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2018.06.23
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カテゴリ:オカルト系
さて今日は前回のブログで予告しました通り、ブラジルの予言者と言われている人の話です。
​ちなみに元オカルト少年だった私は、このジュセリーノなる人物の話を、四半世紀ぐらい前に、某オカルト雑誌「月間ム〇(←伏字の意味なし)」で読んで知っていました。​
​今はその巧妙な「予言」の手口もよく知っています(最初に読んだときは、「すごい人もいるもんだ」と素直に感心しましたが)

初めに彼の予言方法と、公開手順を上げてみたいと思います。
​彼は夢の中で未来を見るそうです(いわゆる予知夢)。それを起きてから、夢の内容をタイプライターで文字起こしをして、公証役場に持ち込んで文書にシリアルナンバー、日付印、割印の認証をしてもらいます。一部は登記所に保管もしてもらっているようです。​
そしてコピーを取り、予知夢の内容を当事者や組織に、警告の手紙を送るというものです。
例えば受け取った側は、10年前の公証役場のサインの入った警告の手紙を受け取る。という感じになるわけです。
日本ではテレビなどでも取り上げられ、「的中率は90%以上」ともてはやされました。
​​彼を日本で有名にしたのは、2007年4月17日に起きた長崎市長銃撃事件​(長崎市長伊藤一長氏がJR長崎駅近くの歩道で、山口組系暴力団幹部の男に銃撃され、死亡した事件)の時に、「市長に警告の手紙を1997年に送っていたのに、助けられなかった」という話が取り上げられたからです。​​
​日本のテレビでは、その長崎市長の事件の追跡調査が行われ、サンパウロの登記所で、マイクロフィルムで保管されていた1997年の日付の入った予言が発見され、「予言は本当だった」大興奮の結果に終わりました(私もおぼろげな記憶しかありませんが、確かこのテレビは見ていた記憶があります)。​

​​↑テレビで放送された証拠写真。​​

​と、ここで終わっていれば、彼は本物の予言者ということで終わったことでしょう(彼もそれを望んでいたでしょうが)。​
​しかし、彼の日本でのブームは、この番組が後日、凋落のきっかけになります。​
理由は上の写真に答えがあります。
文書の上をみると、筆記体で読みづらいですが、「July 31 op 1997(1997年7月31日)」とあり、テレビでは「事件を1997年7月31日に予言していた!」となったのですが、写真をよくよく見てみると、画面中央にも数字があります。そちらは13/07/2007」と書いてあり、その下に彼の署名があります。
​確かテレビでも、この日付について疑問の声が上がっていたように記憶していますが、「マイクロフィルムにされた日付」と解説されていたように記憶しています(ほとんど忘れているので、間違っているかもしれません)。​
​しかし実際には異なります。ブラジル語(ブラジルポルトガル語)や、現地の登記所の仕組みを知っている方から、「それは違う。「下記にサインした者が文書の登記を申請する」という意味だ」と指摘が出たのです。​

​結論から言うと、1997年7月31日に予言したとされる文書は、実際には、長崎市長の事件から約3か月後の2007年7月13日に、1997年に公証役場でサインをもらった紙を登記所に持ち込んで登記されたものだったのです。​

え? でも公証役場の証明があるなら予言していたんでしょ? と思う方もいるでしょうが、ここに、ジュセリーノ氏の巧妙な詐術がありました。

まず公証役場のサインや日付の捺印は、文書をいつ作成したかを認証するものであって、内容は保証しません。原本は本人にそのまま返却されます。
確かに公証役場の認証は1997年のものでした。しかし文章の内容は役場の方で関知されないので、本当に予言が書かれていたか証明できないのです。
対する登記の方は、原本はコピーされて役場で保存されます。従って偽造などすればすぐに発覚してしまいます。
​​一般的な使い方は、契約上の約束事や、離婚などでの約束事(例えば慰謝料や養育費、子供の面会に関する約束)を交わして公証役場に持ち込み、それを登記所に行って保管してもらって、コピーを双方が持ち合うという感じです​(公証役場に持ち込んで、お互いコピーをもって終了というパターンも多いですが)​。​​
その偽造困難な登記された原本に、2007年7月13日に申請があったことが明記されているのです。
自分が間違いなく予言したと証明しようと小細工を弄したことが、逆に墓穴を掘ったと言えます。

彼の支持者は、登記された文書で使用されたタイプライターやインクは、まったく同じものであり、偽造されたわけではない擁護した人もいたようですが、彼の使うタイプライターは50年前の古い機種をずっと使い続けており、タイプとインクも変化はありません。
そして製造メーカーは、「一端タイプし終わった紙をセットしなおして、続きの文章を書くことが可能か?」という質問に、「もちろんできます」と即答しています。
​彼の予言文書の多くは、定型文(例えば、「予知夢で恐ろしい未来が見えた。その内容を記録して、自分の予知の証明のために保存する」といった感じの文章で)で始められることが多いようで、その後の部分に「予言内容」が詳細に書き込まれているケースが多いようです。​
後だしで書かれたものであるかを、直接証明するものではありませんが、同時に予言が本当に過去になされていたかも証明できないことになります。

さらに疑問が発覚後の彼は、悪事がばれた小悪党の行動そのままでした。
​​​​長崎市長の事件の際は、「10年前に事件を予見し、(その時に公証役場に持ち込んで登記して)警告を長崎市役所に送った」という感じに言っていたのに、上記の疑問をぶつけられると、「手紙が既に送られており、新聞にも載せられているから(予言していたことを)証明する必要はなく、内容を保存しているだけだ」と、代理人(こういう時は、本人は出てこない)を通じて発表して終わりです。​​​
そして日本の仕事は全部キャンセルしてこなくなりました(本の出版は続いているようですが)
​​彼も、世間がだんだん自分の予言の信ぴょう性をに、疑問視していると感じたようで(日本以外でも、母国ブラジルや、アメリカでも同様の事をやらかして、だんだん相手にされなくなっていきました)、予言を乱発するようになり、また警告文書を「受け取り証書付きの書留で送っている」と、配達証明の画像をネットにアップしたりしているそうです(しかも事件や災害などが起きてから、「前から警告していたと」いう後出しのもの。ちなみに彼が配達証明付きの書留で送っていることは事実ですが、相手が受け取った証拠は提示しているわけではありません)。​​
​しかし不思議なことに、手紙を受け取った事を表明する人や組織が一つもいません。たとえば2011年の東日本大震災の警告を、2008年にブラジルの日本大使館に送ったと彼は主張しましたが、大使館は「そのような文書は届いていない」と返答しています(余談ですが、通常日本のお役所は公務に関係のない文書は、1年保存したのち破棄します。企業の場合は1~3か月で破棄というところが多いですが、在外の大使館の場合は、4年間保存する決まりになっています。したがって彼が本当に2008年に文書をを送ったなら、まだ保管されていたはずです)​。​
本当に手紙を送っているのか確認されていません。

そして乱発された後出しではない予言の数々は、惨憺たる有様です。
軽く日本にかかわる部分の予言を書いてみましょうか。
・2008年7月日本の消費指数が急上昇し、景気が回復する。
 →ハズレ。でもこれは当たってほしかったなぁ(涙)
・2008年7~9月に、日本で7月16から9月15日の期間に気温が43~45度を記録し、熱中症や伝染病による死者・病人が大量発生し、国中が混乱する。
 →ハズレ。というか、上の予言と矛盾するんだが。
・2010年5月14日にM7.7東京直下型地震が発生し、1万人が死亡する
・2010年9月15日に東京と横浜でM8.4の大地震が発生し、7万人が死亡する。
 →該当する地震は発生せず。
・2015年までに富士山が噴火する
 →ハズレ。この年私は富士山の山頂まで登ってきたわい。

​そして先日、「6月21日に南海トラフが起きる(厳密に言えば、東海沖でと言っていたようです。彼がこれを予言したとされる2008年には、「南海トラフ」といういい方はあまり広まっていませんでしたから)」という予言が発掘されました。まぁ、それも当たらずに無事に通り過ぎたわけですが。

なんというか、相手にするのもばかばかしいですね。

​「鳥、外れた予言ばかり上げるな! 当たったやつも書けよ。不公平だろ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、すみません、彼の当たった予言を探してみたのですが、私には見つけられませんでした(せいぜい、「1月に大雪が降り、日本の空港で困難が生じる」とか、予言ともいえないようなお粗末なものしかありませんでした)。​

ネタとして楽しめる分には、非常に面白いと思いますが、世間様でこんな人物が、「的中率90%の予言者が6月21日に南海トラフが来ると予言」なんて騒がれたのは、つくづく、悩ましいなぁと思います。

私もいつ大地震が起きるかとか、大噴火が起きるかは知りたいと思いますが、残念ながらそれはかないません。
こんな怪しいものに縋るより、日ごろからの準備と心構え、そして少しでも正しい知識を身に着けることです。
それ以外に減災の道はありません。​
普段から備えるのみです。

それではまた。





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Last updated  2019.09.25 21:18:13
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