第44話 独立の果てに
前線に追いついたヨーディは作戦を伝え、兵を二分する。「このまま進むより、直接制圧する方が早い。 ゼリクトア軍も後詰としてきている。問題はないはず」ヨーディ隊は少しずつ進路を変えて、夜を迎える。バフタールに気付かれると大軍が帰還して目的を果たせなくなるが、ゼリクトア軍が怪しい動きをしているという情報は来ておらず、ひとまず安心して休息に入る。(明日、一気に突き進むしかない)翌日、本拠地を目前にして待ったがかかる。バフタール軍の一部が戻ってきているという情報が入り、行軍を止めて考え直さなければならなくなる。「敵は疲れていて今ならまだ間に合うのでは?」「ここで時間をかけるのはもったいないかと」強行突破を提案する者もいるが、ヨーディは何かが気になる。たとえ一部だとしても、戻ってくること自体が困難であるはずだ。イグリス軍の包囲網を抜けて帰還したということは、それまでに数日かけなければならず、戦況に変化があったとみる必要がある。それから報告が届き、撤退を決意する。「バフタールが前線から後退!イグリスも包囲を解き、 追撃する様子は見られません!」「ゼリクトア軍が行軍を反転させています!」これで戦争は終結を迎え、バフタールは大きく戦力を減らす。戻ってきたヨーディは結果を報告している。「すべてはイグリス王の手の内だったというわけか・・・」レイトは落胆を通り越して呆然としている。あのまま強行していれば、バフタールとの潰し合いになり、イグリスにとって最上の結果となる。たとえイグリスからの独立をやめていたとしても、ゼリクトア軍にバフタールを攻め込ませたに違いない。「あとは大国・イグリスの思うがまま、だな」ため息をつくレイトにヨーディは殴り掛かる。「やっとフューリッドを取り戻したところだろ! これから平和に向かっていけるんじゃねーのか!?」ウェントソンに腕を掴まれながら叫ぶと、静かに腕を下ろす。レイトは頭を抱えて机に臥せっていく。「レイトが創るフューリッドを見せてくれよ。 今度間違ってたら、ちゃんと殴ってやるから」「殴るな」とレイトとウェントソンはぼそっとつぶやく。とある日、ヨーディはビルクのところに来ている。「お前が来たってことは、噂は本当だったというわけだな?」噂とはレイトがアルケデニック派の処罰を決行したことだ。「階級を下げるくらいじゃ甘いんだよ。長いこと待たせたくせに」そう言うビルクの顔は緩んでいるのが分かる。「これからは協力してくれるんだろ?言うまでもねーか」「あぁ?不利益なことはしねぇぞ。これからもな」ヨーディはビルクと別れ、建設中の水路を見つめる。(まずはこれだな。出来上がるまではまだまだけど)結