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マスコミの的外れ「森喜朗氏批判」のウラで、 ヤバいことが起っていた…! 髙橋 洋一(経済学者) 現代ビジネス 2/15(月) 8:51配信 マスコミがおかしいところ 先週の本コラムで、マスコミ論とは何たるかを含め、展開した。その一番大切なところをまとめると、以下の通りだ。 技術背景や特権を先週は詳しく述べたが、 マスコミの実情はまずストーリーありき、「ていへんだ、ていへんだ」で煽る。レベル低いのに、上から目線意見」と書いた。今週はそのケーススタディをやろうと思っていたら、絶好のものがあった。 森喜朗氏に関する報道ぶりだ。 ここ10日間ほど、東京オリパラ組織委員会会長だった森喜朗氏の報道ばかりに辟易したことだろう。筆者は、バッタの大量発生による「蝗害」を思い出してしまった。さながら「マスコミバッタ」を見ているようだった。 ある人は、マスコミによる「集団リンチ」といっていたが、まさに「メディアスクラム」(集団的過熱取材)のようだった。もちろん、森氏は元首相で公人に準ずるので、厳密には「メディアスクラム」とはいえないが、周辺取材で、関係者がいろいろな迷惑を被ったこともあったようだ。 本件の場合、まずストーリーありきは「森氏の辞任」だ。そこで、やり玉にあがったのが、森氏の2月3日(水)の日本オリンピック委員会(JOC)の発言だ。 この記事で書かれている田村淳さんが聖火ランナーを辞退したのは、森氏野とは別の発言が理由だが、同じ記事で書かれており、読者を混乱させる。 また、この記事では、森氏の発言の一部が切り取られて報じられている。全文を掲載しているマスコミはまずなかったが、日刊スポーツが全文を掲載している。 それをみると、森氏は両論を述べており、それを切り取って一部だけが報道された形だ。一部を切り取り、単純化し、「ていへんだ」で煽るという典型的なマスコミ手法だ。 そもそもの問題として… 2月7日、森氏は、自分の発言を詫びている。 しかし、マスコミの追及が続き、ストーリーとして森氏の辞任へ持っていこうとしていた。そのために人事という誰でも意見を言えるもので、マスコミは報じている。 結果として、2月12日、森氏は辞任した。もっとも、その人事の基本をほとんどのマスコミは抑えておらず、言いたい放題だった。 というのも、記事を書いている記者は、自分の組織で人事なんて行ったこともない人ばかりだろう。サラリーマンが居酒屋で愚痴る人事レベルの話ばかりの印象だ。 森氏はケシカランというが、森氏のどのような仕事ぶりがいけなかったかをいえるマスコミの人はそう多くはいないだろう。東京オリパラ組織委員会は、中央官庁、都庁、民間からの出向者ばかりで、その上にアスリートを含めて各界の人が乗っている組織だ。 その会長は、いろいろな気配りが必要なので、並大抵の人では務まらないのは、筆者にようにそうした組織で働いた経験が少しでもあれば直ぐわかるが、森氏ケシカラン論の記者がどこまでわかっているやら。 ただ、そうした人の意見は、少なくとも、東京オリパラ組織委員会定款を踏まえたものでなかった。 定款では、会長は理事会の決議で行うものであるが、その前に、マスコミが人事をぶち壊した。森氏が仮に後継として川淵氏を想定していても、それは決まりではない。もちろん、森氏も、川淵氏もマスコミに話すから、ある意味では自業自得なのだが、人事が上手くいかなかった。 マスコミの気は知れない マスコミは、とにかく人事が大好きだ。「ていへんだ」という話題にぴったりだからだ。実のところ、筆者は人事を聞くために執拗に取材するマスコミの気が知れない。ちょっと待てば、人事は公表されるのに、何時間前に「抜きたい」という、マスコミの人の気持ちがわからないのだ。 はっきり言えば、何時間前に「抜いても」、社会的な意味合いについては、マスコミと興味本位の人を除けば、ないといってもいい。 今回のように、当事者の情報管理が甘いと、マスコミにいいように弄ばれ人事が本当に進まず、国益を害することになっている。 そもそも、マスコミが、森氏を女性蔑視に仕立て上げたが、その資格があるのか。先週の本コラムで、マスコミは特権を棚に上げて批判することの滑稽を示したが、マスコミにおいて女性の「主要役職」は少ないのに、森氏を批判できるのか。 新聞労連は、森氏の騒動の最中の2月9日、「業界団体および加盟社の女性登用についての要請」を公表した。 その中では、「日本民間放送連盟(民放連)、日本新聞協会(新聞協会)、日本書籍出版協会(書協)、日本雑誌協会(雑協)=以下「各業界団体」とする=の女性役員人数は、民放連45名中0人、新聞協会53人中0人、書協40人中1人、雑協21人中1人です。」と書かれている。 ちなみに、NHKでは、会長、副会長、専務理事、理事12名中、女性はたった一人だ。穿った見方をすれば、2月9日のこの発表は、森氏の報道でかき消されてしまった。 森氏の報道過多の影響は他にもあった。筆者はこれが大きな問題だと思っている。 森発言の前の1月19日、ポンペオ前国務長官は、中国政府が新疆ウイグル自治区でウイグル族ら少数民族に対して行っている行為について、いわゆる「ジェノサイド」と認定しできました。 NHKがヤバいことに…! バイデン政権のブリンケン国務長官も、27日、ジェノサイドとの認定は変わっていないとした。 実は、この話は、後1年後の2022年北京五輪と大きく関係している。1936年のナチス政権下のベルリン五輪がすぐに想起される。ナチスは、人種差別を隠蔽して、五輪をナチスのプロパガンダとして利用した。 欧州の一部でボイコットの動きもあったが、ナチスの巧みな工作により開催されたことは、五輪の中でも暗黒史といってもいいだろう。ベルリン五輪中はなりを潜めていたが、直後から、ホロコーストが実行された。 欧米は人種差別、とりわけジェノサイドに敏感である。一部の英国紙は、ラーブ英外相が中国当局によるウイグル族への人権侵害を理由に、ボイコットの可能性を示唆したと伝えた。世界の人権団体も北京五輪の再検討を求める文書をIOCに送っている。 1936年ベルリン五輪の時には、米国の態度が開催へのカギになったが、今回、バイデン政権がジェノサイド認定しているので、世界ではこちらの方がより関心事だ。 ところが、日本では、森氏の報道ばかりで、地上波ではまず見当たらない。森氏の騒動の前、1月30日、筆者がでている大阪朝日放送「正義のミカタ」では、2022年北京五輪の開催には、アメリカによるジェノサイド認定が大きな障害になると説明された。 英国BBCは、ウイグル問題をきちんと取り上げている。そのためなのか、中国政府は、2月12日、英国BBCの国際放送について中国で放送することが禁止された。この措置に対して、英米政府はともに強く非難している。 その一方、同じ公共放送のNHKは、森氏報道ばかりだった。 筆者は、衛星放送でBBCをよく見ているが、ウイグルについては中国の駐英大使に対しスタジオでビデオを見せながら厳しい追及をしていた。それだけでも衛星放送代を払っても満足している。しかし、NHKには、そんな番組を望むこともできず、不満がある。NHKとBBCの間には報道機関としての質的な大きな差があるようだ。
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最終更新日
2021.02.24 05:12:16
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