東洋経済オンライン 中村 陽子 2018/02/18 17:00 この記事だけではたりない知見もあるので
──私たちホモ・サピエンス(ヒト)が生き残った最後の種ですね。 人類は名前がついているだけで25種ありますが、実際は100種くらい存在したかもしれない。 人類の大きな特徴は、直立二足歩行と犬歯(牙)の縮小です。 優秀だから勝ち残ったわけではなく、追い出された ──人類は優秀だから勝ち残ったわけではない? ええ、力が弱く木登り下手な人類祖先は、ゴリラやチンパンジーなど類人猿に負けて豊かな森林から追い出され、仕方なく疎林や草原に出てきた。決して希望に満ちて草原へ旅立ったのではない。 ──なぜ牙を失い、不便な直立二足歩行を始めたのでしょうか? チンパンジーはオス同士の戦いで牙を使う。 一夫一婦制はオスがメスや子供に食物を手で運ぶために始まりました。もちろん最初は一夫多妻や多夫多妻などいろんなグループが混在していたことでしょう。 当然生き残るオスの数は少ない。 そのほかにも、現生人類=ホモサピエンスが ──そして250万年前、ホモ属が現れた。 ホモ属が石器を作るようになると 石器の発明と同様なことが 人類史上最大の脳を持っていたのがネアンデルタール人 ──脳の大きさ=頭のよさ? 頭のよさというより、脳の活動が多かった。ヒトに最も近縁な種で4万年前に絶滅したネアンデルタール人や、同じヒトでも1万年前のほうが現代人より脳容量は大きかった。 人類史上最大の脳を持っていたのがネアンデルタール人。彼らは私たちとは違う何かを考えたり、想像もつかない能力とか、現代人の物差しでは測れないものを持っていたんじゃないか。脳の形から、見たものを処理する視覚野の部分が大きいので、視覚に関係する能力はネアンデルタール人が勝っていたでしょう。 ──40万~50万年前に別のホモ属からネアンデルタール人とヒトが分化した。つまり両者は兄弟? 兄弟というよりは双子ですね。祖先の集団の一部がアフリカを旅立ち、その一部がヨーロッパに移住、そこからネアンデルタール人は進化した。一方アフリカに住み続けた集団からはヒトが進化した。 2種はヨーロッパとアフリカで別々に暮らし、 ネアンデルタール人は欧州に先着して移住していたので その後ヒトがヨーロッパへ大量進出してからは3000年くらい両者は共存しました。互いの接触はなるべく避けたと思いますが、少数ではあるけど両者は交配もした。 最近まで現生人類は、ネアンデルタール人のDNAを ──ネアンデルタール人もヒトも食人の痕跡が残っていますね。 はい。飢餓の極限状態で食人の犠牲者となったネアンデルタール人12人の骨は、脳や骨髄目当てにたたき割られ、石器で肉を剥ぎ取られた傷が残っていました。 ネアンデルタール人絶滅の主な原因は、寒冷な環境とヒトの進出でした。 ネアンデルタール人の口腔の構造では、母音中心のシンプルな声しか出せず、高度なコミュニケーションが出来なかったらしい 動物の全重量の10%をヒトが占めている ──未来の人類は私たちヒトをどう特徴づけるんでしょう。 南極まで行っているし、本格的に世界中に広がった。それから異常に数が増えた種ですよね。現在、動物の全重量の10%をヒトが占めていて、そんなに多い種は全人類史上初めてです。 ──え、たったそれだけ? 現代のITや宇宙への進出など目覚ましい文明の発展は、記録はされるでしょうけど、 ほかの種に比べ個体が弱いから集団で行動し、協力関係がなお強まった。集団の中で初めて一夫一婦制を形成したことも特徴に入るかな。それに将来、考えることをAI(人工知能)に任せていくようになれば、脳はさらに縮小する可能性がある。脳の大きさのピークはネアンデルタール人なので、「ヒトは脳が縮小していった種」というのも加わるでしょうね。 ──次の人類はどのように出現すると思いますか? 何らかの断絶が起きないとヒトから別種が分かれることはない。普通に考えて、1万年後、ほかの惑星に移住した集団が別種の人類になる可能性がいちばん高いのかな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[H 【人類・人類史・ 脳科学・人種・民族】] カテゴリの最新記事
|
|