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2014.10.27
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カテゴリ:火山災害

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御嶽山が噴火してから今日で1ヶ月になります。改めてお亡くなりになった方々にご冥福を申し上げたいと思います。

今回のような災害が起きると、必ず「何故災害を予測できなかったのか」といった声が上がります。

もちろん、気象庁や研究機関がサボっていたわけではなりません。地震にせよ津波、台風を含めて、災害の多くは人間の予測を上回る形で起こるものですから、言いたい気持ちはわかりますが、現時点での観測技術の限界としか言えません(時折、避難勧告の遅れなど、人災の面が強い災害もありますが)

さて御嶽山ですが、実は富士山よりデータが乏しく、噴火予測が難しい山のひとつです。

富士山は文献資料に出てくるものだけでも、江戸時代の宝永噴火(1707年)、平安時代の貞観噴火(864年)、延暦噴火(800~802年頃)と、三度の噴火記録が残されています。

そう言った情報を元にハザードマップ(主に「宝永噴火と同等の噴火が起きたら」を想定しています)が作られています。

一方御嶽山は、文献記録上では平安時代と明治時代に噴火があったと書かれていますが、地質調査の結果で実際にはなかったと考えられています。その前の噴火は約5千年前に起きた小規模噴火まで遡ります。つまり有史上確認できる噴火はありません(御嶽山の火山活動が盛んだったのは、今から40~10万年前位の時代でした)。そんな御嶽山は、火山として死んだ山、死火山と言われていました。

それが見直される契機となったのは、昭和54(1979)年10月の火山噴火(この時も水蒸気爆発)でした。

昭和54年の噴火の際は、犠牲者は一人も出ませんでしたが、死火山と思われていた御嶽山噴火は大きな影響を与えました。

それまで火山は、活火山、休火山、死火山という3つの区分に定義されていましたが(参考までに富士山は休火山でした)、火山の噴火サイクルは、人間の寿命より遙かに長く、数百年噴火していなかったとしても、火山活動が終息したとは言えないと認識されたのです。

事実、過去5千年噴火していない御嶽山も、1万年前まで遡ってみると、マグマ噴火4回、水蒸気爆発10回程度の活動があったと考えられています。

そう言った結果から、休火山、死火山という区分や言い方は、火山の本質を見誤らせると廃止されることになり(ただし100万年以上噴火せず、火山活動が観測されていない火山は、便宜的に死火山と呼ばれています)、全ての火山を活火山と定義して、噴火頻度に応じてランク分けする方式に改められました。そして御嶽山や富士山はランクB(100年活動度または1万年活動度が高い活火山)に定義しなおされました。

死火山から活火山へとクラスチェンジした御嶽山は、平成3(1991)年と平成19(2007)年にも小規模な噴火を起こしましたが、いずれも人的被害はなく、極小さな噴火だったため、噴火予測のデータとしては不十分なものでした。この情報の少なさが、気象庁を悩ませ、大きな影響を与える結果となりました。

では今回の噴火に際し、気象庁は御嶽山の状況について、どのように考え判断したのかについて、簡単にまとめてみたいと思います。

あらかじめ申し上げておきたいと思いますが、私は気象庁の判断や御嶽山麓の自治体の判断や行動を、弁護も批判もする気はありません。

ここで言いたいのは、噴火予測というものがいかに困難で難しいものであるのかを、読んでくださった方に知っていただきたいと思うのです。

ですので、「噴火予知は難しいね」「やはり気象庁は判断を間違ったと思う」という判断は、皆様でお願いいたします。


平穏な状態が続いていた御嶽山に変化が生じたのは、今年9月10日のことです。この日、火山性地震(震度1以下で、人体ではほぼ揺れを感じません。また人体では全く関知できない低周波地震も、火山性地震に含みます)が前日までの5倍弱に登る52回を記録しました。

御嶽山で50回以上の火山性地震が観測されたのは、平成19年1月以来です。そしてこの時は火山性地震が日に100回以上多発し始めてから約3ヶ月後に、小規模な噴火(水蒸気爆発)に繋がりました。

気象庁は翌11日、御嶽山に関する臨時火山情報「火山の状況に関する解説情報」を出しました(ちなみにこの臨時情報は、私も1週間ぐらいあとに気がつきました。しかし危機感は全く持っていませんでした。まぁ、私の危機感など全く関係ない話ですが・汗)

さらに気象庁は、長野・岐阜両県の4市町村に、メールと電話で連絡がおこなわれました。
これは火山活動に活発化が認められるものの、噴火レベルは1(平常)で変更がない点を説明するためでもありました。

そしてこの日、御嶽山の火山性地震は85回を数えました。

2日に及ぶ火山性地震の増加を受け、12日、気象庁は噴火レベルの上昇と入山規制の検討に入りました。

しかしここでネックになったのは、蓄積された噴火データの少なさでした。

確かに御嶽山は、火山性地震が急増し不穏な気配になってきましたが、マグマの上昇は確認されず、山体膨張も見られません。この時点では噴火前兆であると断言出来なかったのです。

気象庁は、御嶽山の動向を観測している名古屋大学地震火山研究センターに意見を求めました。しかし同センターも、この時点のデータだけでは、噴火の確証は持てませんでした。

センターの山岡耕春教授(地震・火山学)は、平成19年時の噴火データを元に、「低周波地震が起きたら要注意、火山性微動が起きれば噴火でしょう」と返信しています。

気象庁内で対応が協議されていた頃、御嶽山は意外な反応をしていました。12日の火山性地震は10回に減少し、地震規模も小さくなっていました。

「火山性微動や地殻変動が無く、地震も減少傾向にあったため、(噴火レベルを)上げる判断に至らなかった」と、菅野智之(火山活動評価分析官)は回想しています。

これらの状況から、気象庁は御嶽山の監視体制を強化して様子見することにしました。

様子見というと問題を先送りしているよう感じるかもしれませんが、それは違います。気象庁は危機感を抱いていましたが、噴火になると決定的な判断を下せる材料が無く、現地の行政や経済活動に多大な影響を与えるので、安易な判断は出来無かったのです。

御嶽山の火山性地震は、13日は7回、14日は8回に減少しました。しかし15日、気象庁では再び噴火レベル上昇について検討する会議を行いました。

と言うのも、14日の火山性地震の内2回が、山岡教授が危険と指摘した低周波地震だったからです。

しかしここでもネックは、情報の少なさでした。

低周波地震という、今までよりハッキリとした噴火のシグナルは確認しました。しかし回数は2回に止まり、マグマの陥入も確認できず、すぐに噴火の危機が迫っているとまで言い切れなかったのです。

ギリギリまで協議がされたものの、噴火レベル上昇は見送られました。この事は皮肉な事態を引き起こします。

今回の協議内容も地方自治体に連絡されましたが、自治体側は、「レベル1のままだから」と、登山者への告知や注意など、特別な対応は取られなかったのです。

火山の麓にあるとはいえ、地方自治体の職員たちは、火山の専門家ではありません。彼らは噴火レベルの増減によってしか危機を判断できないのです。噴火レベルが変更されなかったので、現地では気象庁側が感じていた危機感を共有できなかったのです(前述の山岡教授は、「今回はレベル分けのマイナス面がでた」と指摘しています)

そして御嶽山は、15日に火山性地震が27回起きたのを最後に、地震は終息しました。

そのまま眠りにつくかに見えた御嶽山が「跳ね起きた」のは、12日後の27日午前11時41分のことでした。唐突に火山性微動が始まったのです。

火山性微動が始まって4分後、御嶽山山頂から3キロの所に設置されている傾斜計がは御嶽山山体が急速の膨張していくのを捉えました。

それを見た気象庁火山監視・情報センター(東京の大手町にあります)は驚愕し、直ちに噴火レベルを2(火口周辺規制)に上昇させる準備を始めましたが、その最中の11時52分、御嶽山は噴火しました。

危機的兆候が確認されてからわずか11分後、人間側が対応する暇もありませんでした。

同日、気象庁は御嶽山の噴火レベルを3(入山規制)に決定しました。

噴火規模は平成19年同様小規模なものでしたが、天気のよい土曜日の昼時という最悪のタイミングであったため、多くの犠牲者を出すことになってしまったのです。







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Last updated  2014.10.28 21:53:50
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