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September 6, 2005
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カテゴリ:冒険少年の憂鬱
しばらく呆然として、殆ど言葉も交わさず、ふらふら歩いていった。目的の撮影場所は、見つかるには見つかったが、数本のSLをやり過ごし、ぼんやりしていた。

「次のは撮ろな!」
そう言って、撮影準備を始める。と言ってもバッグからカメラを取り出すだけなんだけどね。まぁ、気持ちの問題なんだ。

2,3回はSL牽引の列車を撮影した。
それから、二人はまた歩き出した。別にそう決めたわけでもなく、ただふらふらと歩き出した。少し行くと線路が曲がって、その向こうに渓谷が現れた。すごくきれいな景色だった。その先に鉄橋が見え、山の緑が先ほどまでのぼんやりした意識をしゃきっとしてくれたようだった。

「この鉄橋を渡るSLを撮ろうよ」
「どっちから撮る方がいいと思う?」
これが、悪魔のささやきだった。(>_<)
「そりゃ、あっちからこっちを撮った方がいいやん!」
「そやな。。」
と言うわけで、向こう岸まで行くことになったのだけれど、橋がない。
「橋ないけど、鉄橋を渡れば大丈夫や」
「そやな、これも橋やし」
二人で鉄橋まで這い上がり、鉄橋を渡り始めた。
遠くから見ていた鉄橋は、短く見えたけど、登って見ると向こう岸までかなりの距離があるように思えた。
通路はアルにはあるのだが、所々に穴が空いた状態になっていて、歩きにくかった。その時汽笛が鳴った。

「来たで!」
「まだ、だいぶ遠くやし大丈夫やろ」
気楽に考えていた。トンネルから比べると距離は遙かにみじかいし、暗闇じゃない分恐怖心もないわけで、軽く考えていたと思う。

しかし、今回は見えるのだ。近づいてくる列車に迫力がある。
その分の焦りを理解していなかった。その時、
「あっ、、、」
と言う声を上げて、友達が足を取られた。通路の穴の部分に落ちたのだ。戻って助けようとした。下は岩場の多い渓谷だった。落ちたら大変なことになる。友達の手をしっかり掴んだ。
しかし、ドラマのようにはいかない。そう簡単に引き上げることは出来なかった。ましてや、列車が近づいていることで焦っていた。

列車が鉄橋に入ってきた。
「どうしたらいいんだ」
「・・・・・・」
友達の返事はなかった。

こんな所にしゃがんでいたら、列車にひかれてしまう!

隣の穴に潜り込んだ。鉄橋にふたりでぶら下がったのだ。
列車は何事もなかったかのように通り過ぎていった。
ボクは、完全に潜っていなかった。肘のところで支えていたので。
列車が通り過ぎると、直ぐに上がることが出来た。しかし友達を引き上げることが出来ない。焦った。

手が滑ると危ないので、片手で自分のベルトを外し、友達の手首に巻いた。これで何とか滑らなくなった。通路に腰を落として、ゆっくりと引き上げた。
「もう片方の手も、掴んで!」
「・・・・・・・」
必死で引き上げた。どれだけの時間がかかったのかわからない。
やっと引き上げたときには、ベルトが汗で濡れていた。

さすがにその時は、さっきより安堵したとおもう。
何もかもが見えるという恐怖は、ホントにボク達をおびえさせていた。そう、そしてその場所から引き返した。もう写真を撮る事も忘れたかのように、黙って今来た道を戻っていった。

帰りはトンネルも通らず山道を歩いて戻った。山道を抜けてやっと線路沿いの道に出たとき、大好きな蒸気機関車が、前方からもくもくと煙を吐いて、走ってきた。ボクは友達の顔を見た。
そして、ふたりで笑った。やっと笑えた。駅までの道のりの間、ずっと笑っていた気がする。

着いたときによった店で、カレーライスを食べた。
その時のカレーの味とおばちゃんの笑顔は、今でも覚えている。

ー完ー

追記:スティーブン:キング原作の映画「スタンド・バイ・ミー」を見たとき、世の中には同じような奴がいるもんだと、変な喜びを感じたのでした。





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Last updated  September 6, 2005 11:14:06 AM
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