記事 輸出規制で慌てる韓国、今更アメリカに泣きついても仕方がない理由 7/15(月) 7:00配信 参院選はいまいち盛り上がりに欠けているが、国際社会では物騒な話が進行している。 先週の本コラムでは、日本からの大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて、報復などではなく、安全保障上の措置であると論じた(「対韓輸出規制を『徴用工の報復』と騒ぐ、韓国とマスコミの見当違い」)。これに対して、韓国はてんやわんやの騒ぎである。 安全保障上の措置に対して、韓国が「対抗措置」をとるというのは普通、ありえない事態だ。本来ならば韓国がすべきことは、日本が懸念し、管理強化の根拠になった韓国側の「不適切事案」について説明し、必要に応じて謝罪を行い、再発防止策をとることである。 7月1日の日本側の方針発表に対して、韓国の文在寅大統領が声明を発表したのは、1週間後の7月8日。しかも「日本は措置を撤回しろ。韓国に被害が及べば対抗措置をとる」という、中身の薄いものだった。 7月9日には、韓国側は、軍事転用可能な戦略物質を156件不正輸出していた(2015~2019年3月)と発表した。 これも、すでに韓国国会議員へ配布していた資料であり、急いで発表した形跡がある。 これほど大量の不正事例をこれまで公表してこなかったことについても、韓国への不信が募る。 さらに、問題となっているフッ化水素は、以前UAEに輸出されており、これが北朝鮮への迂回輸出であった可能性も捨てきれない。この韓国の発表によって、日本側の輸出規制見直しの正当性が改めて確認された格好だ。 それでも、韓国は往生際が悪い。同じ9日、韓国の康京和外相がアメリカのポンペオ国務長官と電話会談を行い、韓国の実情を説明し、同長官は理解を示したと発表した。 これは、どうみても韓国に都合の良い発表だ。 実は、日本の外為法における輸出管理の部分は、輸出管理令(政令)に基づいている。現在の法規制は、リストにある規制品を輸出する輸出者には許可が必要(リスト規制)というものと、輸出する貨物や技術が大量破壊兵器の開発等に利用される恐れがある場合に許可が必要(キャッチオール規制)の二段階から成り立っている。まず、リスク規制品かどうかをチェックし、該当すればさらにキャッチオール規制をチェック、該当しなければ許可となる。 この輸出管理令は、もともとはココム(対共産圏輸出統制委員会)規制の流れを引いている。ソ連崩壊の後、ココムは1994年3月に解散したが、その後1996年7月に設けられた後身の協定「ワッセナー・アレンジメント」に引き継がれている。 ワッセナー・アレンジメントは法的拘束力のない紳士協定であり、ロシアも韓国も加盟している。ただし、旧ココムにはこの両国は加盟しておらず、NATO諸国と日本、オーストラリアが加盟していた。つまり、日本は輸出管理令の運用ではアメリカと基本的には同一歩調をとっているはずだ。まして、今回のように北朝鮮関連の措置となると、経産省はアメリカと事前協議を持っていたはずだ。 今更、韓国が慌ててアメリカに連絡して「理解を得た」というのは、お笑いである。 もっとも、日本側が用意周到に準備した形跡もある。6月末のG20が、いわゆる徴用工問題を含めて、日韓関係のもろもろのデッドラインだったのだろう。輸出管理の見直しも、日韓間で十分な相互交流がないので、7月から打ち出すことになった。 これが結果として、この参院選において自民党に有利に働いている。一時低下した自民党支持率も内閣支持率も戻している。今回の対韓国への輸出管理の見直しも、後押しになっていることは間違いない。 国内経済に目を向ければ、消費増税については軽減税率の恩恵を受ける新聞がまともに扱わないことから選挙の争点にならず、また年金も、国民は「年金だけで老後の生活保障すべてが賄える」とは思っておらず、野党の空騒ぎをを冷ややかに見ており、これも争点になっていない。 「有志連合」でわかった、国際政治のリアル そんな中、イラン情勢がにわかに騒がしくなってきた。 7月9日、米軍の統合参謀本部議長が、ホルムズ海峡などで船舶の安全を確保する有志連合を結成する考えを示した。日本政府にも協力を打診したと報じられているが、日本は現在の法律でどのような協力が可能なのか、さらに踏み込んだ対応が必要になるのか。参院選の争点がボケている中、格好の外交・安全保障上の問題が降ってきた形だ。 これに対して、各紙の社説は次の通りである。 ---------- 朝日新聞「中東有志連合 緊張緩和の努力が先だ」 毎日新聞「ホルムズの有志連合 大義があるのか見極めを」 産経新聞「有志連合への参加 国益重んじ旗幟を鮮明に」 ---------- 読売新聞や日経新聞は、「政府が対応に苦慮している」という記事は掲載するが、意見らしきモノは述べていない。 この有志連合の件は、参院選でもあまり議論になっていない。筆者は、安全保障に関する各党の見解を見極めるためには格好の話題であると思うが、与党は及び腰だし、野党も見解を言いにくそうだ。 筆者は、安倍首相のイラン訪問中に起こった日本関連タンカーへの襲撃事件は、日本に対する警告であるとの認識を持っていた。アメリカはイランの仕業だと言うが、少なくともアメリカ軍は、日本関連タンカーが襲撃される光景を上空から見ていたわけで、これがもし米国関連船舶なら、警告を出していたはずだ。イランの仕業だとしても、アメリカが傍観していたという意味では、日本への警告とみていい。 ホルムズ海峡は、日本にとってエネルギーの生命線である。トランプ大統領は、日本も自国でシーレーンを守ったらどうかという。今回のアメリカの打診も、その延長線上にあるのだろう。 これこそが国際政治のリアルだ。2015年9月に成立した安保法制では、ホルムズ海峡での機雷掃海が集団的自衛権行使の事例として挙がった。これは、有志連合に参加する場合のやり方のひとつになる。 日本が取るべき選択肢 とはいえ、実際に審議に入れば、有志連合参加のための要件はかなり厳格であり、現在のような事態では要件を満たしていないという話になるだろう。であれば、法改正をすべきかどうか。 現行法では、自衛隊法による海上警備行動もありえる。しかしこれでは、日本に関係のある船舶は守れるが、外国の船は守れない。海賊対処法なら外国船舶も護衛できるが、海上警備行動と同様の行動制約がある。 こうした現行法制上の問題を考えると、特別措置法で対応ということもありえる。ただし、何らかの形でアメリカ主導の有志連合に参加した場合、イランとの関係悪化の懸念はある。となると、有志連合に加わらずに単独警備という選択肢もある。 いずれにしても、有志連合について、(1)参加、(2)参加しないなら単独警護、(3)静観の三択が基本対応になるだろう。その中から選択肢を決めて、現行法制で対応できなければ特別措置法となる。(1)と(2)は日本のタンカーを守り、(3)は守らない、となる。 先に挙げた新聞社説は、朝日新聞と毎日新聞は(3)静観(+別の外交努力)、産経新聞は(1)参加、ということだろう。 米・イラン間の問題は深刻だ。この状態は1990年代中盤の北朝鮮の核問題に似ている。 その時は、米朝で開戦一歩手前まで進んだが、結果として米朝枠組み合意ができた。しかしその後の歴史をみれば、北朝鮮が抜け駆けして、今では北朝鮮は事実上の核保有国となった。 このままいけば、イランも同じ道をたどるかもしれない。北朝鮮の時には、アメリカは具体的な北朝鮮攻撃も考えていたが、今のイランに対しても同様に考えている可能性がある。そうでなくとも偶発的な両国の衝突が起こる可能性は少なくない。 議論を避けるのは情けない 筆者としては、日本のタンカーは日本で守るという立場で、(1)参加(条件付きまたは特別措置法での対応)、あるいは(2)単独警護(必要に応じ特別措置法での対応)が必要と思うが、どうだろうか。 安全保障は国の最重要基盤だ。自由貿易の生みの親であるアダム・スミスも『国富論』の中で、「安全保障は経済に優先する」と述べている。イギリスがオランダの海軍力を抑え弱めるという安全保障上の理油から、航海法(オランダ船の貿易締め出し)を称賛したのだ。 こうした観点から言えば、自由貿易論によって輸出管理見直しを批判することや、有志連合参加の是非について議論を避けるのは、いかに情けないことかがわかる。各党の積極的な論戦を期待したい。
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最終更新日
2019.07.15 19:32:33
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