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制裁でロシア国民の生活はどう変わったのか モスクワなどで聞く 3/14(月) 18:31配信 BBC News 制裁でロシア国民の生活はどう変わったのか モスクワなどで聞く オルガ・シャミナ、ジェシー・ケイナー(BBCロシア語)、サイモン・フレイザー(BBCニュース) アメリカ、イギリス、欧州連合(EU)が、ウクライナを侵攻したロシアに対し、前例のない金融制裁を発動した。国際企業が何百社もロシアから撤退している。 そうした措置の影響はまだ出始めたばかりだ。日用品などの価格が上がり、失業の恐れが高まり、孤独感を深める人もいる。 以下、ロシアの日常生活の変化の一部を紹介する。取材に応じた人々の名前はすべて変えてある。 ■食用油、砂糖、降圧薬 <消費者物価は侵攻最初の週に2.2%上昇。食料品の上昇率がとりわけ大きい。一部の商店は、買い占めの報道を受けて食品の販売を制限している。医薬品の販売は制裁の対象外だが、大手船会社がサービスを停止しており、供給が打撃を受ける可能性がある> ロシアがウクライナ侵攻を始めて以降、ルーブルは急落。多くの小売店が値上げを実施している。モスクワ中心部で暮らすダリアさんは、商店の棚はまだ空ではないと話す。「どれだけ値上がりするのか想像できません。考えることすら怖い」 ヤンさんはEU市民で、モスクワで暮らし、仕事をしている。「2月20日に5500ルーブル(約4900円)で食料品を買いましたが、今では同じ物を買うのに8000ルーブルかかる」と言う。牛乳の値段は、ここ2週間で倍近くになっているという。 砂糖と穀物の2月の価格は、前年同月比で約20%高くなっている。ロシア国営通信社タスによると、一部の小売業者は、いくつかの食品について価格上昇を5%までに抑えることで合意した。小麦粉、砂糖、油などの基本物資に関して、客の購入量を制限している業者もある。 ダリアさんは買いだめをしている。「コーヒー4キロ、ひまわり油4リットル、オリーブ油4リットル、ウィスキー4本を買いました」。高血圧の薬も3カ月分注文した。彼女によると、薬によってはすでに入手困難なものもあるという。 ■最後のiPhone、最後の「外国の至福の味」 <一部の消費財の価格が急上昇。スマートフォンやテレビが10%以上値上がりし、トルコへの平均的な休暇の費用は29%上がった。アップル、イケア、ナイキなどの主要ブランドが、ロシアでの販売をやめた> ダリアさんは、家族で使う新しいラップトップパソコンを買うか検討中だったが、価格がじわじわ上がっているのを見て、あわてて購入を決めた。「2月初めには7万ルーブル(約6万2000円)ほどだったのが、月末には10万ルーブルに上がっていて、その値段で買いました。モスクワで売り切れる直前には14万ルーブルまで値上がりしました」 ダリアさんたちはiPhoneの充電器は買わなかったが、買った人は多かった。アップルは3月2日、ロシアでの直接販売の停止を発表。「おそらく買うべきでした」とダリアさんは言う。「みんなが最後のiPhoneを手にしているというジョークが、いま出回っています」 新車価格も上昇した。「整備が必要になった時のために、車のフィルターとオイルを買いました」とダリアさんは話す。「目の前で2倍近く値上がりする前に、以前の価格で何とか買うことができました」 妻と子ども2人と暮らす大学講師のパヴェルさんは、モスクワのアパートの自宅用に家電製品を探していた。戦争が始まった日、物によって30%近く値上がりしているのを発見。冷蔵庫、炊事器具、洗濯機、やかんを購入した。ベッドと食器棚も、イケアの閉店前日に注文した。イケアでは値段に変化はなかったはずだという。「値上げする時間がなかったんでしょう」と、パヴェルさんは悲しげに冗談を飛ばした。 マクドナルドが847店舗を閉鎖したことの象徴的な意味は、ロシア人も感じている。マクドナルドは、30年前のソヴィエト連邦で最初に店を出した西側企業のひとつだった。今回の発表の数時間後には、マクドナルド製品を転売すると呼びかけるロシア人らの広告があふれた。値段は最大10倍になっていた。ある広告には、「閉店直前に買ったナゲットとパイ。外国の至福の味を楽しむ最後のチャンス」と書かれていた。 一方、ロシア南西部サラトフで暮らすウラジーミルさんは、西側の制裁の影響はまだ実感していないと話す。「ヴァトニキ(政府支持者)はルーブルが下落しても影響を受けません。外国製品を買わないからです」。 ■客とオンラインサービスの喪失 <ロシアの銀行が国際決済システム「スイフト」から排除された。ビザ、マスターカード、アメリカン・エキスプレス、アップル、グーグルペイがロシアでのサービスを制限。ロシア中央銀行は、経済が最大8%縮小する可能性があるとしている> 「いまの状況は私たちのビジネスに大きな影響を及ぼしています」と、フィットネス業界で働くナターシャさんは言う。「客の数が減っています。会費の払い戻し請求も続いています。家賃、器具、清掃の費用もすべて上がっています。制裁が発動されてから、支出は平均30%アップしました」。ナターシャさんは、同種の多くのビジネスが閉鎖すると予想している。閉鎖しないところも、輸入器具の代用品を製造する国内企業を見つけるのに苦労するとみている。 いくつかの語学学校を経営しているエカテリーナさんは、制裁ですでに問題が生じていると話す。「国外に講師がいますが、送金ネットワークが凍結されているので、給料を払えません。一方で、アメリカやドイツ、ラトヴィアにいる生徒は、私たちの口座に授業料を払えません。何とかする方法を見つけましたが、このところ営業日は毎日、新たな危機の火消しで始まっています」 もしズームが使えなくなったら国際グループ授業はどうしたらいいのかと、エカテリーナさんは心配している。彼女が使っているオンラインプラットフォームはウクライナ企業がメンテナンスをしていたため、これまでにも問題が起きているという。 「ウクライナ企業とは何年も仕事をしてきたのに、あっという間にすべてが止まりました。仕事ぶりにはとても満足していましたし、仕事の質もトップクラスでした。その企業のことも、自分たちのことも、こんな事態になってとても心配しています」と、エカテリーナさんは話した。 ナターシャさんは、変化を受け入れるのに苦労している。「まったく新しい種類の危機で、みんな迷い、困惑した気持ちになっています。ビジネスだけでなく、自分の生活においてもです。収入が途絶え、暮らし方を全部あきらめなくてはなりません。ソーシャルメディアを含めてつながりが減り、外国にいる家族や友人に会いに行くこともできません。失ったものはすでにたくさんありますが、それを理解しきれていません」 ダリアさんは、外国の大企業のロシア撤退で失業者が出ていると聞き、心配している。「今のところ、私が取り組んでいる政府出資のプロジェクトで人員整理はありません」と彼女は言う。「でも仕事を失うのではないかとすごく怖いです」 ■メディア閉鎖と冷戦の記憶 <新たな法律により、侵略について「フェイク」ニュースを広めたとみなされた者は投獄の恐れがある。独立系・国際系メディアは厳しい規制の対象に。反戦デモでは1万3000人以上が拘束されている> ダリアさんは、制裁はプーチン大統領の責任だと考えている。だが多くのロシア人は、政府の反ウクライナのプロパガンダを流す国営メディアからニュースを得ている。たくさんの人が大統領を支持しており、制裁をめぐっては、西側諸国に責任をなすりつけることになるかもしれない。 戦争を支持しない人もいるが、そうした人たちは沈黙を保っている。指導者を批判するのは、ロシア人にとってリスクが大きい。西側政府は、ロシア国民を対象に次々と科した制裁が、トップを変えるほどの痛みをもたらすことを期待している。だが、それには時間がかかるかもしれない。 制裁の痛みを感じるのは裕福なロシア人だけとの見方は、議論が分かれるところだ。次に何が起こるのか誰もわからないが、経済への打撃は深刻で長引くとみられている。ロシア中銀は、侵攻が始まってから「劇的な」経済的変化があったとしている。 表面的には、モスクワで何が起きているのか想像できないかもしれないと、ダリアさんは言う。市内のカフェやレストランは満席で、地下鉄は運行し、中心部の渋滞はなくなっていない。「ただそれは、抗議デモや捜索、この国を去ると騒いでいるクリエイティブな人たちの出国を目にしなければの話です。黙って国を去っている人も大勢いるでしょう。空気がどんどん足りなくなっていくような気分です」 現在の状況は、1990年代、ソ連崩壊後のロシア経済が破綻した当時の記憶を呼び起こさせる。「30代の人たちと当時のことや食料の配給券について話すのはおもしろいです。砂糖やバター、ウオッカを買うのにクーポンや券が必要でした」とダリアさんは話す。 「ソーセージを買うのにすごい列ができていたのを覚えています(中略)。別の街から来た客に物を売るのに反対して、大声で言い合いをしているのもよく見ました。情けなかった。二度とそんなことにならないことを願っています」 「貧困と失業が急増したので、強盗や泥棒が増えるのではないかと心配です」とダリアさんは言う。 ヤンさんは、生活上の大きな変化は感じておらず、出国するつもりもない。「ここには家族がいて仕事があります。新しい場所で人生を一からやり直すのはかなり大変です」 (英語記事 How sanctions have changed everyday life in Russia)
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最終更新日
2022.03.15 20:50:58
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