カテゴリ:T【思考・知性】【心理学】
記事 理不尽すぎる山根会長が組織を牛耳れた根因 倒錯した「男らしさ」の背後にあるもの 岡本 純子 2018/08/06 12:30 (前略) 「すべてのサイコパス(精神病質者)は刑務所にいるわけではない。一部の人は役員室にいる」 これはカナダの高名な犯罪心理学者、ロバート・ヘア氏が言った言葉だが、 そもそも組織の長に立つ人には、「マキャベリアン」「サイコパス」「ナルシシスト」という、心理学ではDark Triad(暗黒の三元素)と呼ばれる3つの特質を持った人が相対的に多いといわれている。 山根氏がその特質を持っているかどうかは断定するわけでも、推論するわけでもない。ここからはあくまでも一般論である。 役員のうち4%がサイコパス ● マキャベリアンは、どんな手段や非道徳的な行為も、結果として国家の利益を増進させるのであれば許されるというルネサンス期の政治思想家ニッコロ・マキャヴェッリの著書『君主論』の内容に由来する。個人の野望と利益に固執し、人との関係性より、権力や金を優先する、目的のためなら、他人を踏み台にする、といった特質を意味している。 ● サイコパスとは反社会的人格のことで、良心が欠如している、他者に冷淡で共感力がない、慢性的に嘘をつく、後悔や罪悪感が皆無、自尊心が過大、自己中心的、責任を取らない、狡猾で人を操る、などの特徴がある。 ● ナルシシストは、自己愛性パーソナリティ障害ともいわれ、自分の価値を過大評価する、成果や技量を誇張する、自分の優位性を信じ、ひけらかすといった気質を指す。 つまりは共感力が低く、ゲスの極みのようなクズな奴ということになる。ところが、外交的で自信家、人を魅了する力も備えている。新しい試みに積極的、競争心が強く、脅しや恐怖訴求もいとわず、目的のためには手段を選ばないことから、組織の中で、成功を収める人も少なくない。 「マキャベリアンはリーダーシップと関連付けられ、ナルシシストは高収入とリンクがあり、サイコパス的な気質は出世しやすく、金儲けしやすい」といった研究結果が出ている。 一般の人たちの中でのサイコパス率は1%程度だが、役員レベルだと4%に上がる、 といった調査もある。 日本でも、「リーダーは非情なぐらいが、決断力があっていい」といった考え方もあるようだが、 共感力のない独裁的リーダーが、組織や企業に壊滅的なダメージを与えた事例は枚挙にいとまがない。 このようなタイプのリーダーが、有能であるかというと実際は、そういう根拠はなく、企業にとっては、致命的な結果をもたらすことが多い、との見解が大勢を占めている。こうした人たちが、手段を選ばぬやり方で、出世をし、リーダーにまでなれたとしても、その後のマネジメントが優れているというわけではなく、従業員や組織にとっては害悪でしかない、という結論だ。 自分の周りのリーダーが、この「邪悪な3要素」を持ち合わせているかどうかを簡単に測ることができる指標がある。 フロリダ大学の研究者などが開発したもので、1~4はマキャベリアン度、5~8はサイコパス度、9~12はナルシシズム度を測るものだ。 1. 自分の思い通りになるように、他人を操る 2. 自分の思い通りになるように、人を欺き、うそをついてきた 3. 自分の思い通りになるように、こびへつらってきた 4.自分の目的を達成するために他人を利用する傾向がある 5.良心の呵責、自責の念、後悔などを感じることがない 6.自分の行動の道徳性に無関心だ 7. 無神経で、冷淡だ 8.冷笑的、シニカルである 9. 他人に、自分を崇めてほしいと思っている 10.他人に自分に関心を向けてほしいと思っている 11. 敬意や地位を求める 12. ほかの人から特別扱いされたい 「権力は人を横柄にする」 こうした項目に当てはまる上司やリーダーは周りにいないだろうか。また、もともとこういった気質ではなかったとしても、権力の座に座ることで、共感力が低くなる傾向もある。「権力は人を横柄にする」ことは科学的にも証明されている。 カリフォルニア大学バークレー校のダッチャー・ケルトナー教授は長年、行動学の研究を続け、「自分に力があると感じたり、特権的な立場を享受するなど、権力を持った人はそうでない人より無礼で、身勝手、そして非倫理的な行動をとりやすい」(『ハーバード・ビジネス・レビュー』)と結論づけた。 ケルトナー教授によれば、裕福な人ほど、他人の感情などを理解する共感力が下がり、賄賂や脱税など非倫理的な行為が許されると答える確率が高かった。「企業で権力の座についている人は、職場でほかの人の話をさえぎる、会議中にほかの仕事をする、声を荒らげる、人を侮辱するようなことを言うなどの可能性が、下位のポジションにある人の3倍に上った」という研究もある。 また、カナダのマックマスター大学の研究では、 権力は共感力を促進する脳のプロセスを阻害することがわかった。 つまり、そもそも共感力が低い人がトップにつくことや、ある程度の共感力があったとしてもリーダーになることで、その能力が著しく衰えてしまう可能性が高いということだ。 こうした「権力の虜」になった人々が、恋々とその地位にしがみつくことについては、日本独特の要因もあるように思える。 アメリカでも、80歳代になっても、長くトップの座にとどまり続けるリーダーはいるが、有名投資家ウォーレン・バフェット氏のように自分で立ち上げた会社のオーナー社長がほとんどだ。 多くの会社において、CEOは60代の半ばで退職することが内規化されており、辞めた後はほかの会社の社外取締役になったり、日本とは比べ物にならないぐらいの報酬をためたお金で、チャリティーにいそしんだり、世界中のセカンドハウスをめぐり、優雅なリタイヤメントライフを送るのである。 倒錯した「男らしさ」 一方で、日本のサラリーマン社長は、欧米に比べると、チャリティーに大盤振る舞いするほどの報酬をもらうわけでもなく、「肩書」のない生活に待ち受ける「何者でもない自分」「孤独」を恐れて、地位にしがみつきやすくなる。「仕事」「会社」以外に「居場所」があまりない。これは、日本のオジサマ方の共通の悩みでもある。 山根会長は、端々に「男」という言葉を口にした。「男のけじめ」「男山根明、逃げも隠れもせん」「男として責任を取るときはとります」。倒錯した「男らしさ」の価値観にがんじがらめに縛られた、こんな時代錯誤のオジサンが、平成最後の年にいまだ跋扈していることに絶望感しか覚えないのである。 ーーー 私の感想 ーーー
見事な分析だと思う お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.08.07 14:24:46
コメント(0) | コメントを書く
[T【思考・知性】【心理学】] カテゴリの最新記事
|
|