カテゴリ:アレルギーに配慮した商品
現在、アレルギー治療用ミルクは7種類販売されています。それをまとめたものが、こちらです。このフリーページに簡単に特徴を書いていますので、それをご覧いただければ、かなりのことは把握できると思いますが、それぞれのメリットやデメリットなどを背景を交えながら、書いていきたいと思います。ただし、これはあくまで耳情報や専門書をもとにした「私の自己解釈」ですので、何かありましても、責任は取れませんので、ご了承下さい。
意外と、アレルギー治療用ミルクなら、どのミルクでも良いように考えられている方が多いかもしれませんが、乳タンパクの分解度の違い、乳タンパクを用いて作ったミルクかどうか、乳成分以外の原材料の相違などにより、必ずしも、すべてのミルクがお子さんにあうわけではありません。 もちろん、最初に試したミルクが体質に合う場合が多いのですが、まったくどのミルクも合わずに、頭を抱えている方も少なくありません。そのような場合、特にミルク育児の方は、お子さんの症状が最低限になるようなミルク選びをしたり、他のミルクとの混合を考えて、日々模索していることが多いようです。また、母乳育児の方では、アレルギー治療用ミルクに変更したくても、どのミルクも合わないため、汗に涙しながら、頻回授乳を心がけて、混合育児から母乳オンリーにされた方も多いです。 そのため、アレルギーが判明したら、母乳育児中の方で、急遽、断乳を試みる方も多いですが、このような例も少なからずあることを考えて、まずは、赤ちゃんの体質に合うミルク選びをすること、それを忘れないようにして下さい。 牛乳成分で、アレルギーの原因となる主はタンパクは、カゼインと乳清タンパク(ラクトアルブミン・ラクトグロブリンなど)です。このうち、乳成分の大部分を占めるカゼインとβ-ラクトグロブリンが、ヒトの母乳には含まれていない異種タンパクです。そのため、これらのタンパクに対する消化能力が著しく低く、胃ではほとんど分解されず、未消化のまま、腸に到達して、吸収される可能性が高いことが、牛乳アレルギーの主な原因であろうと考えられています。 そのため、これらの乳タンパクを高度に酵素分解したものが、アレルギー治療用ミルクとなっております。もちろん、乳タンパクをそのまま分解しただけでは、赤ちゃんの消化器官に対する負担が大きいので、通常の育児ミルクと同様、母乳に近くなるようなタンパクや脂肪分の組成比になるように調整されています。 その観点から、いくつかの項目に分類して、アレルギー治療用ミルクについて、考えたいと思います <タンパク分解産物の種類> 牛乳タンパクに占める割合の多いカゼインを消化をして作られたミルクが、ニューMA-1(森永)・低脂肪MA-1(森永)・ペプディエット(ビーンスタークスノー)です。次に、乳清タンパクを分解して作られたミルクは、ミルフィーHP(明治)です。 カゼイン分解乳は牛乳の主要タンパクを分解することで、より効果的な治療効果を狙っているのですが、その分、風味が悪く、苦味が残ってしまいます。それに対し、乳清タンパクを分解したものは、幾分、風味が良くなり、赤ちゃんにとっては飲みやすくなるのがメリットで、それが昨年発売されたミルフィーHPで、最近のアレルギー治療ミルクの中で、よく用いられるようになりました。もちろん、明治さんからはその発売前にも乳清タンパクを分解したミルク(のびやか・エピトレス)により、いろいろ下地を作られてきたわけですが… そして、赤ちゃんの飲みやすさに観点をおいて、先月新たに発売されたのが、MA-mi(森永)です。このミルクはカゼインと乳清タンパクの両方を分解したペプチドタンパクが入っており、主に、ニューMA-1の風味の悪さの改善と溶けづらい面を改良したものだそうです。乳清タンパク分解産物を用いたミルクの方が風味が良いのは、牛乳がカゼイン約80%、乳清タンパク約20%の組成比で構成されているのに対し、母乳の約60%以上が乳清タンパクでできており(カゼインを含まないため)、通常の育児ミルクが母乳に近くなるように乳清タンパクを強化してあるところからもいえるのではないかなと思います。 ここで問題となるのが、今まで何度も書いてきた、「抗体の多様性」です。つまり、乳タンパクを認識する抗体の種類は1種類ではなく、たいていは複数個を持っていると考えられています。カゼインタンパクも1種類ではなく、数種類ありますし、乳清タンパクも同様です。どのタンパクを認識しているかによって、これらのミルクに対する反応性が変わってくると思います。また、1つのタンパクに対する抗体も1種類ではありません。複数個あります。同じカゼイン分解乳であっても、メーカーによって、分解に用いる酵素が違うことがほとんどですから、同じタンパク中でも分解される部位が異なりますし、また、分解されるタンパクの種類も異なる可能性が高いわけです。 そのため、単純に考えると、カゼインタンパクのみに反応するお子さんであれば、乳清タンパク分解乳を用いれば、症状が出なくなります。また、カゼインタンパク分解乳でも、お子さんの持っている抗体と反応する部位が分解されていれば、反応しなくなり、そのミルクを飲むことができます。同様に、乳清タンパクにのみ反応するお子さんは、カゼイン分解乳を用いると、症状が出なくなります。つまり、カゼインタンパクで反応する子どもの場合、例えば、MA-1で症状が出たとしても、ミルフィーHPでは症状が出ず、逆に、乳清タンパクに反応する子どもの場合、ミルフィーHPで症状が出たとしても、MA-1で症状が出ないわけです。 <タンパク分解産物の分子量> 次に、分解タンパクであるペプチドの大きさ(分子量)によっても、反応性が変わってくると思います。これはお子さんの消化能力の問題になると思いますが、どの大きさのタンパクなら分解できて、どの大きさのタンパクなら分解できない、または、ペプチドタンパクを未消化のまま、体内に取り込んだとしても、どの分子量レベルなら、抗体と反応しないかということだと思います。 アレルギー予防用ミルクは約3,500(=3.5kDa)以下になっている場合が多いと書きました。アレルギー治療用ミルクでは、ニューMA-1・低脂肪MA-1・ペプディエットが約1.0kDa以下、新しく発売されたMA-miは約1.5~2.0kDa以下、ミルフィーHPは約2.0~2.5kDa以下となっているそうで、MA-miとミルフィーHPはほぼ同じ分子量レベルに分解されているそうですが、製造過程での精製度がMA-miの方が良いため、残存する大きな分子量のタンパクがよりカットされているので、若干小さいかも…ということのようです。また、エレメンタルフォーミュラはこれらのペプチドタンパクにですら、敏感に反応してしまうお子さんのために作られた、アミノ酸からできたミルクです。アミノ酸の平均分子量が120Daなので、これがもっとも小さな分子となります。 まとめると、分子量の小さな方から、エレメンタルフォーミュラ<ニューMA-1・低脂肪MA-1・ペプディエット<MA-mi<もしくは≒ミルフィーHP<E赤ちゃん・アイクレオHP(予防用ミルク)<育児用ミルクとなるわけです 前回の日記で、「一般的に、5kDa以下のペプチドだと、アレルゲンになりにくいとされているが、実験的な知識・経験上、アミノ酸約10個(残基)レベル(アミノ酸平均分子量が120なので、約1.2~1.5kDa)もあれば、充分にアレルゲンとなりえ、この分子量レベルは、アレルギー治療用ミルクのペプチドレベルです」と書きました。 例えば、ニューMA-1などは約1kDa以下で、なるべくアミノ酸が8残基以内になるようにされているので、抗体との反応する確率がかなり減るように作られているのですが、やはり、重篤な体質の方には、これらの成分、もしくはわずかに残る、少し大きめのペプチドに反応してしまう可能性があるようです。 最初の項でも書きましたが、最近の治療法の流れというか、親が治療に望むミルクは、赤ちゃんに少しでも風味の良いミルクを飲ませたいというのが主流になりつつあり、昔のように、症状が出ないための、薬的な、風味を考えていないミルクを用いた治療重視の考えとは異なってきつつあるようです。 その先駆けが、明治のミルフィーHPですが、治療を重視した「苦味」がどうしても先に出てしまうニューMA-1よりは飲みやすいという感じです。その風味を良くするのは、上記で書いたように、乳清タンパクの加水分解物を用いることが1つですが、もう1つは、乳タンパクの分解度を高くすると、用いる酵素の苦味が出てしまうので、意図的に分解度を下げて、分子量を少し大きくして、風味重視を心がけて作られたミルクが、約2kDa前後以下の分子量と推測されるミルフィーHPであり、今回新たに発売されたMA-miだそうです。 そういう意味では、アレルギー予防用ミルクは、分子量が3.5kDa以下で、乳清タンパク分解産物とカゼイン分解産物の両方が入っているので、風味が治療用ミルクよりは明らかに良いことがわかってもらえると思います。とは言っても、普通の育児用ミルクに比べると、味が落ちるのは言うまでもありませんが、それは育児用ミルクと目的が異なるので、仕方のないことです。完璧を求めるのは無理なのですから… ということで、今回、新しく発売されたMA-miは、乳清タンパク分解産物・カゼイン分解産物を含み、予防用ミルクのE赤ちゃんの分子量が小さい版として作られ、風味改善を試みたものと思われます。 しかし、この小さな分子にまで反応してしまうお子さんもいます。そのお子さんのために、アミノ酸を用いて作られたミルクが、エレメンタルフォーミュラ(明治)です。アミノ酸のみで作られているため、浸透圧の関連から、下痢をしやすい傾向があるようです。また、このエレメンタルフォーミュラがあわない場合ですが、処方薬となりますが、エレンタールP(乳糖・大豆レシチンを含む)を使う場合もあるそうですが、稀かもしれません。でも、この処方薬の方が保健が効くというメリットもあるのですが… <No.2に続く> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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