カテゴリ:🔴 D 【防衛と安全保障】 改憲・沖縄
台湾有事で日米が中国に打ち勝つ「4条件」とは何か 1/18(水) 6:21配信 岡田 充 :ジャーナリスト 東洋経済オンライン ―――― alex99の感想と意見 ―――― 台湾有事関連の記事を数編、アップする 私の「まとめ 感想と意見」は、そのあとで記事として書くつもり アメリカのバイデン大統領は2023年1月13日、 ワシントンでの岸田文雄首相との会談で、 敵基地攻撃能力の保有と防衛費のGNP比2%増額など、 日本の新たな防衛力拡大路線を 「歴史的な増額であり、軍事同盟を現代化している」と絶賛した。 これに先立ち、アメリカのシンクタンクが台湾有事を想定した机上演習について報告書を発表。 「対中戦勝利の4条件」として、日本と台湾が進める対中抑止力の強化策と具体的に符号する提言をした。 中国側も報告でうたわれた自衛隊の関与に注目しており、中国と米日台による軍事的展開をうかがううえで「4条件」に着目したい。 ■中国軍の侵攻シミュレーション 報告書< 「次の大戦の最初の戦い」(The First Battle of the Next War)> を2023年1月9日に発表したのは、対中強硬政策の最先鋒、いわゆる「アメリカ軍事・情報サークル」の一翼を担う 戦略国際問題研究所(CSIS)だ。 机上演習は、 第3期習近平体制が終わる前年の2026年、 中国軍の台湾本島上陸を想定。 シミュレーションとして、 アメリカ軍や自衛隊の関与の度合いに応じ、約1カ月間に及ぶ中国軍と日米台の戦闘シナリオを24通りに設定した。 戦闘は、中国軍の激しい爆撃やミサイル攻撃で始まり、 台湾海軍と空軍は数時間でほぼ壊滅。 中国軍は台湾を包囲し数万人の中国兵が上陸を試みた。 台湾地上軍は海岸線で待ち構えて抵抗、 中国軍は物資の補給と内陸への移動に苦しんだ。 「最も可能性が高い」シナリオでは、 アメリカ軍の潜水艦や爆撃機、戦闘機が、自衛隊の支援を受けながら中国の強襲揚陸艦隊を無力化。 大半のシナリオで、米日台側は台湾防衛に成功した。 しかし、戦闘は極めて悲惨な結果を招いた。 アメリカ軍は空母2隻のほか10~20隻の大型艦艇、270機の航空機を喪失し多くの兵員を失った。 自衛隊も112機の航空機を失うと想定している。 シナリオのすべてで、アメリカ軍は核戦争を避けるため中国大陸の基地への攻撃は控えた。中国は在日米軍基地を攻撃するものの、戦況に変化はないと予測している。 一方、人民解放軍は1万人が死亡し 55機の戦闘機と138隻の大型艦船を喪失と推計。 台湾軍は3500人が死傷、26隻の艦船を失い大きな経済的打撃を受けた。 これが概要だが、報告書は、 ①台湾有事では日本が参戦しアメリカ、日本、台湾が共同で戦う、 ②アメリカは何年にもわたって維持してきたアメリカの世界的地位を損ねる、 ③中国は台湾攻略に失敗すれば中国共産党による一党支配が揺らぐ、 ④台湾は電気などライフラインを失い経済的ダメージを受ける、 などの結論を引き出した。 これには、南西諸島を含めた日本の民間人の被害、台湾の被害にはいっさい触れていない。 さらに「1カ月」の戦闘後も終結せず、「数カ月ないし数年間継続するかもしれない」と長期化を予測している。 報告タイトルが「次の大戦の最初の戦い」としたのも、それを物語る。 結局、世界第1位から3位までの経済大国が総力戦を展開する「台湾有事」には、勝者も敗者もない悲惨な結末が待ち構え、「間尺に合わない」選択であることをわれわれに教えている。 ■台湾地上軍の強化が必須 報告書は24回のゲームを分析した結果、中国の侵略に打ち勝つための「4つの必要条件」を挙げた。 4条件は台湾問題が米中対立の鋭いテーマになって以降、日本と台湾が次々に打ち出している、対中抑止力強化の内容とほぼ符合する。 岸田政権による敵基地攻撃能力の保有や大軍拡路線も結局、アメリカ軍事・情報サークルの対日要求に「素直に従った」結果とわかるのがミソだ。 4条件の第1は、「台湾地上軍の強化」だ。 報告は「中国軍はつねに台湾に上陸を試みるため、台湾の陸上部隊はいかなる上陸地点でも上陸を封じ込め、強力に反撃できる能力が必要」とした。 同時に「台湾地上軍には大きな弱点がある。台湾は兵員を補充し厳しい統合訓練を行わなければならない」と提言している。 この要求に対応する台湾側の動きを挙げよう。 台湾の蔡英文総統は2022年12月27日、18歳以上の男性に課している4カ月間の軍事訓練を事実上の兵役として1年に延長すると発表した。 決定には伏線があった。2022年7月に台湾を訪問したアメリカのエスパー元国防長官は、台湾側に「軍事予算倍増」と「1年の兵役義務化」を要求した。 トランプ政権が台湾陸軍の主力戦車「エイブラムスM1A2戦車」の台湾供与を急いできたのもその一環だ。 2021年春には、アメリカ陸軍顧問団が極秘で台湾・新竹の台湾戦車部隊に長期駐留し、台湾側の軍事訓練に当たった。 「提言」はすでに実行に移されている。 第2は「台湾にウクライナモデルは存在しない」だ。 第1の「地上軍の強化」とも関連するが、「アメリカ軍は戦時には、台湾防衛を決定した場合、速やかに直接戦闘に従事しなければならない」と提言した。 ウクライナ戦争では、アメリカと北大西洋条約機構(NATO)は直接兵力を投入せず、大量の機材や物資をウクライナに供給している。すなわち、「代理戦争」だ。 報告は「中国は台湾を数週間あるいは数カ月間孤立させることができるため、ウクライナモデルを台湾で再現することはできない」と判断。 台湾有事では、代理戦争では勝てないという認識を示した。 アメリカ軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は2022年5月、「台湾は防衛可能な島」として、「台湾有事」が発生してもアメリカ軍は派兵しない「代理戦争」の検討を示唆した。(「自分たちで守れ? 台湾有事でも派兵しない米国」参照)。 台湾では、アメリカの台湾防衛に懐疑的な世論が潜在的に多くあるが、台湾有事ではアメリカ軍を中心とした総力戦でないと勝利できないとの判断だ。 ■在日米軍基地の使用も 第3は「アメリカは日本国内の基地を戦闘行為に使用できるようにする」。 報告は「日本との外交的・軍事的関係を深める。中国との広範な競争において他の同盟国も重要だが、日本が要」と言い切った。 在日米軍基地の使用なしには、アメリカの戦闘機・攻撃機は効果的に戦争に参加できないとの判断からである。 台湾有事の切迫が喧伝されるようになってから、アメリカのジョージワシントン大学のマイク・モチヅキ准教授は、アメリカによる対日2大要求として筆者に、自衛隊のスタンドオフミサイルの保有と在日米軍基地への自由アクセスを挙げたが、提言はまさにこれを提言とした。 今回の日米首脳会談に先立ち、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は共同発表で「日米の施設の共同使用を拡大し、共同演習・訓練を増やす」をうたい、 アメリカ側は沖縄の海兵隊を2025年までに離島防衛に即応する「海兵沿岸連隊(MLR)」に改編するとした。 在日米軍基地の自由アクセスの要求への回答でもある。 第4はスタンドオフミサイル(長距離対艦巡航ミサイル=トマホーク)の増産を挙げ、「トマホークを搭載できる爆撃機はアメリカの損失を最小限に抑えつつ侵攻撃退する最短の方法。このようなミサイルを調達し、既存のミサイルをこの対艦能力で改良することが、調達の最優先事項」と提言した。 敵基地攻撃能力の保有と、トマホーク数百発の購入を宣言した日本は、アメリカにとって実に頼もしい同盟国に映るはずだ。 ■中国も日本の役割に強い関心 CSISによるシナリオは「台湾有事」についてさまざまな啓示を与えている。中国もCSISシナリオに強い関心を示している。 中国軍事に詳しい中国研究者は筆者に対し、 ①日本は将来台湾問題で「主役」になりうるか、 ②台湾島嶼部の防衛と情報収集・警戒監視・偵察活動などでの自衛隊の役割、 ③自衛隊が宮古水道の封鎖を実行する可能性 など、自衛隊の役割に強い関心を示した。 報告はさまざまな示唆を与えている。 中でも、日米同盟の下で軍事協力強化が「憲法の縛り」を越え、際限なく拡大しつつある危険性だ。 さらに米日台の「暗黙の同盟化」が進む中、国交のない台湾との軍事協力が日本にとって「自明の選択」のようにアメリカからみなされていることだ。 日本の安保関連3文書は、戦後の安保政策を大転換するだけではない。
日米の「1つの中国」政策という国際政治の基本的枠組みの改変がなし崩し的に進行していることにも、注視しなければならない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.01.18 12:57:12
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