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カテゴリ:オカルト系
夏と言えば怪談と言うことで、怖い話という程ではありませんが、不思議な話をチラホラと思います。プラモで飛行機ばかり書いてますし、空にまつわる奇談にしたいと思います。ネタはいくつもあるので、機会を見て書いてみます。 なお、実話を元にした話から拾ってきたのですが、鎌倉で私自身が経験した話と違うので、どこまで信憑性があるかとかは何とも言えません。まぁ、お気軽にお読みいただければと思います。 かろうじて英本土上空の制空権を守ったイギリス空軍ですが、自軍の消耗も激しく、戦力強化に躍起になっていました。欧州の大半はドイツの支配するところとなり、いつイギリスへの侵攻が再開されるか分かったものではありません。 座して待っていては、追い詰められてしまいます。英軍としては戦力不足を承知で、ドイツ軍に対する戦略爆撃に手をつけはじめました。 A20は、特別性能の良い飛行機ではありませんが、頑丈で操縦性も良かったので重宝されました。イギリスはこの機を使って、ドイツ占領地の鉄道や道路等の爆撃を計りました。 12機のA20を出撃させて、とある拠点の爆撃が命じられました。それなりに重要な任務であったようで、爆撃の結果判定のために偵察機が後刻出発し、出撃前は爆撃団司令官の中将が閲兵する物々しさだったそうです(伝聞系なのは、作戦日時、人名、攻撃拠点名などは極秘扱いのため公開されていないためです)。 整備員たちは、帰ってくる飛行機を迎え入れるための様々な準備に追われます。損傷した機体の修理部品や、火災に備えた消化剤・放水の準備し、医療班は負傷者を速やかに搬送するための救急車の手配など、休む間もありません。 司令官も部隊や基地の運営の書類仕事をしながら、時計を見て彼らが帰ってくる時間を緊張しながら待ちます。 「今日は何機無事に帰ってくるか・・・」 戦争である以上、犠牲者が出るのは避けられません。毎日の戦闘で見知った顔が減っていくのを堪えなければならないのです。作戦行動中は無線封鎖をおこなうため、彼らが着陸するのを見届けない限り、無事を確認できません。 「帰ってきた」 司令官は安堵の息を漏らしました。しかし同時に暗澹たる気持ちも抱きました。エンジンの音が少ないのです。 「4機・・・いや3機か」 あらかじめ「帰還後は司令官の元に報告に来るように」と命令してあったため、エンジンが止まってまもなくすると、足音が近づいてきました。 ノックの後、入出してきた搭乗員たちは9名、A20は3名乗りなので、3機が生還したということになります。この時なぜか彼らを案内して来るはずの副官がいない事に、司令官は微かな疑問を持ちましたが、すぐに目の前の搭乗員たちに感心を戻しました。 「これで全員か?」 その言葉に、搭乗員たちは頷きました。彼らは一様に死人のような青い顔をしており、激しい戦闘をくぐり抜けてきたことが窺えました。 司令官は口頭で戦闘報告を聞き、次いで規則どおり戦闘詳報を作成させました。司令官は彼らが書類に氏名・階級・認識番号・日付を書き、サインするのを見守りました。 「諸君、ご苦労だった。バーに行って一杯やりたまえ。話は通してあるかに安心して飲むといい」 司令官がそう声をかけると、搭乗員たちは敬礼して退室していきました。 「サー、誠に残念な報告があります」 司令官は、副官がさっき搭乗員たちを案内して来なかったことを思い出し、叱ってやろうと思いましたが、重要な報告があるようなので、それを聞いてからにと思い直しました。 「サー、全機喪失です。12機全機撃墜されました」 副官はまじまじと司令官の顔を見つめました。 「閣下、それはどういうことでしょうか? この基地には1機も帰還しておりません。偵察機も12機全機が撃墜されたことを確認、報告してきております」 司令官は副官に今作成されたばかりのパイロットたちの署名の入った戦闘詳報を手渡しました。 一読した副官は青ざめ、顔を強ばらせました。そこに書かれていた内容は、さっき偵察機の情報将校から聞いた話と一致したからです。 「閣下、いったいこれをどこから・・・」 もちろん、副官も他の誰にも答えられるはずがありません。ただ彼らの手元には、書かれるはずのない戦死した搭乗員たちの書いた報告書だけが残されました。 報告書の内容は、実際に戦闘に参加した者でしか知り得ない内容が含まれていたと言われています。 そしてアメリカの航空専門家マーチン・ケイディン(作家としては、『宇宙からの脱出』『600万ドルの男』で有名)に発掘されるまで、忘れ去られることになりました。
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