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国境なき うずら団

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2007年05月30日
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カテゴリ:東京で
 丁稚と印字したシャツを着ている男の子を見かけました。

 こんなところで丁稚に会うとは!

 今時、商法か時代劇でしか見かけなくなった身分ですがまだまだ東京には生息していたのでしょうか? 質素な紺のズボンに短髪は実に「らしい」のです。

 ここにはまだ江戸川乱歩の世界があります。道1つたがえると質屋があったり、昭和以前の平屋やお屋敷、樹齢も測れぬ立派な枝振りの木であったりと。真新しい高いマンション群に潜む低層住宅街を金星や木星に照らされて通り抜け通る時、異世界に踏み込むような危うさを感じられます。では、職業「丁稚」もまた確実に存在しているのでしょう。


 さて。
 彼を見かけたのは大型小売店舗の直ぐ前の混雑した駐輪場ででした。やけに人が遠巻きにしているので不思議に思って通りかかったら、少年がベンチに座って何やら必死に電話をしているのでした。シャツをいじりながら、平静を努めて携帯に語りかけていました。

 ああ、普通の若者ではないか。

 そのまま通り過ぎようとしたら、少し忙しない声が上がりました。訝しく見入ると、彼は泣いているのでした。頬を伝う線があまりにも透明で、暖かいビニールみたいだから驚きました。

 成程。
 それで、普段はこの木陰のベンチの側で監視しているシルバー人材センターのおじさんも気を利かしてあっちの方で立っているわけでしたか。おばちゃんたちも立ち話もせずにそそくさと駐輪場を離れ、いつもあちこちに自転車を押し込む人も決まり悪るくてきちんと自転車を並べているわけでしたか。見事なまでに今日は自転車が整列されているのには気が付いていましたが。

 どうしようもなく外にあふれ出す悲しみも、また人を圧倒する力がある。


 丁稚君、奉公はつらいのかい?
 程ほどにがんばれよ。





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最終更新日  2007年05月30日 13時38分50秒
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