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トランプ 出頭でNYへ 「かんべえの不規則発言」より <4月3日>(月) 〇明日、4月4日は画期的な日となります。 ドナルド・トランプ前大統領が起訴されて、ニューヨーク市に出向いて罪状認否を行います。 アメリカの元大統領が起訴される、というのは前代未聞――ではないけれども、史上2回目のことです。 第18代のユリシーズ・グラント大統領の前例があります。 もっともグラントさんの罪状はスピード違反であり、それもクルマではなくて馬車でありました。 なにしろ日本で言えば明治時代の方ですので。 〇さて、ここで問題です。トランプさんはどんな悪いことをやったのでしょうか? 〇ポルノ女優、ストーミー・ダニエルズさんと不倫して、そのことに対する口止め料を支払ったから、だと思っている人が少なくないようです。 残念ながら、それは違います。よしんばこれが日本であったとしても、浮気の口止め料として当該女性に1億円支払ったとしても、それは刑事事件とはなりえません。そんなことを取り締まる法律はありませんから。アメリカだって同様です。 〇ところがですな、仮に1億円を受け取った女性が所得の申告をしていなかったら、これは脱税という犯罪になる恐れがあります。トランプさんの罪状もそれに近いです。 口止め料の13万ドル(1億円よりは安いです)は、選挙資金の中から裁判費用として拠出されたらしい。 これは選挙資金規正法と脱税の両方の罪を構成するでしょう。 〇ちなみに実際に口止め料を払ったマイケル・コーエンという札付き弁護士は、既に有罪判決を受けてムショに入って、確かもう出てきたはずです。トランプさんは、「そんなのわしゃ知らんかった」と言ってます。しかし1300ドルならともかく、13万ドルを勝手に立て替えてくれる人がいるとは、普通は考えにくいですよねえ。かつてはトランプさんの腹心だったコーエン氏が、今や不倶戴天の敵となっていることは言うまでもありませぬ。 〇正確に言いますと、トランプさんが何の容疑であるかは現時点では公表されていません。 起訴状は裁判のときに初めて公表されます(容疑が30個くらいあるとの噂もある)。 元大統領を起訴したのはマンハッタン地区検察のブラッグ検事であり、それはNYの大陪審が「起訴相当」と決したからです。ただし、あくまでもニューヨーク州内の法律に基づいてのことですので、そんなに大きな罪にはならないでしょう。 〇それでも明日になれば、トランプさんはニューヨーク市に出頭して、罪状認否を行います。ついでに指紋を取られ、写真を撮られて、「アナタには黙秘権がある・・・」てなことを告げられます。刑事ドラマによくあるシーンですよね(「ミランダ警告」というそうです)。ただし、元大統領が収監されることはさすがにないでしょう。何しろその場面においても、元大統領にはシークレットサービスがついていて、彼らは元大統領を守るという法律上の責務があるのですから。 〇ところでこの大陪審というヤツ、名前はよく聞きますけど、いったいどんなものなのか。 米英法では一般的な存在で、検察が勝手に諦めて不起訴にしてしまうような事件を、陪審員が民意に基づいて起訴させるための仕組みです。 アメリカでは非常に権威のある存在です。 クリントン大統領が弾劾されたのも、大統領執務室でインターン生とエッチしたからではなくて、大陪審で嘘をついたからでした。アメリカにおける「偽証」は罪が重いです。 〇日本は大陸法なので、このへんの発想はちょっとなじめないものがあります。 強いて言えば、検察審査会という制度が大陪審に似せて作られたと言われています。 「検察審査会が起訴相当と決めました」というニュースが流れると、「ああ、また公判が維持できそうもない筋ワル案件で時間がつぶれる・・・」といった反応が一部にあったりします。「とにかくあらゆる悪を起訴すべし」と考えるか、「悪を起訴するからには百発百中であるべし」と考えるかは、ここは意見が分かれるところでしょう。 〇しかるに本当の問題はですな、ストーミー・ダニエルズ氏に対して口止め料が支払われたのが2016年であった、つまり大統領選挙の最中であった、という点にあります(実際にエッチしたのは2006年のこと)。 仮にあの年のどこかのタイミングでこの問題が弾けていたら、最低でも10万票くらいは動いていただろう。その10万票が、ペンシルベニア州とウィスコンシン州とミシガン州であったならば、選挙結果はひっくり返ってヒラリー・クリントン氏が勝っていたことになる。となれば、13万ドルは安かった!という評価になるはずです。 〇民主党支持者の立場になってみれば、その怒りの深さが容易に理解できます。なにしろ彼らは「2016年は本当は勝っていたはずだ。ロシアの選挙妨害か何かのせいで、信じられないことが起きてしまったのだ」と考えている(2020年選挙における共和党支持者の怒りの裏返し)。 リベラル派の多いニューヨーク州の陪審員たちが、「起訴相当」と結論したのも自然な成り行きでしょう。 逆に言えば、トランプ支持者たちはそのことが許せない。 〇というわけで、この案件はまことにネタの宝庫なのですが、話はここに止まらない。3月24日付のThe Economist誌が、"Why Stormy Daniels is so dangerous"という記事を載せている。なんと彼女(本名はステファニー・クリフォードという)は、フロリダ州のストリップ劇場に出演中で、つい先日、その前をトランプさんの車列が通った(マー・ア・ラゴからゴルフ場に行く途中だった)てな話が載っている。いや、もう凄すぎます。 「39歳のクリフォードさんは、クラブで最も高齢のストリッパーである」とか、そんなこと書くなよ!本筋と関係ないじゃん! 〇格調高いThe Economist誌はさすがにここまでは書いていませんが、 彼女はトランプ氏とエッチした時の体験を、"Worst 90 seconds of my life"だと語っている。 90分じゃなくて、90秒であったと。 トランプさん、まだ息をしているでしょうか。 それだけじゃない。 彼女は"Full Disclosure"という手記を書いていて、 そこではトランプさんの男性自身が"like the mushroom character in Mario Kart."だったとバラしているのです。 〇ということで、エコノミスト誌の結論はこうなる。 Ms Clifford has not merely ridiculed and perhaps imperilled Mr Trump more effectively than anyone else. She has done so, most crushingly of all, while coming across as perfectly pleasant. (クリフォードさんはトランプ氏を誰よりも効果的に嘲笑し、おそらくは危険にさらしただけではない。彼女は完全に愉快な人物でありながら、もっとも衝撃的なことをやってのけたのだ) 〇いやー、ホントにそうですね。「ダニエルズ無双」とでもいうんでしょうか。あのトランプさんにも全く歯が立たない相手がいる、と考えるとちょっと愉快であります。 ―――― 私の感想 ―――― トランプ あの熊のような身体なのに 90 seconds! マリオカートの mushroom! 私の完勝だ!! それに私は、90 minutes ! も可能なのだ! 昔のことだけれど・・・ 相当、昔のことだけど・・・ (急に声が小さくなる)(涙) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.04.05 01:01:28
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