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2010.05.08
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カテゴリ:BOOK
美しい表紙に惹かれて手に取った

志賀越(しがごえ)みち

京都の祇園町に興味のある方が読んでも面白いと思います。

青春時代が蘇ります。


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◇『志賀越みち』 著者・伊集院静さん
 (光文社・1890円)

 ◇京都を舞台に切ない恋
 1963年(東京オリンピックの前年)の京都を舞台にした長編小説。
東京の大学生・雅彦と祇園の舞妓(まいこ)・真祇乃(まきの)の
切ない恋愛を描いている。構想してから20年。
人生における恋愛の意味を問い、80年代に3年間暮らしたことのある
京都への思いを吐露した力作だ。

 「現代において恋愛小説が書きにくいのは実感しています。
現実の恋愛がフィクションを抜いてしまっているかもしれない。
そんな中で、男と女が愛し合って別れるだけの小説を書きたかった。
男女のどちらかが難病で死ぬとか、過去に受けたトラウマに苦しむとか、
そんなよくある設定ではない物語にしたかったのです」

 祇園のお茶屋の息子である級友を訪ねた雅彦は、春の建仁寺で真祇乃に出会う。
行動が制約される舞妓と、祇園のしきたりがわからない青年の切ない恋。
携帯電話もインターネットもない時代に、もどかしい時間を経て、徐々に深まっていく。

 真祇乃は真情を見せながらも、生い立ちや行動はどこか謎めいている。
雅彦は少しずつ生きることのつらさを知り、世間というものを傷つきながら学ぶことになる。季節の移ろいが美しく、人々の会話が柔らかい。

 「京都とは何か。街自体が持っている不思議な力があるのです。
土地の霊といえばいいか。京都には奥があり、そしてまた、その奥がある。
四季がはっきりとしていて、年中、祭りがある。寺社の境内や川のほとりなど、
たたずむ場所がたくさんあるのも魅力ですね」

 「私の考えでは、恋愛とはこの世に生きてきてよかった、と思えること」と語る一方で、「恋愛はいつもカネと階級の問題を映し出す」とも解説する。

 ゆったりとした端正な文章は、古都を描くのにふさわしい。今年2月に還暦を迎えた。
「60歳になったら、仕事をしようと思っていました。
今までも一生懸命やってきたけれど、人より遊んできたので。
初心に帰って、テーマも文章もみずみずしいものにしたいと思いました」
<文・重里徹也/写真・荒牧万佐行>

毎日新聞 2010年3月28日 東京朝刊











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Last updated  2010.05.08 23:37:23
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