恋と銃弾と狂気
"China 9, Liberty 37"、このタイトルがDVD化されると、「今度こそは!」と期待をするのだが、全てビデオ起こしのひどい画質のものしかDVDが発売されていなかった。いつかはここで紹介したいと思っていたのですが、今回、Garringoさんから貴重な素材を頂戴致しましたので、ようやく紹介することができました。 「恋と銃弾と狂気」 "Amore, piombo e furore"という原題も、正直ちょっと重い感じがするが、 "China 9, Liberty 37"という英語のタイトルは、果たして製作者たちが選んだタイトルなんだろうか?どうもビデオ発売時に誰かが無責任につけたのではないかと疑いたくなる。冒頭に出てくる道標に記された文字をそのまま、タイトルにしただけで、この深いドラマが全く想像ができないタイトルである。ビデオでは"Gunfire"というもっと何も考えていないタイトルのものもあるが、単純だが、"Clayton & Catherine"や"Clayton Drumm"というタイトルを付けた国の方がセンスがあると思う。さて、この作品、アメリカン・ニューシネマ時代の異端監督と呼ばれるモンテ・ヘルマンの手によるもの。(助監督アントニオ・ブラントが監督として、クレジットされているケースもあるが...)B級映画の帝王 ロジャー・コーマンのもとで、ジャック・ニコルソン主演のニューシネマ・ウェスタン「銃撃」「旋風の中に馬を進めろ」を撮った監督らしいが、正直私は作品を見たことがなかった。確かにこの「恋と銃弾と狂気」も何となく重苦しい雰囲気があるのもヘルマン監督の作風なのだろうか?しかし、『荒野の用心棒』のアメリカTV放送時に本篇前に挿入されたアバンタイトルを演出したのも、 ヘルマン監督とのこと。何か不思議な感じがする。前置きが本当に長くなってしまったが、作品についてだが、ストーリーはシンプルだが、まさに"恋"に落ちたファビオ・テスティ演じるガンマン クレイトンと人妻 キャサリン(ジェニー・アガター)と、二人を追う夫 マシュー(ウォーレン・オーツ)の人間模様が描かれている。ファビオ・テスティはカッコいいですね。ただ、この作品では無敵のヒーローという感じではなく、有名なガンマンではあるが生身の男を演じているが、これもなかなかいい。 ウォーレン・オーツも哀愁を感じさせる初老の男って雰囲気が良く出ているが、W・オーツもヘルマン監督作品の常連のようで、個性をうまく引き出されているのかもしれない。やはり、全盛期のマカロニとは違い、人間臭さ、リアリティーさを強く感じさせるのも、演出によるところが大きいと思うが、70年代も後半に作られた作品というところで時代を感じさせられる。この頃、アメリカでは独立200年を記念してイーストウッドの「アウトロー」や「ミズーリブレイク」、ジョン・ウエインの遺作「ラスト・シューティスト」が作られていた。脳天気なお祝いムードの作品ではなく、監督や出演者は一流ながらわりと暗い感じの地味目の作品が多かったのが印象的だった。ちなみに、この頃のマカロニといえば「シルバー・サドル~新・復讐の用心棒」「ハチェット無頼」等。濫造期を過ぎ、インディアンものやアドベンチャーものに走る前の谷間で、ピリッとした作品が作られた時期だと思う。ついつい脱線してしまうが、この作品のもう一つの魅力はジェニー・アガターであることは間違いない。 イギリス出身で子役から映画に出演。撮影当時は25歳。失礼かもしれないが、この作品のキャサリンにピッタリなどこか垢抜けないところが何故かいい。最後に音楽。いい劇伴も多く、ロニー・ブレイクリーが歌う”China 9 love ballad”はとても哀愁のあるいい歌なのだが、イタリア版では頻繁に使われていて、ちょっとしつこいかも?そうそう、どうでもいいことですが、クレイトンが身を隠しに行くところ行くところ、すぐに嗅ぎ付けられてしまうというのがとても気になった。有名なガンマンだからすぐにばれてしまうのか、まぁ細かいことは気にしない、気にしない。http://alleluja.web.fc2.com/piombo.htmhttp://alleluja.web.fc2.com/piombo2.htm