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テーマ:心にのこる出来事(94)
カテゴリ:冒険少年の憂鬱
小学6年だったか、中1の夏だったか、今思い返してみるに、あまり定かではないのだけれど、たぶん小学6年の夏、友達と二人で兵庫県の生野まで遊びに行った事がある。
そのころ、蒸気機関車の写真を撮ることに萌えていたのだった。 鉄道雑誌で見たSLの写真で気に入ったのがあり、どうしてもその場所で写真を撮ってみたかった。友達と共謀して、無謀な冒険旅行を企てたってわけだ。もちろん親にはナイショでね。(^^ゞ(笑) 山陽本線「姫路駅」で乗換、播但線で1時間あまりの場所に有るのが生野だ。調べてみると生野町は和田山町、山東町、朝来町と合併して朝来市となっていた。自治体の再編成は、思い出にも作用してきそうだ。 京都からだと、3時間あまりの旅になる。朝早く出て10時ぐらいには到着したと思う。駅前はガランととして、店もほとんど無く、氷と看板の有る店に入って、「ひやしあめ」を飲んだのを覚えている。そこのおばちゃんに、これから行く場所を地図を見ながら教えてもらい。 「気を付けていきなさい!」と気のよさそうな笑顔で見送ってくれた。 線路沿いの道を歩いて目的地を目指したが、道は川や民家で、線路から離れることが多くなったので、線路の真横を歩いて行くことにした。 しばらく歩くと、トンネルがあった。当然道は、山のすそ野をぐるっと回るようになっている。地図で見るとかなり遠回りになるのがわかった。二人で相談した。 「どうする?」 「そやな」 「あっち回らなあかんけど、だいぶ遠いしな」 「うん」 「地図やったら、トンネルってそんなに長くないやん」 「うん」 「トンネル通って行こか!」 「あぶないんちゃん?」 「列車の本数すくないし、大丈夫やて」 こんな会話を少しして、結局トンネルを歩いて行くことにした。 トンネルの中はひんやりとしていて、暑い中を歩いてきてかいた汗が冷たくなるのが心地よかった。だんかん暗くなる。振り返るとさっき入ってきた入口が小さな○になって見えた。しかしトンネルが歪曲しているのか、進行方向の出口の灯りは見えなかった。殆ど真っ暗な中を足で線路を確認しながらゆっくり歩いた。 「大丈夫かな?」 「なにが?」 「列車こないかな?」 「トンネルの中やし響くからわかるやろ」 「速よ行こ!」 「・・・」 しばらく歩いた、何分ぐらいだったか覚えていない。前方に針の穴ぐらいの灯りが見えた。 「出口や」 「ほんまや」 「あんなに遠いのか」 「・・・・・・」 「なんや?」 「なんか音せえへんか?」 「そうか?」 「してるって」 ボクは、焦っていた、列車かもしれない。その焦りは友達にも伝わっていただろうし、友達の焦りがボクにもわかった。 「どうしよ」 「線路に耳つけて聞いてみよ」 二人で線路に耳を押し当て音を聞いた。間違いない列車が来ている。 「どっちから来てる?」 「そんなんわからって」 「走ろ!」 「どっちに走るの?」 「もう半分以上来てるはずやし、このまま走ろ!」 「ぐずぐずしてたら危ないで」 「前から来たらどうするん?」 「だからそんなん考えてる暇ないやん、行くで!」 そう言ってボクは走りだした。 「こけんように、気つけや!!!」 「大丈夫か?」 「大丈夫」 そう言って走った。躓いて転けそうになりながら走った。 さっきひんやりと冷たかった汗も再び沸騰したように飛び散った。 前から来たらどうする?そう言った友達の声が心の中で何度も繰り返された。もう出口の灯りはバスケットボールぐらいの大きさになっていた。その時。 ゴォーーーーーー! と途轍もなく大きな音が炸裂した。トンネルに入ってきたんだ。大声で叫んだ 「大丈夫かぁ!」 「大丈夫やで!」 「あの音、列車やろ!」 「そや、前からとちゃうから、大丈夫や、速く!」 「大丈夫か?」 「大丈夫や」 このやり取りを繰り返し、全速力で走った。もう必死だった。 音はだんだん大きくなり、掛け合う声も聞き取りにくくなってきた。もうすぐだ。絶対間に間に合う!と言い聞かせながら。 「出たらな!」 「何?」 「トンネル出たら、ボクが右に飛ぶから、お前が左やで!!」 「わかった!」 最後の声は殆ど聞き取れなかった。 「行くで!」 右に思いっきり飛び退いた。ちらっと友達も飛んだのが見えた。 1・2・3・4・ ゴォ~~~~~~。 機関車がトンネルから飛び出してきた。熱気が身体を包んだ。 同じぐらい身体も熱かったので、暑さは感じなかったが、煙に包まれて、しばらく何も見えない、目が痛いので目も開けられず、列車の轟音を聞きながら壁にもたれていた。 列車は通り過ぎた。煙が薄らいで行く中で、友達をよんだ。 「大丈夫か~」 「大丈夫やで」 心臓が張り裂けそうにドキドキしていた。 「危なかったな」 「帰りは、トンネルやめよな・・・」 「そやな、、、、」 つづく、、、 よい子のみなさん、こんな危ないことは絶対にしないでね。(^_^) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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