カテゴリ:E【英語】英単語 英語表現
日本人よ、「語学マゾ」は、もうやめよう 元イェール大助教授が伝授!最強の英語勉強法(2)
中高生向けの英語塾をはじめたという元イェール大学助教授の斉藤淳氏。前回の連載第1回「なぜ日本のインテリは語学オンチなのか?」では、イェール大を辞めて塾の起業を決意するまでの経緯を聞いた。 今回は、発売以来、好調な売れ行きを見せているという『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』で語られている英語学習法のエッセンスについてインタビューさせていただいた。 斉藤氏の塾のカリキュラムは、「イェール大学の語学の授業」もヒントにして構築されたものだという。果たしてその核心はどこにあるのか? (聞き手:東洋経済オンライン編集部) ■筋トレ志向の「語学マゾ」に興味はなかった ――高校を出てまず上智大学の英語学科に入学されたとのことですが、やはり学生時代から英語がお好きだったのですか? 英語はかなり好きでしたね。私自身はネイティブスピーカーでも帰国子女でもなく、山形県酒田市のコメ農家で生まれ育った生粋の日本人です。 いわゆる「地頭がいい」タイプの生徒ではなくて、中学生のころの成績は校内でも「中の上」くらいでした。学校も地元の公立中学校です。 ですが、英語にはすごく興味があって、小学生の頃から祖父の短波ラジオを借りて英語の放送を聞いたり、歌詞カードを指でなぞりながら洋楽のレコードを聞いたりと、ちょっと変わったところはありましたね。 と言っても、上智の英語学科に入った時点で、「英語を勉強するぞ!」という気持ちはあんまりなかったんです。 ときどき英語学習者の方のなかには、語学のトレーニングそのものの達成感に満足している、いわば「語学マゾ」みたいな人がいますが、私の場合ははじめから「英語を使って好きなことをやりたい!」という意識が強かったと思います。 ■私たちはなぜ自転車に乗るのか? ――手段と目的とを混同してしまう人がいるということですね。 すでにいろんな方が指摘していることですが、語学って、考え方としては「自転車の乗り方をマスターする」という感覚に近いと思います。 スポーツでやる人ならいざ知らず、自転車にうまく乗れるようになるために、何十年もずっと練習している人はまずいないですよね。同じように、自転車の練習そのものに快感や達成感を見出している人もいない。 ただ、自転車に乗れると行動範囲が広がって便利だから、「ちょっとやってみようかな」という気持ちではじめるのが普通です。 最初は補助輪をつけて公園などの敷地で練習しますが、ある程度のレベルになったら、公道を走りますよね。 語学もまったくそれと同じ。ところが、中学・高校・大学と、何年にもわたって英語を学んでいるのに、いつまで経っても公園の中をぐるぐると走っていて、外の世界に飛び出していこうとしない人があまりに多い(笑)。 「これってすごくヘンだな」という思いは、当時からありました。 ――学習者本人はコツコツとがんばっているつもりでも、目標の設定がうまくいっていないというケースですね。 日本人はとくにそうした「苦行信奉」が強いように思います。いくら毎日訓練を続けていても、方法が間違っていれば、はっきり言って「ムダ」です。 えらく時間がかかるから、とても大変。でも大変だから、達成感はある。がんばっている気分になれるから、「続ける」ことができてしまう。そういう悪循環があると思います。 ■イェールには「発音矯正プログラム」が用意されている だからと言って、基礎をないがしろにしていいというわけではありません。前回もお話ししましたが、「何が語学習得の最短ルートなのか」については、世界の標準的な応用言語学の世界では、ある程度コンセンサスのとれた結論がすでに出ていると思っています。 それに沿って効率よく基礎を固め、あとはそれぞれが好きな方向に走りはじめればいいんです。 ――具体的には、どんな方法なのでしょうか? あえてひと言でまとめるなら、「徹底した発音トレーニング」と「動画教材を使ったインプット&アウトプット」の2本柱ですね。 「動画」の重要性については次回以降でお話しするとして、何よりもまずは「発音」です。発音こそはすべての語学学習の土台だと言っていい。 私自身、イェールの博士課程にいたころには、発音について多くを学ぶ機会がありました。イェールなど米国の大学では、学部生向けの授業を大学院生が受け持つことが多いのですが、非ネイティブの院生がいきなり講師になると、授業がうまくいかないことがあるんです。 そのため、非ネイティブの講師向けに「発音矯正プログラム」というものを大学側が用意しています。私も興味があって、これを受講してみたことがあるんですよ。 プログラムを担当しているのは、音声学の分野でPh.D.(博士号)を取得したような方たちですから、非常にわかりやすく発音のコツを教えてもらえます。彼らは英語だけでなく、いろいろな言語の音声に精通しているので、「日本人ってこの音を出すときに、どうしても舌がこの位置に来ちゃうんですよ。だから、もう少しこちら側にずらすように意識するといいですよ」というようなアドバイスができるんですよね。 ■小泉総理の英語が「うまい」と言える理由 ――それはすごい。日本式の「Repeat after me.」とはまた随分違いますね。 日本の語学教育においては、まさに発音の専門家が不足している状況です。発音について正確な知識を何も持たない人が、見よう見まねで覚えた音を、それぞれの「感覚」で教えている。だから学生たちが正しい発音を学べるチャンスはほとんどありません。 この現状はいわば、病理学の知識を持たない医師が内科医をしているようなものですから、考えてみると恐ろしい現実ですよね。これでは日本人の英語の発音が改善されないのも当然です。 ――発音については「日本人がネイティブのレベルを目指す必要はない。意思疎通ができれば十分だ」という意見もあると思いますが、それについてはどうお考えですか? たしかにそういう面はあると思います。以前、小泉純一郎元総理の通訳を担当したことがあるのですが、ある意味で小泉総理は「十分な」英語力を持っている方だなと感じましたね。 彼は会談や交渉の場面でももちろん通訳を介してはいるんですが、相手が話す英語を自分でもある程度理解できていた。ですから、同時通訳が翻訳している時間を利用して、「次に何を言おうか」と頭のなかでまとめている。そんな印象でした。また、発音は完璧ではないけれど、「ここぞ」というところで簡潔かつ効果的な英語フレーズを言える。 個々人の役割やポジションに照らして、適切な英語力がありさえすればいい、ということを否定したいわけではありません。 ■ネイティブに発音を学んではいけない ただ、「『使える英語』を最短ルートで身につける」という目標を考えた場合、やはり最終的には、まず正しい発音を習得したほうが無駄は少なくなります。学習の効率、知識の定着度、いずれにおいても、音声から入る学習とそうでない学習とでは、歴然たる差が出ますよ。だからこそ、J Prep斉藤塾でも、音声のトレーニングを徹底しているわけです。 ――となると、やはりネイティブの発音に触れながら、発音をトレーニングするべきなのでしょうか? 本来、発音については、音声学の知識のある方にマンツーマンで指導してもらうのがいちばんです。「ネイティブと会話していれば、そのうち発音がよくなる」と思っている人がいるようですが、それは完全な誤解ですね。 日本語ネイティブである私たちは、日本語の音をどのように発声しているか、ロジカルに説明できません。それと同じように、大抵の英語のネイティブスピーカーも、どうすれば「th」の音をきれいに出せるかと聞かれても、うまく答えられないのです。 それに彼らは、私たちを「非ネイティブ」と見なしているわけですから、少しぐらい発音が変でも、いちいち指摘してはくれません。 逆の立場で考えてみてください。ひどい英語なまりの日本語を話す外国人と会話をしていて、一つずつ発音の間違いを指摘する気になるでしょうか。多少おかしくても目をつぶろうと思いますよね。 ■発音記号を知ると、発音がよくなる? ――では、発音の基礎をつくるために、どんなことをするべきなのでしょうか? すでにいろいろなところで紹介されている方法ですが、基本的には「シャドーイング」がベストです。これは聞こえてきた英語音声とほぼ同じタイミングで、その音を発声していくトレーニング方法。影のように音声についていくので、「シャドーイング(shadowing)」というわけですね。具体的なやり方については、「動画」の重要性について触れるときにお伝えします。 もう一つ、大人でも手っ取り早くできるのは「発音記号」の習得です。日本の学校では、意外と発音記号をまともに教えてくれません。しっかりと理解できていない人が多い。 これができれば発音が完璧になるというわけではありませんが、発音記号の知識があると、英語の音を意識的に区別しながら聴いたり発声したりできるようになります。「音の違い」を「記号の違い」に落とし込むわけですね。 たとえば「a」に対応する母音は5つあります。それをしっかり聞き分けられるか、言い分けられるか。記号として区別できていれば、発音やリスニングにおいても違いを意識できる。 『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』ではこれ以外にも、フォニックスや演説などを使ったメソッドを紹介しましたが、実際のトレーニングでは下記の教材がおすすめです。 [初級者] 『CD付 世界一わかりやすい 英語の発音の授業』(関正生 著/KADOKAWA) [中級者以上] 『DVD&CD付 日本人のための英語発音完全教本』(竹内真生子 著/アスク) ――ありがとうございました。次回は特別ゲストの方をお招きして、対談を予定しています。お楽しみに! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[E【英語】英単語 英語表現] カテゴリの最新記事
|
|