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テーマ:旅のあれこれ(10281)
カテゴリ:旅の中の日常
ニューヨークの楽しみのひとつにライブがある。訪れるたびにライブハウス巡りをした。次々と老舗ライブハウスが閉鎖されいるので、訪れておいて良かったと思う。いつもニューヨークに着くと情報誌を街角のスタンドで購入し、ホテルでくまなく読むようにしていた。滞在中に開催されているライブやイベントをチェックするためだ。
この時のメインミュージシャンは、今手元に当時の資料がないので定かではないのだが、たしかソニー・ロリンズだったと思う。 ライブが始まるのは、10時からだったので、その近くで夕ご飯を食べようと、ぶらぶらと適当な店を探した。しかし、なかなか決まらず結局ボトムラインの斜め前にあるヘルシー系のレストランに入った。 玄米のピラフや野菜たっぷり焼きそば等、ヘルシー系を注文する。 しかし、出てきた料理をみてビックリ、確かにヘルシーなのだけど量が半端じゃなく多い。山盛りの料理に圧倒された。 品数をそんなに頼まなかったにもかかわらず、食べるのに苦労するほどの量だ。そして甘いものに目がないボクは、チョコレートケーキを注文した。興味深かったのはそのケーキの名前だ。 「ミシシッピー・マッド・ケーキ」 ミシシッピーの泥ケーキと名付けられたそのケーキは、チョコレートベースのスポンジケーキにごてごてとチョコレートでコーティングされたまさに泥のようなケーキだった。そして泥の味がしたとは言わないが、舌触りはまるで泥のようだった。解けきってないグラニュー糖がざらざらと砂利のように舌を刺激し、その上強烈に甘い。 どこがヘルシーレストランだ~~~ぁ! 胃がもたれそうな食事を済ませ、ボトムラインの入場の列に並ぶ、無事に当日券を購入して店内に入った。店内はステージの前にずらっと並ぶ丸テーブルがあり、その後ろは立って見ることが出来るようになっていた。入口から続くカウンターは、バーになっていてお酒を飲みながらライブを見ることが出来るようだ。 ボクは早速ジャックダニエルズのロックを注文して、そのままカウンターにもたれながら、ちびちびとグラスをすすり、ライブに聴き入った。人がいっぱいで、もう元の席には戻れなかったからだ。 しばらくするとボクの前に2人組の男が割り込んできた。そして2人は寄り添いながら、首筋にキスし有ったり、うなじをさすり有ったりと、なんだか目障りになってきた。男女のカップルだったらまだしも、目の前で毛むくじゃらな男がじゃれ合っているのは、気分のいいものではないのだ。なんと言って注意をしたらいいのか分からず、煩わしい気持ちのまま、なるべく前を気にしないようにして演奏を聴いていた。 ボクの横には、如何にもニューヨーカーといった装いのおしゃれなカップルが並んで見ていた。ボクがファッションショーの企画者だったら絶対にモデルに使うぞと思えるほどカッコイイ男性だ。 なんで男の方なのだと言う突っ込みはしないでください、女性の方はボクの位置からは、ちゃんと見えなかったからです。(^_^) ボクが嫌そうな顔をしていたのが分かったのか、そのカッコイイ男性が、前にいた男たちに注意をしてくれた。その仕草がまたカッコイイのだ。人に意見をする仕方がこんなにも様になっている人を今まで見たことがないと言わせるぐらい、自然に、しかも強制力のある注意の仕方だった。ボクはそのカッコイイ男性に礼をいいその男性はにこっと笑顔で返した。 ステージの休憩中に3杯目のバーボンを飲みながら、隣の男性にさっきのお礼をもう一度丁寧にした。一緒にいた女性がすごくゴージャスだった。これほどマンハッタンの夜景が似合う女はいないんじゃないかと思うほどだ。 折角だと思い、その男性に 「この辺りで、お薦めの場所や店はありますか?」 と質問してみた。 こんなにカッコイイ人だったら、きっと、とびきりお洒落な場所や店を教えてくれるんじゃないかと思ったからだ。 何カ所か教えてくれたのだけれど、メモも持っていなかったので、聞くだけでは殆ど覚えてられない。と言うよりも、ざわざわしたと店内で、ぼそぼそと早口で喋る彼の言葉は殆ど聞き取れない程だった。殆ど雰囲気で返事をしていた。 後半は、変な男のカップルもいなくなり、ゆっくりとライブを楽しむことが出来た。ライブが終わって出口に人混みが移動するのを待っているボクの目に、ボトムラインのロゴがプリントされたTシャツが目にとまった。 「そのTシャツが欲しいんだけど、値段はいくらですか?」 と側にいるスタッフジャケットを着た人にきいた。 「あれは売りもんじゃないんだ」 「どうしても欲しいので、売って貰えませんか?」 「・・・マネージャーに聞いてみるから、ちょっとココで待っててもらえるかな」 そう言って彼は店の奥へと歩き去った。 10分ぐらい待たされた。客はもう殆ど店から出ていき店内はがらんとしていた。 口ひげを生やした男性が先ほどのスタッフと一緒にボクのところに来たので、もう一度売って欲しいと頼んだ。 「これは売りもんじゃないんだけどな、そんなに言うなら売って上げてもいいよ、何枚欲しいんだ?」 「3枚でもいいですか?」 「オーケー」 1着10ドルだと言うので、30ドルを渡した。 お礼を言って店を出た。 その後、そのTシャツは販売されるようになったみたいだが、その時点では非売品だったので、ボクはひとり満足だった。 外に出ると、時間はもう夜中の1時を過ぎていた。ニューヨークのライブハウスを十分に堪能した夜だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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