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中国の一帯一路構想 パキスタンでも綻び 【コラム】パキスタンのグワダル港で行き詰まる中国の巨大経済圏構想 1/22(日) 7:17配信 朝鮮日報日本語版 崔有植(チェ・ユシク)東北アジア研究所長 年末年始、中国は内憂外患に苦しんでいます。 内ではゼロコロナ防疫政策を解除した後、激増する新型コロナ患者で頭を痛めています。 外では、習近平国家主席の最大の業績に挙げられる一帯一路がもめ事を引き起こしています。 ーーーー 友邦パキスタンに数百億ドル(100億ドル=現在のレートで約1兆2800億円。以下同じ)を投資して確保した、インド洋北部のグワダル港。ここで昨年10月から大規模な住民デモが続き、工事は事実上中断された状態だといいます。 ■米中衝突に備えた戦略輸送路 インド洋北部、アラビア海に面するグワダル港は、中東産油国の原油輸出ルートとなっているホルムズ海峡からわずか500キロの距離にある戦略的要衝地です。東には中国の怨敵、インドをにらんでいます。 中国は2015年、グワダル港に162億ドル(約2兆800億円)を投じて南アジアを代表する国際港湾として開発し、43年間直接運用することでパキスタンと合意しました。ここから出発して、北東へ3000キロ離れた中国・新疆ウイグル自治区のウルムチまで、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)を構築するという大規模プロジェクトの一環でした。中国はこのプロジェクトの成功のためパキスタンに巨額の借款を提供し、習近平主席や李克強首相が直接訪問するなど、ことのほか力を入れていました。 CPECは事実上、一帯一路を代表するプロジェクトだと言えます。中国の立場からすると、米中衝突で南シナ海が封鎖されても中東産の原油や天然ガスを引き続き持ってくることができる、戦略的ルートだと言えます。中国の空母機動部隊がこの港に入れば、インドを軍事的にけん制することも可能になるでしょう。 中国はグワダル港の建設と、中国につながる道路、鉄道、送油およびガスパイプラインの構築のため、2030年までに総額620億ドル(約7兆9500億円)を投じる計画を立てています。 ■分離独立勢力のテロ事件が続発 ところが、中国が2016年、正式に港湾の運営に入った後から、この地域では分離主義勢力のテロや住民のデモが絶えません。グワダル港のあるパキスタンのバルチスタン州は、少数民族のバルチ族の分離独立運動が強い地域です。バルチスタン解放軍という武装団体まであります。彼らにとって、中国のパキスタン政府支援とCPECプロジェクトはありがたいことではありません。 ここでは2017年から、中国企業が建設したホテルに対する武装攻撃、駐パキスタン中国大使を狙った爆弾テロ、カラチ大学孔子学院バス自爆テロ事件などが相次いで起きています。パキスタン政府は3000人の軍兵力を投入して中国人保護に乗り出しましたが、テロは絶えません。 パキスタン当局は2020年、グワダル港地域の中国人保護のため周囲に総延長20キロのフェンスを設置しましたが、これにより現地住民まで立ち上がりました。フェンスや、各所に設置された検問所のせいで、住民の生活はかなり不便になったのです。パキスタン政府は、フェンスを設置する一方、事前に住民の意見を聴取する手続きは取らなかったといいます。 中国漁船の違法操業も住民たちを刺激しました。大型の底引き網漁船を動員して魚類資源を根こそぎ取っていくので、地域漁民の生計は苦しくなっているのです。 ■「発展どころか、海と生計が失われただけ」 地域の漁民や労働者などは2021年8月、この一帯の道路を占拠して大々的なデモを繰り広げました。現地の政治団体や民権運動家が主導し、女性や子どもまで加勢したことで規模が大きくなったといいます。最終的に、当時のイムラン・カーン首相が違法漁労の取り締まりなどを約束したことでなんとか鎮火したといいます。 しかし、パキスタン政府がきちんと約束を履行しなかったことで、昨年11月から再びデモが燃え上がりました。グワダル権利運動という団体が中心になり、グワダル港の出入り口や、グワダル港と高速道路を結ぶ連結道路などで数百人から数千人が連鎖デモを繰り広げました。 彼らは検問施設の縮小、イランとの非公式国境貿易の制限緩和、中国漁船の違法操業取り締まりなど40項目の抗議・要求事項を掲げ、要求事項が受け入れられなければCPEC建設を妨害するとも言ってます。「1週間以内に中国人はみんな出ていけ」という主張が出たこともありました。 英国「ガーディアン」紙の現地取材内容を見ると、住民らの不満を察することができます。ある70代の漁民は「グワダル港を開発して経済回廊を建設すれば、地域も発展して仕事も増えると言ったが、結果は海と生計を失っただけというありさま」と語りました。 ■「反中の道」となる一帯一路 昨年末、パキスタン政府は5人以上が集まる集会やデモを禁止し、デモ隊およそ100人を逮捕しました。中国政府が現地中国人の安全や経済的利益の保護を要求し、圧力を加えたことから、強硬策を取ったのです。この過程で警察官1人とデモ隊1人が死亡し、取材中の記者が拘束される事件も起きたといいます。 中国政府はこれまで、グワダル港開発を含むCPECプロジェクトを一帯一路の模範事業として大々的に宣伝してきました。両国にとって互いの役に立つウィンウィンのプロジェクトだというわけです。現地住民の今回のデモは、こうした宣伝がどれほど空虚な言葉であるかをよく示しています。 この件を巡り、中国外交部(省に相当)は当惑の表情を浮かべています。外交部報道官は昨年11月、この事態についての質問が出ると「デモは中国や経済回廊プロジェクトに反対する活動ではない」と主張しました。パキスタン政府と現地住民の間の対立だという主張ですが、実情とは大きな差のある発言でした。習近平主席の力点事業なので、事実を知りながら、突拍子もないことを言っているのです。 一帯一路はカザフスタン、キルギスタン、ミャンマーなど行く先々で現地住民の強い反対世論に直面しています。中国が主張する「共存共栄の21世紀のシルクロード」ではなく、中国に対する反対世論を世界に拡散する「反中の道」となりつつあります。
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最終更新日
2023.01.23 01:38:21
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