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テーマ:DVD映画鑑賞(14139)
カテゴリ:映画・ビデオ・DVD
【スタッフ】監督:園子温/プロデューサー:浅野博貴・鈴木剛/企画:浅野博貴/脚本:園子温
【キャスト】田中哲司/夏生ゆうな/村上淳/市川実和子/オダギリジョー/小嶺麗奈/臼田あさ美/手塚とおる/温水洋一/岩松了/麿赤兒/菜葉菜 【ストーリー】鈴木ムツゴロウ(田中哲司)はパッとしない舞台俳優。同棲中のタエコ(夏生ゆうな)もそんなムツゴロウに半ば愛想を尽かしていた。ムツゴロウは三流小劇団の看板女優ランコ(市川実和子)とも関係を持っている。ムツゴロウの体調に異変が起きる。性病だと直感したムツゴロウはランコへの疑惑を強めてランコを追及するがランコに逆ギレされ家を追い出されてしまう。ムツゴロウが家に戻ると、今度はタエコが家出の準備中であった。酒の勢いに任せてその場を乗り切ろうとして酔いつぶれたムツゴロウが目を覚ましたとき、彼は夢の中とも現実ともつかない世界を彷徨いだす。取調べ中の容疑者、銃弾を浴びて血まみれのテロリスト・・・。彼らはムツゴロウの分身であった。ムツゴロウは故郷に向かう汽車に乗る。汽車の中で彼を待っていたものは、高校時代の同級生そっくりな男(オダギリジョー)とその彼女。ふたりはムツゴロウの側にやって来て、自分達はエイリアンだと言い張る。男が席を外した隙をみて若い女はムツゴロウを挑発するのだが・・・。 広告学校時代の友だちでやたら絵の上手い奴がいた。広告のADをやらせるよりもイラストレーターか本格的に画家を目指したほうがいいんじゃないかというくらいの腕前であった。 彼が書いたイラストに「夢の中へ」という連作があって、ちゃんとした製本はなされていなかったけれど100部くらいのオフセット印刷で自費出版したその作品集を買った。 「夢の中」の主人公が次々といろいろな世界に飛び込んでいって、役割を変えた身近な人物(のメタフォルモーゼ)とつまらない会話をしたり一緒に空を飛んだり、船で川を下るといった内容である。現物が残っていたり当人と連絡が取れれば是非ともここで紹介したいような作品であった。 この「夢の中へ」の主人公もその「イラスト集」と同じように、いくつもの夢の中を行き来して、役割を変えた身近な人物(父親、同棲中の彼女、親友、etc)と取り止めのない会話にうつつを抜かしたり、テロリストとして暗躍したりする。 最初にこの映画を見たときはその友人がこの映画にからんでいるんじゃないかと思ったがそういうことではないようだ。 偶然というか、人の見る夢には限りなく相似性があるということなのだろう。ものすごく興味深いテーマだと思う。こういうところに目をつけて一本映画を撮ってしまうところがこの人(園子温)のすごいところだ。 主人公を演じる田中哲司は多芸な人だなと思う。ちょっとバイオグラフィーで今までの出演映画を見たら、かなりの数 自分が見ていたものばかりであった。「あぶない刑事」の最新映画にも出ていたのだが気が付かずにいた。それだけ「あたえられた役に自分を近づける」ということの出来る人なのだろう。 それと、意外だったのが臼田あさ美の女優としての力量である。ただのCMモデルあがりのテレビタレントくらいの感じで見ていたが、この映画に出てくる臼田演じる主人公の妹は非常に生き生きしていて、登場した人物の中で一番輝いていた。 いいのかこれで?というか臼田は深夜の素人のど自慢の番組でアシスタントをやってるくらいならもっとこういうインディーズ系の映画にもっと出てほしい。本気でそう思った。いい女優になるはずだ。 もひとつこのDVDで面白かったのは、本編で使われなかった別テイクが収められていて、それを見比べることでこの「映画」が目指した方向性がわりかしはっきりとしてくることである。 故郷に帰ってきたムツゴロウ達と地元に残って床屋を継いでいる高校の同級生が庭先で会話するシーンが3テイクくらい収められているのだが、ちゃんとしたシナリオなしで三人がとりどめのない会話をするシーンを一台のカメラで延々と追うのだ。 「文房具屋のおばちゃん元気?」 「ああ、死んだよ・・・」 「えっ、マジ?」 「マジ マジ」 「なんで?」 「事故・・・、ほらあの交差点の・・・あそこでクルマに撥ねられて・・・」 みたいなアドリブっぽい会話がカメラアングルを替えたり、パターンを替えたりして延々と繰り返されている。 これを見てどう思うかだ。 園子温(その しおん)というと「自殺サークル」のように、突っ込んでゆくようなドタバタとしたカメラワークと、意味があるの?と言いたくなるような長い間合いなどで好き嫌いのわかれる映画監督のひとりだが、この「夢の中へ」(のメイキング映像)を見てこの人が心掛けていること、目指しているものがわかりかけてきた。それはこれから決してムダになるものではないであろうと思う。マルチアングル、マルチサウンドで姿かたちの見えないカメラのようなものがあればこの人の映画はよりもっとエンターテイメントの輝きを持ち始めるであろう。 問題なのは彼(園子温)と彼ら(映画を見る人)を満足させるだけの機材がまだこの世に存在しないことのほうかと。無理言ってるようだが。 最近はこういう先走り系の映画監督がぞくぞくと日本映画界にデビューしそれぞれが鮮烈な作品を発表している。 嘘でもお世辞でもなく園子温はその中トップランナーだ。(NHKかよ。) スピルバーグあたり、園子温に30億円のくらいの資金を与えて映画を撮らせてはくれないものか。しみじみそう思った。しみじみ思うなよって。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006年11月04日 22時40分00秒
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