カテゴリ:M【映画】 女優
―--記事 --- ホラーより“怖い”映画「異端の鳥」 あなたは最後まで見続けられるか? 産経新聞 10/7(水) 21:00配信 間もなく日本で公開される映画「異端の鳥」。この作品を最後まで見続けるのには、強靭な精神力が必要だ。ホラー映画ではないが、極限の恐怖が待ち受けているからだ。昨年のベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品されたが、上映会場からは途中退場者が続出。ホラー映画に登場する異形のものたちよりも、生身の人間のほうがいかに邪悪かを突き付ける作品だ。チェコ出身のヴァーツラフ・マルホウル監督に作品について聞いた。(文化部編集委員 水沼啓子) ■製作に11年の歳月 第二次大戦中、ナチスのホロコーストから逃れるために、東欧の大都会から辺鄙な村にたった一人で疎開した少年を待ち受けている差別と迫害。貧しく無知で残忍な村人たちは少年を、異質な存在として容赦なく攻撃する。少年はそんな過酷な状況下を、生き延びるというストーリーだ。 原作は、米国に亡命したポーランド出身のユダヤ人作家、イェジー・コシンスキが1965年に発表した代表作「ペインティッド・バード」(初版邦題「異端の鳥」)。ポーランドでは発禁書となり、コシンスキは後に自殺している。 読書仲間から勧められ、原作を読んだというマルホウル監督は「最初の3ページを読んで映画化したいと思った。どの行からも、自分の想像力を掻き立ててくれる絵が浮かんだ。脳裏にビジュアルとして見える作品だった」と語った。 監督は3年かけて17バージョンの脚本を執筆。資金調達に4年、撮影に2年を費やし、計11年もの歳月をかけて映像化した執念の作品だ。 「企画開発段階はほぼ自腹で、プリプロダクションに4年もかかったのは悪夢だった。ヨーロッパ中の何十人ものプロデューサーに連絡したが、うまくいかなかった。彼らは明るいエンタメ系の映画を好み、暗くて悲惨な物語に出資しようという人はなかなか見つからなかった」と振り返る。 ■「異端の鳥」とは 映画の英語のタイトルにもなっている「ペインティッド・バード」を直訳すると「塗られた鳥」あるいは「彩色された鳥」といったところだが、、コシンスキが子供のときに実際に見たという村人たちが気晴らしでやっていたことと結び付いている。 村人たちは鳥を捕らえると、その羽に鮮やかな色を塗る。そしてその鳥を放して群れに戻すと、群れの鳥たちは彩色された鳥を仲間ではなく、よそ者と勘違いして執拗に攻撃。彩色された鳥は全身に傷を負い、最後は息絶える。映画にも作品全体を象徴するかのようにその場面が登場する。 ■モノクロ映像 横長の「シネマスコープサイズ」と白黒の「モノクローム」で描かれた映像は、どのカットも美しい。撮影監督を務めたウラジミール・スムットニーは、米アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した「コーリャ 愛のプラハ」の撮影も手掛けるなど、チェコ映画界の巨匠として知られる。 監督はモノクロ映像にした理由について「(ドキュメンタリー映画ではなく)フィクション映画で真実を捉えることはできないが、観客が作品を見た時に真実ではないかと感じられるものを作ることが大切だ。この作品をカラーで撮ったら、嘘っぽくなってしまう」と語った。 この世の“地獄絵巻”を見続けるうちに徐々に心を失っていく主人公を、体当たりで演じたのは演技経験ゼロの少年だ。チェコの町で監督が偶然出会ったロマ(ジプシー)の少年という。 「彼は撮影開始時は9歳だった。作品は時系列に沿って順撮りで撮っていったので、クランクアップのときには11歳になっていた。その間、肉体的な変化だけでなく、メンタル面も変わっていった。演技の幅も広がったので、書き直したシーンもあった」と明かした。 ■今も世界のどこかで 監督は「この作品は戦争映画でも、ホロコースト映画でもなく、時代を超越した普遍的な物語だ。作品で描かれている暴力や残虐さは重要ではない。今も世界のどこかで同じようなことは起きている。それよりも、人はなぜそのようなことを行えるのか。われわれ人類の運命はどこに向かっているのかといった、問いかけの方が重要だ」と言葉に力を込めた。 原作者、コシンスキも小説の後記で、「ペインティッド・バード」で描かれた世界は、今も世界の至るところで続いていると指摘している。 「そこでは、肌や目や髪の色、言語、そして教育が、『アウトサイダー』つまり自由な精神を持った放浪者たちに、一生残る傷をつける。そしてそのような者たちを、『インサイダー』である力を持った多数派が、恐れ、排斥し、攻撃するのである」 ■数々の映画賞受賞 本作は、米アカデミー賞国際長編映画賞のチェコ代表にも選ばれた。東京国際映画祭でも「ワールド・フォーカス」部門で上映され、高い評価を得た。 ベネチア国際映画祭では途中退場者が続出する一方で、エンドロールまで見続けた観客からは10分間ものスタンディングオベーションを受け、ユニセフ賞も受賞している。 またチェコのアカデミー賞ともいえるチェコ・ライオン賞では作品賞をはじめ監督賞、撮影賞、編集賞、音響賞、美術賞、衣裳賞、メイク賞など8部門を総なめにした。 9日から、
東京・TOHOシネマズシャンテ、 大阪ステーションシティシネマ などで全国公開。 2時間49分。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.10.08 05:39:41
コメント(0) | コメントを書く
[M【映画】 女優] カテゴリの最新記事
|
|