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カテゴリ:旅の中の日常
つづきですので、
翳りゆく桃源郷ー○○湖温~(1) →(2) → (3)の順にお読み下さい そのステージが終わると、他の客は帰っていった。w 一緒に出て行きたかったが、どうも明るいところで顔を合わせるのが、怖くて、そのまま残っていた。 曲が流れて、最後のステージだと告げるアナウンスがあり、次のショーが始まった。 おぉ、なんと色っぽくてきれいなおねえさん! ポスターに載っていた踊り子さんだった。 はじめから出てきいたら、さっきまで居た客も喜んだだろうに! ますます悪い気がして、自分だけが見ていることに気が引けた。しかし、2分ぐらいしたときダンスをやめてしまった踊り子のお姉さんが、驚いた事にステージから話しかけてきた。 「客もいないし、もうやめてもいい?」とけだるそうに言った。 「????」 客が居ないって、ココにいるボクは何? あんた誰に話しかけてるの?金払ってないけど一応客でしょ、それに客も呼んできたじゃないか~~~。 心の中で、叫んだ。 経験したことのない事に囲まれていると、人間はちゃんとした判断を下せない。 「はい」と言ったと思う、とにかく頷いていた。 しばらくして、音楽がぷつりと止まり、ぼんやりと客室灯が点いた。ぼーとした光と同じくらいぼーとして動けなかった。 たぶん何も考えていなかったと思う。何分か過ぎただろうと思うが、気が付いたら明るいステージに、先ほどの踊り子さんが立っていた。 「ごめんね。もう劇場閉めるって言ってるから・・・」 「お客呼んできてくれたんだってね」 「ありがとね」 「これからみんなで飲みに行くんだけど・・・」 「よかったら一緒にどう?」 「いいんですか?」と言ったつもりだが、おそらく苦笑いをしただけだったと思う 「じゃ、裏で待っててくれる?」 なんで、誘われたんだろう。そんなことをぼんやり考えながら、歩道の縁石に乗ったり降りたりしながら、みんなが出てくるのを待っていた。 「お待たせ!」 声を掛けてくれた踊り子さんと、先ほどのおばちゃん達がにぎやかに裏口から飛び出してきた。 「行くよ!ぼうや」と言わんばかりの勢いだ。 少し歩いたところにある飲み屋の2階の座敷で、飲み会は始まった。着くまでずっと、着いてもしばらくは、 【なんでこうしてみんなと一緒にいるんだろう、酒を飲んでるんだろう】 と心の中で呟き続けていた、と思う(^^ゞ(笑) しかし、あの普通だったおばちゃん達が、実は凄く面白くて芸達者だったって事が分かったとき、なんだかとても得した気分になって、無性に嬉しかった。この人達にも歴史があって、昔は人気を博した踊り子さん達だったんだねって、当たり前だけど、当たり前の事に気が付いた事に嬉しかったのかも知れない。 かなり酔っぱらっていたので、話の内容まではよく覚えていないけど、人の心のひだに、これほど微妙にそして上手に触るような会話を今まで経験したことがなかったな~って、思うくらい感心して、酔いしれた。 ここで、おばちゃん達が披露してくれた、得意技を一つ紹介しておきましょう(^_^) あそこに入れたゆで卵を、M字開脚した股から、放物線を描くように「ポ~ン」と飛び出させるんですよ。これを見たとき、何故かそのユーモラスな放物線と「ポン」という音が笑いのツボをついてしまい、声が出なくなるくらい笑ってしまった。 ポスターに載ってた踊り子さんは、次の日から他の土地の小屋にでる予定だそうで、先に宿に帰っていった。年上の踊り子さん達にとても可愛がられている感じがした。人の心の温かさに包まれているかのように、、、。 出て行きしなに振り返った時の、やさしい笑顔に心が癒される思いがした。 その笑顔を見たとき、まだ若い踊り子さんだった時のおばちゃん達に逢いたくなった。みんなそうやって、受け継いできたものがあるんだろうなと思う。 以前「親指Pの修業時代(上)、(下)」松浦理英子著 を読んだとき、この時の事を思い出した。相手の心を満たすことが如何に難しいかを考えさせられた小説だったが、この時の体験が重なって、より深い部分にまで踏み込んで考えさせられた気がする。 今では、もう殆どのストリップ小屋がなくなってしまい、もうそんな世界はなくなりつつ有るのかも知れない。 しかし、人とのふれあいの温かな部分は、ボクのこころの何処かで、まだ温かいままだ。 ー<完>ー 翳りゆく桃源郷ー○○湖温~(1) →(2) → (3)の順にお読み下さい お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 9, 2018 11:18:06 AM
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