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【トランプ・タリバン合意】から始まった「アフガン崩壊」 NewSphere Aug 25 2021 アフガニスタン軍と政府が崩壊し、イスラム原理主義勢力タリバンが同国首都カブールを攻略してはや1週間が経過した。 タリバンから逃れようとカブール国際空港に殺到するアフガニスタン人や同国滞在中の外国人の姿に、世界中で多くの人々が心を痛めている。バイデン大統領による指示の下、米軍が撤退を進めるなか、アフガニスタン政府が崩壊したことで、同大統領に非難が集中する結果となった。 しかし、撤退自体はトランプ氏在任中の2020年から徐々に行われていたことである。バイデン大統領が8月末までに完全撤退すると宣言したものの、撤退完了前にここまで簡単にアフガニスタン政府が崩壊するとは誰も予想していなかっただろう。 だが、この崩壊劇は、トランプ政権がタリバンと撤退合意を交わした2020年からゆっくりと進んでいたと言える。 ◆賄賂を渡して降伏を交渉 ワシントン・ポストによると、タリバンはアフガニスタン政府軍に賄賂を渡して、引き換えに兵器を引き渡し降伏するよう交渉した。アフガニスタン軍兵士の多くは、タリバンから金を受け取り脱落していったようだ。これではタリバンが猛スピードでアフガニスタン全土を攻略していったのも無理はない。同記事によると、タリバンは小さな部落から交渉を始め、徐々に各州都を陥落させていった。そして8月15日、ガニ大統領が同国を脱出すると、たやすく首都カブールを陥落したのである。そんなタリバンによる降伏交渉が始まったきっかけがトランプ政権との米軍撤退合意だったという。 米公共ラジオ(NPR)によると、トランプ政権の代表は2020年2月29日、カタールのドーハでタリバンの共同創設者でナンバー2のアブドゥル・ガニ・バラダル師と会談し、米軍を完全撤退することに合意。 合意内容には、米軍を合意から14ヶ月以内に完全撤退すること、そして135日以内に同国内の5基地から撤退して駐留軍の規模を8600人まで縮小すること、そしてアフガニスタン政府軍側からタリバンの戦闘員5000人、タリバン側からは政府軍兵士1000人を釈放すること、タリバン側はアフガニスタン政府と平和に向けた話し合いを行うことなどが盛り込まれていた。 この合意は、なぜかアフガニスタン政府抜きでトランプ政権とタリバン間で直接行われたものである。トランプ政権がなぜタリバンと直接交渉したのかは定かではないが、トランプ政権はこの時点ですでに、アフガニスタン政府が米軍の支援抜きでは機能できず、撤退後はタリバンが同国を支配すると仮定していたのかもしれない。あるいは、合意の裏にロシアなどの第三国、または何らかの利権が絡んでいたことも考えられる。 ◆滞ったアフガン通訳へのビザ発給 政治・文化情報サイト『スレート』によると、この合意後、米軍はアフガニスタン内にある基地から撤退を開始。ポンペオ氏はタリバンがアフガニスタン政府への攻撃を停止する約束をしたと述べたが、逆に攻撃をエスカレートさせていった。また同記事によると、トランプ政権との合意では、タリバンは国際テロ組織アルカイダと関係を断つはずだったが、米国防総省は2020年7月1日、アルカイダが「日常的にタリバン下層部の戦士を支援し共存している」「タリバンによる攻撃を補助している」と報告している。 トランプ政権下で、マイク・ペンス前副大統領の国土安全保障顧問を務めていたオリビア・トロイ氏はツイッターで、現在問題になっているアフガニスタン人通訳など米軍協力者へのビザ発給の遅れはトランプ政権の責任であると言及。ビザ発給に関する閣僚会議が開かれると、「スティーブン・ミラー(前上級顧問)が、イラクとアフガニスタン(人)についての人種差別的ヒステリーを主張した」「彼と、(トランプ)政権の彼の味方は、国土安全保障省と国務省の(移民に関する)システムを破壊して、この特別ビザ発給のために働いていた人々の努力を台無しにしていた」などと述べた。トランプ政権のイスラム教徒入国禁止令を思い出せば、同政権がイラク人やアフガニスタン人の米軍協力者を入国させるつもりはなかったのかもしれない。こうして米軍協力者へのビザが滞り、今回の悲劇に至ったのである。 ◆共和党がタリバン合意ページ削除 トランプ前大統領は、昨年11月の大統領選後、自分の敗北を認めずにバイデン大統領への政権移行手続きを正式に行っていない。もちろん、ビザ発給手続きが遅れていた内部情報も受け継いでいなかっただろう。トランプ氏の予定では米軍はアフガニスタンから今年5月1日までに完全撤退するはずだった。誤算は昨年の大統領選挙でトランプ氏が落選し、バイデン氏が撤退作業を受け継ぐ羽目に陥ったことである。もしトランプ氏が当選していたら、アフガニスタン人の米軍協力者のほとんどはビザの発給が受けられないままで崩壊した国に残されていたに違いない。 共和党や右派メディアはいまトランプ政権とタリバンの合意には触れず、今回の米軍撤退とアフガニスタン政府崩壊について、バイデン氏の責任を執拗に叫んでいる。しかし、合意はすべてトランプ政権時代に行われていたものである。事実、ニューズウィーク(電子版)によると、共和党ウェブサイトは、トランプ前大統領による「タリバンとの歴史的な平和合意」を称えるページを急いで削除した。 アフガニスタンはトランプ前政権がタリバンと交わした合意の結果として徐々に崩壊していった。 バイデン大統領は前政権の尻ぬぐいをさせられているに過ぎない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.08.30 07:58:45
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