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ALBERT WORD

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瞳のアルベール

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2006.04.11
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よみきり小説の後編を載せておきます。


加賀は天音のほうを指で指す。
「久しぶりだな、天音」
「ひさしぶりだね焔(ほむら)。でも時間はそんなに長くないんだ」
「そうか」
「ねぇ、焔が私の事をまだ想ってくれるのはすごく嬉しかった、でもね」
「あたりまえだろ、俺は天音の事が大好きだ」
いつも俺がこう言えば天音は嬉しそうに下を向いて「嬉しいよ」と一言呟いてくれた。
しかし今回は違った。
天音は真剣な表情で俺のほうを見る。
「でもね・・・・もう、いいよ」
天音は目に涙をためながら、潤った眼差しでしっかりと俺を見て言う。
「もう、いいんだよ。焔は私を想っていつも先に進めなくなってる」
俺は、心がすごく冷たくなるのが分かった、体が冷たくなりすごい恐怖感に包まれる。
「なに、言ってるんだよ」
俺は誤魔化すようにそう言った。
「焔が先に進めないの見てると私は凄くつらいんだよ。なんで自分に嘘までついて私を想うの?」
・・・・ジブンニウソマデツイテ・・・・・・・・・・・・・。
何を言ってるのか分からなかった。
「何言ってるんだよ、俺が嘘を?」
「美鈴ちゃん」
俺は、目を逸らした。俺の1ッコ下の同じ高校の女の子。
「なんでいつも私にこだわろうとして、美鈴ちゃんを好きだって気持ちにまで嘘をつくの!!」
天音の言葉は力強かった。俺は一ヶ月前に告白された事を思い出した、あの時YESと答えるのを
言いたいはずの言葉を言えずに背を向けてしまった。
「・・・・・・・・・・・・」
言葉が出なった。天音を思い出とすることを恐れてた事を再認識する。
「そんな焔を見てるのが私とてもつらいの。私は思い出でいいよ、焔の思い出でいいから。焔はちゃんと今を見てよ」
「・・・・・・・・・・うん」
頷くのに数秒迷ったすえ俺は静かに頷いた。
天音のためにしてた事でココまで天音が苦しんでるなんて知りもしなかった。
天音だけじゃない俺は美鈴まで傷つけていたんだ。
「もうすぐ時間がなくなるぜ」
加賀がそう言った、降霊術の限界だろう。
そうすると何か企みのある笑みを浮かべ、加賀はヒューヒューと口笛を吹き、目を手で隠した。
こざかしい演技だ、コレは天音も多分そう思ってるのだろう。
「がんばってね焔」
「それじゃあな天音、お前は俺の思い出だ決して忘れない」
天音は目を閉じた、俺は自然と天音に近づき唇を重ねる。ほんの一瞬だった。
唇を離した時には天音はもう居なかった。
俺と加賀だけが残る。先に口を開いたのは加賀だった。
「天音さんに頼まれたんだ」
「そうか」
「がんばれよ!!」
「ああ、分かってるさ」
夜の公園で俺は加賀に別れを告げた。加賀はまた北海道に戻るらしい、イタコとして人々と幽霊を幸せにしたいらしい。
しかし、何故に男である加賀がイタコを目指したのかは分からない、普通は陰陽師とか僧侶だろ・・・。
周囲が女性ばかりってのが目当てだったのかもしれない、加賀らしいと思った。

そして2ヶ月後・・・・・・・。
俺の横にはいま美鈴がいる。
美鈴は今の俺にとって大事な恋人で、天音は俺の大事な桜色の思い出だ。
「なぁ美鈴」
俺は横を歩く美鈴に話しかける。
「ん、なんですか先輩?」
少しの沈黙・・・・・・・・・・・。
「手を繋ごうか」
「はい」
美鈴は少し恥ずかしそうに俺の方に手を伸ばす、俺はしっかりと手を
握り返した。
無言のまま歩く。お互いの手のぬくもりが伝わる。
俺は空を見上げた。あの夜から俺は悩んだすえ・・・・・美鈴を選んだ。
俺は心の中で卯月青空に向かってこう叫んだ。
「なぁ天音!俺はこんなに幸せだぜ。」






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最終更新日  2006.04.12 01:24:59
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