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January 7, 2006
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カテゴリ:冒険少年の憂鬱
1995年1月17日5時46分、大惨事は起こった。
最初の突き上げるような縦揺れで目が覚めた。次の瞬間ボクの頭の上には、次々と単行本が落ちてきた。ラックが倒れ、ラックに付いていたガラスの扉の破片が飛び散った。本立てが倒れて、ドアも開かなくなった。
「何が起こったんだ!」
カラダの上に落ちてきた単行本をかき分け、ライトを探した。
ベッドサイドにはライトになるようなものはなかった。
小さな液晶テレビがあるのを思い出し、スイッチを入れた。
液晶画面をライト代わりにして、部屋の中を照らしてみた。

散乱するCDや書籍の山、倒れかかったラックや本棚。
暗闇のなかで映し出された世界に、言葉を忘れた。

そして、ふと液晶画面をみると、倒れた高速道路が映っていた。
外では、大変な事が起こっている。
ただ、そんなぼんやりとした認識しか出来ていなかったのだ。

テレビの報道は、ほとんどなかった。ただただ映像が映し出されている。ヘリコプターから空撮された映像が、垂れ流しのように映し出されている。その映像がどの場所を映しているのかさえ、そのテレビは伝えていなかった。

しばらくして、冷静さを取り戻したボクは、割れたガラスで足を切らないように、素足にシーツを巻き付け、ドアが開くように倒れた棚を移動した。

外に出ると、大した様子の変化もなく、我が家で被害に遭ったのは、どうやらボクの部屋だけだったようだ。
少しするとテレビで、地震の事をしゃべり出した。震源は神戸のほうだった。ボクの家は、京都の近くだ。それでも、震度5と言うことだった。

神戸は、ボクが子どもの頃育ったまちだ。そして親戚も多いのだ。
それから、テレビのそばを離れることが出来なかった。その状況をもっと詳しく知りたかった。しかし、情報が錯綜していて実態が良く掴めなかった。初めて遭遇した事態は、人間にとって認識しにくいものなのだ。アナウンサーは、この大惨事をどういう言葉で伝えればいいのか分からないといった感じで、狼狽え、言葉が見つからない感じだった。アナウンサーが同じ言葉のしか繰り返さない事が、逆にその事態の重大さを伝えていた。

テレビはどのチャンネルも同じ映像だった。2時間ほど見ていたが、それでも実態が掴めないままだった。
ボクは、自分が担当している店が気になりだした。
店にはいっぱい棚が置いてある。その棚が倒れていたら大変だ。
そう思うと居ても立ってもいられなくなり、出勤時間にはまだ早かったのだけれど、車に飛び乗り店に向かった。

店は、思った程の被害を受けていなかった。棚は倒れることなく、整然と立ち並び、普段の様子を崩していなかった。ほっとした。
それでも、商品はいくらか落下し、通路は散らかっていたので、ひとつずつ拾って棚に戻す作業をしたのだった。

この日の記憶は、今でもハッキリと思い出すことが出来る。
そしてその夜は、燃えさかる神戸の街を見つめ続けた。
ボクが住んでいた街が、燃えている。そして今おじさんたちの住んでいる家に向かって、ドンドン火の手は広がっていった。おじさん宅に電話をいれても繋がらなかった。何度かけてもだめだった。
おじさんの家はお寺なので、電話が掛かってくる数が一般家庭よりずっと多いはずだ。
回線によって繋がり方が違うんじゃないかと思い、FAXの番号にかけてみた。

ー鳴った。呼び出し音が受話器の中で響いた。
「もしもし」
騒音のなかで、相手の声が弱々しく聞こえた。
「大丈夫なんですか?」
「みんな大丈夫だ。安心してくれ、ただ、うちは寺だから、大勢のご遺体が運び込まれて、今ゆっくり話している暇がないんだよ」
「わかりました。頑張ってください」

おじさんたちは、無事だったようだ。火事は直ぐ近くまで焼き尽くしたけれど、なんとか鎮火したとの事だった。
目をつぶると今でもテレビで見たあの炎が浮かんでくる。
ボクは、おじさんの声を聞いてほっとした。

そして、その翌日社長からこんな言葉を聞いた。
「取引先関連の神戸の店が、壊滅的なダメージを受け、営業が出来なくなったので、商品を買ってくれないかと頼まれたんです。商品を買ってあげようと思うので、一緒に行って買い取りの見積もりを上げてくれないかな?」

商品の見積もりといっても、被害状況を見てみないと、何とも言えない。それに、少しでも役に立つことなら、何としてでも協力したいという思いが強かった。

そして、社長と2人で、被災地に向かうことになった。

つづく、、、

阪神・淡路大震災(2)へ





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Last updated  February 12, 2015 05:39:49 PM
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