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過去ログ復刻 江南の春 先ごろNHKラジオを聴いていたら、この杜牧の詩が話題になっていた 途中から聞き出したので全体像がよくわからないのだが この鶯は高麗鶯だとか、どうも鳥類の話も含まれているらしい ということで、この漢詩の過去ログを復刻する この過去ログは2004年、私がこのブログを書き始めた初年度のものである ブログを書き始めた頃の文章は、私の今の文章から見ると、未だ、開発途上国である まあ、その後も、それほど「開発」されたわけでもないのだが(笑) それでも少し滑らかになり進歩した印象もある まあ、これは、私の内輪の話である 復刻するに際しては、目についたところを、多少 rewrite しようかな? とも思うのだが、実際にはどうかな? オリジナル過去ログの題名は ★ 漢詩 江南春絶句 千里鶯啼緑映紅 水村山郭酒旗風 南朝四百八十寺 多少樓臺烟雨中 と長いものになっているのだが、千里鶯啼緑映紅以下は、五言絶句の全文で、漢詩の題名自体は「江南春絶句」絶句なので、「江南の春」を復刻記事の題名とする ―――― 復刻記事 ―――― 漢詩はそれほど知らないのだが、それでも好きな漢詩というものがある。 漢詩の中には、長い漢詩もあるが、短いものもある。 短いもので、五言絶句、七言絶句なら、 それぞれ20語・28語の漢字しか使っていないのに、 【壮大な世界】や【深い憂愁の想い】が表現されている。 漢字の表現能力と中国の深い文化に驚嘆する。 もっとも私は漢詩が好きだと言っても、「唐詩選」などをちょっと眺めるだけだし、好きな漢詩を読めばそれで終わり。 深く読み込むとか研究する事は無い。 少なくとも、今まではではそう言う事だった。 ただ今日は、私の一番好きな漢詩を紹介したい気分。 これは高校の漢文の時間で習った漢詩の中の一篇で、いまだに覚えている。 それほど印象的だったということなのだろう。 ---------------- 杜牧 江南春絶句 千里鶯啼緑映紅 水村山郭酒旗風 南朝四百八十寺 多少樓臺烟雨中 ---------------- もう少しわかりやすく「読み下し文」にしてみます。 ---------------- 江南の春 絶句 千里 鶯 啼いて 緑 紅に 映ず, 水村 山郭 酒旗の風。 南朝 四百八十寺, 多少の樓臺 烟雨の中 ---------------- せんり うぐいすないて みどりくれないに えいず すいそん さんかく しゅきのかぜ なんちょう しひゃくはっしんじ たしょうの ろうだい えんうのなか ---------------- 今まで字面だけで楽しんでいたけれど、 みなさんに紹介するにはそれでは不十分かもしれないので、 急造ですが、私なりの解釈とふくらませたイメージを考えてみた。 ―――― 私が膨らませた意訳 ―――― 春の若葉が 水が満々と張られた水田を縁取りながら 見渡す限り 地平一面に拡がっている 所は江南(中国南部)、季節は春 紅い花々が その若葉の緑の中に映えて点々と咲いていて そのコントラストが鮮やかで美しい 鶯があちこちで啼いているのが聞こえてくる その啼き声は 山や谷で響き合い それから 遠く どこまでも 透き通るように響いて遠ざかって行く この近在にはは水郷・水辺の村々が広がっていて 小川や細い運河が 田んぼの中を網の目のように流れている 若葉や紅い花の花弁などが 上流から流れて来て 紅梅の枝の下をクルクルと回転しながら 鶏が餌をついばむ農家の土壁の脇を滑るように流れ 小さな村の丸木橋の下をくぐり抜ける その丸木橋には蓮華草が咲いている 葉や花弁は また ゆっくりと彼方に流れ去る 山の方を眺めてみると 山頂あたりは少し煙って見える その山の中腹あたりに 村落の外側を城壁のように囲む館が連なって見える所がある そうして そこには一軒の旅籠屋を兼ねた酒屋が遠望される 酒屋の印である白い旗が高く掲げられていて 山からの風にパタパタ はためいている そのはたごの暗い土間ではもう昼間から 渓谷で捕れた小魚を肴に、濁り酒をたしなんでいる風流人がいる 旅籠の泊まり客の旅人かもしれない 旅の人としても 昼間から濁り酒をたしなむからには 今日は旅に出ないで この村で 今日はゆっくり過ごすのだろう 振り返って 遙かな都の方をながめてみる 南朝に480以上もあると言われる数多い寺院の塔 その数々の塔が 春のまるで煙雨のように煙る霞の中で それぞれ ぼんやりと 墨絵のように浮かび出ている 寺寺の微かな古雅な鐘の音 それが いろんな音色・トーンで 切れ切れに 時には重なり合って 霊妙に 聞こえて来る ---------------- 南朝 = 5、6世紀に栄えた南中国の宋、斉、梁、陳の四王朝 この漢詩の作者、【杜牧】と言う人は、九世紀の盛唐の詩人で役人だった。 祖父が宰相だったという名門の貴公子である 男性ながら美貌の人と詠われている。 よほどの美男だったんだろう。 この詩自体も 味わい深く美しい。 旗がはためくこの江南の田舎の山の酒屋で 濁り酒の盃を静かに傾けていた旅の男は この【杜牧】自身と考えたい気がする。 ---------------- 私の実家の近くに、大昔、中国からの帰化人の里だったという 言い伝えのある里があって そこには広い梅林が広がっていて 幼い時には祖母に連れられてその梅林の見物に訪れたことがある その真ん中付近には、中国風の黄檗宗の寺もあるなど 昔はこの詩のような雰囲気が残っていた時期があった。 やはり故国をしのんで、似たような地形の場所を好んだのだろうと思う。 今はその梅林もみな伐採されてしまい、その跡地には 住宅がぎっしり溢れていて、そんな風情はまったく消えてしまっている。
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最終更新日
2022.03.16 00:32:51
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