カテゴリ:C 【知的生産・情報カード】
元気を出してください。世の中は、思うほど悪いことばかりではありません。実は脳に騙されているだけ。ここでは、その理由ご紹介していきます。 「悲観論」の高まり たとえば、大半のアメリカ国民が国の将来を危ぶんでいるようです。米国心理学会の調査によると、アメリカ人の63%が自国の将来について悩んでおり、59%が「自分の記憶にある限りでは、今が米国史上最悪の状況」と考えているといいます。 こうした考えは、「悲観論」に由来するものでしょう。「悲観論」とは、ある社会や組織の状況が、時とともに悪化の一途をたどっているという、認知バイアスのかかった信念で、どんな事実があろうともそう考えてしまうことです。平たく言えば「かつてのようなよい時代は二度と来ない」といった考えです。 最近は「2017年はひどい年だったね」とか「これ以上悪くなることはあり得ない」という物言いをしょっちゅう耳にする気がしますが、こうした認識は間違いです! 今以上に悪い状況は明らかにあり得ますし、そういう過去が存在しました。昔にさかのぼるほど、過酷な状況が見られました。 現在取り組むべき問題が山ほどあることはたしかです。しかし、実際、世界状況は徐々に好転しているのです。事実を見れば、 米国民の健康状態はこれまでになく良好です。それは、認知心理学者(そして、究極の楽観主義者)であるSteven Pinker博士の本を手に取ればわかります。
私たちの悲観的態度を生んでいる要因は2つ。 レミニセンス 想い出 1つめの「レミニセンス・バンプ」とは「人は年を取るにつれ、10代から30代のよい出来事をよく思い出し、懐かしむようになる」というもの。 つまり、自分の若かりし頃の古き良き思い出を想起していると、当然、その時代のほうがよかったように思えてくるが、現実には、本当によい時代だったわけではなく、自分が若かったので、今より仕事のストレスも、お金の心配もなく、時事問題にもあまり注意を払っていなかっただけというわけです。 もう1つの「ポジティビティ効果」というのは「年を取るにつれ、ネガティブなことよりもポジティブなことを多く覚えている」というものです。 Archer氏いわく、ポジティビティ効果とレミニセンス・バンプは、パーフェクトなコンビだそうです。 年をとってくると、脳がネガティブな刺激よりもポジティブな刺激を好んで記憶にとどめたがるだけでなく、ポジティブな記憶を重視し、ネガティブな記憶を過小視するようになります。 誰でも、過去・現在・未来について考えるときは、どうしても主観的になってしまいます。でもそれは、欠陥ではなく、脳の仕組みなのだとArcher氏は言います。この認知バイアスが生じないようにするのは無理です。しかし、そのことを知っているだけで、少しは客観的に考えられるようになるでしょう。
私たちが忘れがちなのは、偉大なる地球の覇者である人間も、基本的には生き延びることに一生懸命な、低次元な動物だということです。 このバイアスは、人間が生き延びるためには重要だったかもしれませんが、 私は、このバイアスを強く持っているという自覚がある まったくありがた迷惑な話です。さらに悪いことには、こうしたネガティブ志向のことが世の中に知れ渡っているおかげで、マーケターや政治家、メディアがいいように利用しているのです。なぜこんなにひどいニュースが続くのか、と思ったことはありませんか? それはほかでもなく、メディアが視聴率を稼ぐ必要があるからです。自覚のあるなしにかかわらず、世界で起きている残虐行為を眺めるのが大好きな私たちの習性を、彼らは利用しているのです。 また、2011年のこの研究を始めとする複数の研究で、うつを患っている人は、ネガティビティ・バイアスの影響をより大きく受けることがわかっています。ネガティビティがネガティビティを呼ぶ悪循環を生んでいます。しかし、人間がそのようにプログラムされているのですから仕方ありません。 思い込みから抜け出せないのが問題 誰もが、自分は、自らの国、世界、そして人生について正確な認識をもっていると信じています。それ自体は悪いことではありません。自分の信念を守りたいのは当然です。 なるほど! 「ネガティビティ・バイアス」のせいで今がひどい時代と考え、 以上は、世界に問題が存在しないと言うつもりで書いたわけではありません。ただ、こうした認知バイアスを知ってもらうことで、あなたの世界を見る目が変われば……。 あるいは、すべてが最悪に見えてしまう理由を理解してもらえればいいと思うのです。対処すべき問題を見失ってはいけませんが、脳に踊らされるままに厳しい世界状況に絶望し右往左往するのも考えものです。
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最終更新日
2018.03.02 20:15:20
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