)
「句京屋さんが? わたしに御用ですか?」

「はい うちの旦那様が 
 一体さんに お怪我の快気祝いの席を設けたいと申しておりまして
 ぜひとも一体さんに 句京屋へお越しいただきたくて参りました
 和尚様には 先ほどお話して もう許可をいただいてまいりました」


(はは~ん 句京屋め 毒でも一服 盛る気だな)
「そうですか わかりました 時刻には参りますとお伝えください」

「ところで 一体さん この前 虎と戦われたそうですね 
            京の町中 その噂でもちきりですよ」
 
(オイオイ 我輩は虎と戦ったんじゃなくて 
 バカ将軍の虎に 食・わ・れ・か・け・た・の)
「いやー 大したことではないですよ 吉松さん」
   
「禅の修行をすると 虎も恐くなくなるのですか?」

(そんなわけあるか!! 気を失ってただけだよ うっせいな!)
「恐怖というものも 実態があるわけじゃないですからね」

「いやー 一体さんは やっぱりすごいですね」

(さっさと帰れよ クソガキ! シッ!シッ!)
「まだまだ わたくしなどは修業の身で 南無…」

「それでは 一体さん お待ち申し上げております」






《句京屋》
出桁造りの商店1(カトー)

「吉松! 吉松!」

「はい 旦那様」

「お前 ちゃんと 一体さんにお伝えしたんだろうね」

「はい たしかに 時刻どおりに参られると」

「おかしいね 約束の時刻はとうに過ぎてるのに
 まだ 一体さんがお見えにならないんだよ 
 吉松 すまないが お前ちょっと見て来ておくれ」





「旦那様!~  旦那様!~ 大変です 一体さんが 一体さんが!~」

「どうしたんだい 落ち着いて おはなし!!」

「うちの店の裏ところにある堀の辺りに 
 人が集っているので 何かと思って 見に行きましたら
 橋の真ん中に大きな穴が開いていて 下を覗くと
 堀の 堀の底で 一体さんが座禅を組んでいらしゃいます」

「何でそんなところで 一体さんが座禅など」

「集ってた人に聞きましたら 一体さんが 満面の笑顔で 両手ふりふり
 鼻歌まじりで 橋を渡り始めて ちょうど橋の真ん中で 堀に落ちたそうです」

「なんだって!! あの橋は腐りかけてるから
 通れないようにしてあったのに どうして一体さんが?
 しかもあの堀には 水がないんだよ これは 大変だよ!!」 






ミニ盆景アイテム 掛け橋

「ちょっと みんな 通しておくれ 
      ややっ 本当に 一体さんだ」

(うん? ここはどこだ 痛てててて)
 「… …」

「お~い 一体さん! そこで何を?」 

(おっ 句京屋のバカ)
「… …」


「一体さん! 一体さん! なぜ黙ってるんです?」


(??? わあああ なんだあ 声がでねぇぞ)
「… …」


「まさか この橋を渡ったんですか?
 『このはし わたるべからず』って立て看板 立ってるでしょう?」
 

(普通 そんなの お前の嫌がらせの謎掛けだと思うだろうが 
 わざわざ全部 ひらがな で書いてあるし)
「… …」

「しかも 柵までしてあるのに この橋 腐ってんですよ 一体さん!」

(だったら そう書いとけよ!)
「… …」

「何でまた こんな腐ってる橋の真ん中なんかを歩いたんですか?」

(いまさら 我輩は はし<端> でなく 
  真ん中を歩きました 無問題! なんて言えねぇじゃん)
「… …」

「しかも 堀の底で座禅なんて…」

(コレは落ちたまんまの形なだけなの 偶然なの)
「… …」

「一体さん はやく上がってきてくださいよ!」

(動けないし 声もでねえから 何とかして知らせないと…)
「… …」

「一体さん 酔狂にもほどがありますよ まったく」


   [ポクポクポクポクポク チーン]
(おお 目は口ほどにものを言うだ!! 
 句京屋ちゃん 助けを求める我輩の目をご覧~ ねえ ご覧~)
「… …」

「一体さん なんで わたしの顔をジロジロ見るんです? 気味が悪いですよ」

(お前の不細工な顔など 見たくて見てんじゃねぇよ… わかれよ!バカ!)
「… …」

「??? おお その澄んだ 瞳! 
 そうか わかりましたぞ 一体さん
 
 これは説法だ そうに違いない!!

 橋の真ん中を歩く つまりこれは仏道の中庸を意味し
 堀の底の座禅とは 心の奥底に坐して己が仏性を求めよ
 
 日々暮らしのなかで心を偏らす事なく
 深く自分の心を見つめよという無言の説法でございますな

 おお これはありがたい 皆の衆 これは一体さんの
 身の危険も省みず説法をなされたお姿ですぞ すばらしい」

(上手いこと言うじゃん 句京屋!
 うちの和尚でもそんな 上手いこといわねえぞ)
「… …」

「そうだったのですか ありがたいですの」

(なんか 勘違いでエライ坊さんみたいになってるよ!!)
「… …」

「おおお ありがたや~ 一体様~ 南無南無南無 … …」

(そこのクソジジイ 我輩はまだ生きてるんだから
  手なんか合わしてんじゃねぇよ 縁起でもねぇ)
「… …」

「ありがたや」 「ありがたいの」 「本当じゃ ありがたいの」

(オーイ そこの烏合の衆の愚か者ども 
 我輩はそんなつもりはないですから ありがたがってねぇで 助けろよ~)
「… …」




「そもそも 皆の衆 お釈迦様が説かれた教えというものは …」

(オイ 句京屋 もう講釈はいいから いい加減気付け なっ)
「… …」

「菩提樹の下で 座禅を組まれ…」

(句京屋!! コラ てめぇ 仏教オタク!)
「… …」

「遠い天竺にある 鹿野苑というと所で はじめて …」

(句京屋!! 句京屋!…   句京屋さん …  あの…  句京屋様…)
「… …」

「お釈迦様は 具体的方法として 八正道という … 」

(はやくして…  足 折れてますから …  我輩 …)
「うぐぐ…」






 
「拈華微笑」
言葉にならぬ法もある 南無
 
 一体さん~『このはしわたるべからず』の巻~






おわり




登場人物解説
 
一体= 
    一体豊潤。 高貴な生まれながら 理由あって親元を離れ
    闇黒寺で修行するプチ坊主 
    早く親から離されたため 性格が少し屈折していて 
    他人を信用しない 顔は笑っているが 心はいつも ブルー
    しかし 後に日本屈指の名僧となる  
    特技 頓智          

句京屋善兵衛=
    京の町の豪商で幕府の出入り商人。
    貧困に喘ぐ町衆には手を差し伸べ、
    仏門に帰依するとってもいい人 
    一体の成長を陰に日向に見守っている。
    

吉松=
    句京屋に奉公する丁稚。
    一体に憧れを持つ素直な男の子。 





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最終更新日  2005/09/07 05:47:07 PM
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