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2019.10.18
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​​ウェブは「バカと暇人と格差社会勝者のもの」になった​
中川淳一郎
BLOGOS
2019年10月18日 11:57
 
なるほど
WEB・ブログの黎明期の読者は賢人率が高かった
​コメントもバンバン来た
集合知もたくさん得ることが出来た

しかし
馬鹿が大量流入してきてからは
コメントも来なくなり
集合知も期待できず
ブログの価値は霧散してしまい
馬鹿はさらに
短文で浅いSNSに群がり
集合痴ばかりが積み上がる(笑)



 
『ウェブはバカと暇人のもの』から10年
BLOGOSの立ち上げから10年。そして、私にとっての“アレ”からも10年。“アレ”とは、2009年4月、私が光文社新書から出した『ウェブはバカと暇人のもの』という本についてだ。同書は当時のウェブ界隈では物議を醸した。
​何しろ、梅田望夫氏の『ウェブ進化論』(ちくま新書)と対をなす論を展開したからだ。梅田氏はインターネットがもたらす「集合知」などポジティブな可能性を滔々と述べ、私はその逆を張り、ウェブなんてもんは「予約」や「検索」「注文」等の機能を最大限活用する以外はバカが多く集まるだけにどうしようもないものだ、と述べた。そしてウェブメディアを運営する立場から「集合愚」が実態である、とも述べた。​
さて、あれから10年。多分私が述べたことの方が理解されるだろう。ウェブはやっぱりバカと暇人のものだった。「バカッター騒動」をはじめとし、どうしようもない誹謗中傷やら炎上騒動、電凸が毎日のように発生している。政治的主張を巡るどうでもいい論争も毎日発生し、デマ拡散や名誉棄損もお定まりの風景である。
​​


世の中には賢者よりも愚者の方が多いわけで、
賢者率が高かったウェブ黎明期にウェブを使っていた人は
「集合知」の登場を確信しただろう。


一方、その後ウェブが大衆化した後に使い始めた人や、不特定多数に対応せざるを得なかったブロガーやSNSユーザー、サイト運営者等当事者としては「集合知」なんてものは幻想でしかなかったことを身をもって知っている。

そうした時代を経た2019年の今、「ウェブvs.リアル」という議論は成り立たなくなりつつある。スマホの大普及により、完全に「ウェブ」は「リアル」に取り込まれているのである。だから「ウェブ世論」「ネット民」という言葉はさっさと死語になるべきである。だが、現状としてはウェブそのものが「リアル」や「マスメディア」とは別扱いされているだけに現状はウェブ単体で論じる必要がある。まぁ、ほぼ同じようなものなのではあるが……。
​となれば、​
​1990年代中盤から2000年代前半にウェブを使っていた人々が「ウェブを活用することにより、人々は賢くなる」といった言説を述べていたのは、結局バカが大量流入しないことを前提としていた牧歌的な話だったのである。​

「ウェブはバカと暇人と格差社会勝者のもの」へ
​世の中のバカというものは、賢い人にとっては意味不明の存在である。​「あおり運転」を例に考えると分かりやすい。あおり運転をし、その後車を止めて恫喝するような連中がネット上にその時のドライブレコーダーやスマホで撮影動画を公開され、テレビの情報番組でも長時間かけて晒される現状がある。
あおり運転からの恫喝や自動車の破壊行為を行う人間は、「今オレがやっている行為は録画されておりネットに広がり、テレビにも波及する……。そしてオレは逮捕される」という感覚がないのであろう。2013年や2017年のバカッター騒動にしても、あれだけ連日テレビで報じられ、多くの人間が社会的制裁をくらったのに止む気配がなかった。結局、ウェブがあろうがなかろうがバカはバカのまま、賢い人間は賢いままなのである。

だから、今回BLOGOS編集部からいただいたお題の「まだまだウェブはバカと暇人のモノですか?」というお題については、こう答える。確かに“何か”は明確に変わった。それは以下である。

「ウェブはバカと暇人と格差社会勝者のもの」
この10年、成功したサービスのほとんどは、ウェブを上手に活用したものばかりである。それは、世界規模ではGAFAやアリババであり、日本ではメルカリやZOZOやヤフーや楽天、サイバーエージェント、LINEなどである。

とにかく2019年の今、カネを稼ぐにはウェブを経由することが極端に重要になっている現状がある。なかなか買えないような珍しい野菜を地方の農家が通販で売り、莫大な収益をもたらすことも、ウェブがなければできなかったことだろう。だからこそ、私が2009年に『ウェブはバカと暇人のもの』で述べたように「機能」を最大限活用することは個々の人生に利点をもたらすことは十分に理解している。

バズれば勝ち組?ネット時代の広告代理店
最近、広告代理店との仕事がとみに増えているが、彼らがとにかく求めるのは「ウェブ上で話題になる」ということである。もはやかつてのメディア界の覇者たる雑誌や新聞以上に、ウェブでの「露出」と「バズ」が求められている状態なのだろう。さらには最強メディアであり続ける地上波メディアの制作者もウェブ発の情報をとんでもなく重視している。私がかかわるウェブメディアにも、テレビの制作者からの記事使用に関する問い合わせは多数寄せられている。それだけテレビ制作者がウェブを情報源にしているということである。
よって、情報を社会に広げたい場合は「まずはウェブ発で」ということを広告代理店及びクライアント企業は考えるようになる。となれば、ウェブ上でいかにして「バズる」かに長けた個人や企業が“勝ち組”になり、莫大なる利益を得られることになる。その渦の中に入っている以上、ウェブ上でのプレゼンスをいかに高めるかが個人・企業にとって重要なことを日々実感している。
​『ウェブ進化論』の時代を経て、元々先端的な人々を相手にしていたウェブは確かに今や一般化した。​だが、まだその場所の“歩き方”については万人に知られているところではない。だからこそ、ウェブに慣れた人々(制作会社やクリエイティブ集団やブロガーや芸能人)が「これはウェブでウケますよ!」というコンテンツを繰り出し続け、支持をされ、カネを稼げる状況にある。こうした人々はそのノウハウを伝え、さらに勝ち組となる。

ベトナムで考えた「ネットとリアル」の関係
一方、日本で日本人に対して「電車の乗り方を教える人」「横断歩道を渡る時のことを注意する人」がカネを稼げる状況にはない。この2つについてはあまりにも当たり前過ぎるからだ。カネを稼ぐには、「当たり前」ではないことに関する情報を出す必要がある。先日ベトナムに行ったが、世界遺産・ハロン湾に向かうツアー(参加者は全員外国人)のバス車内でベトナム人のガイド男性は英語でこう言った。​​
写真:中川淳一郎
「今日このツアーに参加している皆さんはベトナムの交通事情に戸惑っていると思います。何しろ道を横断するにしても、車とバイクがビュンビュン通っていて、信号がないだけにどうすれば通れるか分からないでしょう。しかし、一つだけ覚えていただきたい言葉があります。それは『止まり続けても意味はない。歩きましょう。ゆっくり、でも慎重に』です。あと、99%のドライバーはきちんとあなたに配慮してくれます。それ以外の1%にぶち当たったら気の毒ですが(笑)」
冗談めかして言っていたものの、彼のこの言葉が意味するのは、ベトナムで歩行者が道を渡るにはいちいち信号に頼るのではなく、自らの感覚と相手の親切心を信じたうえでその道を渡りましょう、ということだ。彼はこうしたことをベトナム人以外の外国人に伝えることも併せてカネを稼いでいる。ネットでもまったく同じことが言える。
当然差別的発言やあまりにも自己顕示欲が強過ぎる発言をすれば大ブーイングとなることだろう。そこらへんの事情を分かったうえでネットでは発言をし、歩いていくべきである。ベトナム人ガイドの男性はまさに「ウェブの歩き方」「ウェブの立ち居振る舞い」と同様に「ベトナムでの道の歩き方」について的確な意見を言ったのだ。
ネットに関してはまだこうした助言めいたものがカネになる時代になっている。だからこそ「炎上コンサルタント」「リスクマネジメントコンサルタント」みたいな職業が成り立っているわけだ。ウェブとリアルは同じもの、と先に述べたが、まだ完璧に同じもの、と捉えている人が大多数派でない以上、コンサルタントの仕事は成立する。そういった意味ではまだウェブはリアルに完全に組み込まれていないが、現在の高齢者が全員亡くなったところで完全に組み込まれ、もはやウェブとリアルを比較するようなことでさえ意味がなくなってくる。

「廃人」を生むネットサービスに未来はあるか
最後に。「バカと暇人」についてだが、ネットサービス重視の方向に様々な企業がシフトしたために「時間泥棒」「課金欲増進」をもたらすサービスが隆盛を誇っている。電車の中だろうが、飲食店だろうが、スマホを覗きこんでいる老若男女を見ることだらけだ。
果たしてそれは個々人の人生をどれだけ豊かにし、能力を高めてくれるのか。どうでもいいニュースを見たり、アプリに時間を使ったりゲームでムダ金を使い続けているだけ、という人も多いだろう。

それを自覚している段階ではいいのだが、完全に「廃人」のごとき状態になっている人もいる。そして、ネットに時間とカネを使い続けている人々は、「クリック・タップする奴隷」のことをうまいこと操作するバカと暇人を巧みに操り、莫大なる利益を得ているのである。ネット広告費も2019年度はテレビを上回るだろう。これが10年前の「ウェブはバカと暇人のもの」から現在の「ウェブはバカと暇人と格差社会勝者のもの」への変化の実態である。
 2000年代中盤~2010年代前半、新しいネットサービスが出たり「診断メーカー」的なものが出たらそれはIT系メディアが記事にしたし、ギーク達がブログでその使い方を解説したりした。企業もしきりとエイプリルフール企画をして盛り上がっていた。思えばあの頃がネットと人々の幸せな関係だったのかな、とも思う。ワクワクすることがあまりにも多かったのだ。しかし今、このワクワク感はなくなったが、ネットとは別の新しい何かワクワクするものが生まれる前兆なのかもしれない。それはそれで楽しみな未来である。


プロフィール
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年東京生まれ。ネットニュース編集者、PRプランナー。一橋大学卒業後、博報堂に入社。博報堂では企業のPR業務に携わる。2001年博報堂退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。『ウェブはバカと暇人のもの』『電通と博報堂は何をしているのか』『ネットは基本、クソメディア』など著書多数。
 
 





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最終更新日  2019.10.18 23:56:53
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