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テーマ:☆★バイク★☆(8191)
カテゴリ:冒険少年の憂鬱
続きものですので決死の捜索(上)からお読み下さると嬉しいです。
しかしこちらは原付だ、あっちは最新の2サイクル250ccだ、普通では追いつくわけがない。 前方には青信号があった。 そこの信号! 赤になれ! 念じた。 頼む信号よ、赤になってくれと強く念じた。 信号は、黄色に変わり、そして赤になった。 落ち着け!落ち着くんだ。そう自分に言い聞かせた。今度は、信号よ、まだ青に変わるんじゃないぞと思いながら、バイクに近づいていった。ナンバーを確認できる距離まで来た。 間違いない、ボクのバイクだ。 バイクの横まで行き、隣に並んだ。並んだと同時に腕を伸ばしてキーを抜き取った。 「何すんねん!」 バイク泥棒は、そうがなり立てた。 「何ゆうてんねん! 泥棒が!」 「これはオレのじゃ、お前のやっていう証拠でもあるのか」 「自分のバイクぐらいわかる!」 彼は、バイクを降りて逃げようとした。ボクはあわててバイクを支え、スタンドを出して、彼を追いかけた。 彼はつまずいて転けそうになっていたので、直ぐに追いついた。 腕を掴んで、言い争いはつづく。 「おれと違う」 「何が違うねん」 「さっき友達からかりたんや」 「その友達は、何処にいる?」 かれは、指をさした。 その時、ふと道路に置き去りのバイクの事が気になって、振り返った。その瞬間、彼は腕を振り払って走り出した。後を追ったがが、置き去りにしたバイクが気になり、追いかけるのをやめた。 バイクのところまで走って戻った。一台ずつ歩道に移動させ、とりあえず2台のバイクを歩道に止めた。2台同時に運ぶことは出来ない。原付の方を、近所の民家にお願いして、しばらく預かってもらい、後でとりに行った。 ものすごく疲れていた。バイクを貸してくれた友人に礼をいい、帰ろうとしたが、被害届を出したことを思い出した。このままこのバイクに乗っていたら、ボクが捕まってしまう。 しかたなく、被害届を出した交番に事情を説明に行った。 「今書類を本所の方に送るところです」 「もう、いいです。自分で見つけましたから」 「じゃ、受け取りの書類を書いてもらわないと」 「また書くんですか?」 「決まりだから」 納得出来なかった。自分で見つけたものを自分で受け取るために自分で書類を書く? とにかく、早く帰りたかった。しかし書類を書いてる警官は、急ぐ様子もなく、いや、わざとのんびりと書いているように思えるくらい、だらだらしているように感じた。 「バイクは壊されたりしてなかったですか?」 そう聞かれた、はじめて気になった。書類を書いている途中だったが、表に飛び出して、街灯の下にバイクを移動させ、念入りにチェックした。燃料が殆どなくなっていた以外は、キズらしいキズもなかった。 書類を書き終わったのは、夜中の1時を過ぎていた。 「良く見つけたな」 帰り際に警官にそう言われた。確かにそうだ。奇跡的な夜だった。 一瞬一瞬がスローモーションのように思い出せる夜だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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