国境なき　うずら団

　昼を回った頃は近所のマクドナルドの凪ぐ時間だ。サリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」を読むのには丁度いい。押井守「攻殻機動隊」で引用がよく出てくるものだからさっき店頭で見掛けて買って来たところだったし。もう売る気はなかったから気に入ったところは本の端を折ってすいすい読めた。ただ結末のところが以前に読んだのとは変わっているような気がしたけど。訳本元がアメリカバージョンだからなのかもしれないけれど、良く分からない。

　さて、一読してさあ折ったページを再び堪能してそれからまた読み直そうとしたところで、ちょっと気分が削がれた。世の中がとっても綺麗で白かったから雪球を作ってもぶつけられなくてただ握り締めていた話とか、死んだ弟の墓参りで雨が降るとたまらなくなる話とかに没頭しようとしたところだったのに。

　通りに面した入り口から声がよく通るお婆さんたちが入って来て目の前のテーブルに着いたんだけれど、店員を呼んで一緒に入ってきたらしい緑のバッタでちょっと騒ぎが起こったものだから。店員はチラシを筒にしてうまくバッタを捕まえて外に出したんだけれど、お婆さんたちが店内に轟く大声で
「殺さなかったらまた入ってくるじゃない」
「何で潰さないの」って。

　すごいねえ。
　眉を顰めて見上げたら、店員さんも「なニュートリノ、カミオカンデ」って感じで固まっていた。