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今春以降の新型コロナ流行予測 3/23(木) 14:00配信 時事通信 コメント444件 新型コロナウイルスの第8波流行もようやく収束し、社会は5月8日からの5類感染症への移行に向けて、対策緩和ムードが高まっています。 こうした法制面の変更により、「新型コロナの流行は終息に近い」と思う人も少なくありませんが、 流行はこの先も当分の間、続くことになりそうです。 流行が再拡大する時期には感染対策を再び強化する必要があります。 そこで今回は、2023年春以降の新型コロナの流行を予測してみます。 ◇世界的に感染者数は減少 日本では22年11月に始まった第8波の流行が23年3月にはほぼ収束しており、この間におよそ1000万人以上の感染者が発生しました。お隣の中国でも、22年12月にゼロコロナ政策が緩和されてから感染者数が急増し、世界保健機関(WHO)は緩和後から3月中旬までに少なくとも9000万人が感染したと報告しています このように、22年から23年の北半球の冬には、東アジアを中心に新型コロナの感染者数が大きく増加しましたが、3月までにこの地域の流行は収束しています。欧米諸国でも冬の流行が心配されましたが、あまり大きな被害は出ませんでした。 世界全体としても23年3月になり新規感染者は減少傾向にあり、これは世界的にワクチン接種が拡大したことや、感染により免疫を獲得した人が増えたことによると考えられています。 それでは今後の日本の流行は、どのように推移するのでしょうか。 「ウイルスの種類」、「国民の免疫状態」、「気候の影響」の3点から検討してみます。 ◇ウイルスの種類 現在流行している新型コロナウイルスの種類はオミクロン株であり、その亜型が次々と出現している状況です。 22年夏にはBA.5型が世界的に流行し、日本でも第7波の大流行を起こしました。BA.5型の世界流行はその後も続き、日本では第8波も起こしています。 BA.5型に代わって、22年秋からはその系統であるBQ1型が世界的に拡大しており、日本でも現在はこのタイプが主流になっています。 BQ1型は免疫逃避を起こしやすいとされていますが、感染力はBA.5型と大きな違いがありません。 一方、米国ではXBB.1.5型というBA.2型の系統が22年秋から拡大し、現在では検出されるウイルスの9割を占めています。 XBB.1.5型は免疫逃避を起こすだけでなく、感染力もBA.5型より強いと考えられていました。このため、感染者の急増が懸念されましたが、米国での感染者数はあまり増えず、重症者の数にも大きな変化は見られていません。XBB.1.5型の日本での検出数はまだ少ない状況ですが、今後は日本でも主流になる可能性はあります。ただし、そのために感染者数が急増することにはならないでしょう。 このように、ウイルスの種類としては、当面のところ流行を急拡大させる種類は出現していない状況です。 ◇国民の免疫状態 新型コロナウイルスへの抵抗力には、 「ワクチン接種による免疫」 と 「感染による免疫」 の両者が関与します。 この二つの免疫が国民の間で高い状態を維持できれば、流行拡大を抑えることができます。 ワクチン接種に関しては、日本で2回目までの接種を完了した人が、現時点で国民の80%以上に上っていますが、22年秋から始まったオミクロン株対応ワクチンの追加接種を受けた人は、44%と半分以下の状況です。今後、厚生労働省は、高齢者などハイリスク者を対象にした追加接種を23年5月から、全国民を対象にした追加接種を9月から行う予定です。ワクチンによる免疫は時間の経過とともに減衰するため、それを一定のレベルに保つには、こうした追加接種を受けていく必要があります。 感染による免疫を持っている人は、厚生労働省などの抗体調査によれば、22年2月の時点で国民の5%以下と大変低い状況でした。この数値が22年11月には28%にまで増加し、23年2月の調査では42%になっています。 これは欧米諸国に比べるとまだ低い値ですが、ワクチン接種による免疫と総合すれば、日本での新型コロナへの免疫状態は現時点でかなり高く、流行の急拡大が起こりにくい状況になっています。 ◇気候の影響 新型コロナウイルスは呼吸器に感染する病原体であり、冬季に流行が拡大しやすく、これは過去3年の国内流行でも経験されてきたことです。 このため、23年も11月以降の冬の到来とともに、流行が再拡大することは十分に予測できます。 これに加えて、日本では過去3年にわたり夏にも流行が拡大してきました。これは呼吸器感染ウイルスの一般的な特徴ではなく、別の要因が関与した可能性があります。例えば、21年夏はデルタ株、22年夏はBA.5型のオミクロン株が国内に侵入しており、感染力の強い変異株による流行が発生したためと考えることができます。 つまり、今年も夏に同様な変異株が国内に侵入した場合は、流行が起こる可能性はあるでしょう。 これ以外にも新型コロナが夏の流行を起こした原因はあるかもしれませんが、現時点で詳細は分かっていません。 ◇総合的な流行予測 ワクチンの追加接種を受ける男性 以上、 「ウイルスの種類」、 「国民の免疫状態」、 「気候の影響」 という三つの観点から今後の流行状況を検討してきましたが、 総合的に予測するとどうなるでしょうか。 まず、新型コロナの流行は今後も数年は続くと考えておく必要があります。 ただし、この流行にも拡大期と収束期があり、収束期には感染対策を大幅に緩和した生活を送ることができます。 その一方、拡大期にはマスク着用などの感染対策を再び強化させる必要があります。 大事な点は拡大期がいつになるかですが、23年は11月以降の冬の時期に起きる可能性がかなり高いと思います。 今年の夏については、感染力の強い変異株が侵入すれば流行する可能性もありますが、その確率はあまり高くないでしょう。ただし、夏の流行には他の要因も関与しているため、慎重に考える必要があります。 拡大期にどれだけの感染者が出るかは、その時の国民の免疫状態や流行するウイルスの感染力によります。 一定の免疫状態を保つためには、国民の皆さんに厚生労働省の方針に沿ってワクチンの追加接種を受けていただくことが欠かせません。一方、ウイルスの側からすると、今のところ感染力の強い変異株は出現していない状況です。 いずれにしても、現時点で国民のワクチン接種や感染による免疫状態は高いレベルに達しているので、拡大期に感染者が増えても重症者が増加することは起こりにくいと考えます。 最後に、 こうした流行予測が根本から崩れる事態も想定しておく必要があります。 それは、オミクロン株以外の新しい変異株が世界流行した場合です。 感染力や病原性が高ければ、政府は再び新型コロナを2類相当に格上げする予定です。 その確率は高くありませんが、こうした事態も考えておかなければなりません。 法制面が緩和されても、新型コロナの流行そのものはまだ終息していないのです。 (了) 濱田特任教授 濱田 篤郎(はまだ・あつお)氏 東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授。1981年東京慈恵会医科大学卒業後、米国Case Western Reserve大学留学。東京慈恵会医科大学で熱帯医学教室講師を経て、2004年に海外勤務健康管理センターの所長代理。10年7月より東京医科大学病院渡航者医療センター教授。21年4月より現職。渡航医学に精通し、海外渡航者の健康や感染症史に関する著書多数。新著は「パンデミックを生き抜く 中世ペストに学ぶ新型コロナ対策」(朝日新聞出版)。 - お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.03.23 21:50:18
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