菅野智之を強行指名した日本ハムに「あっぱれ」を贈りたい!
■今回のドラフトで波乱が起きた。読売の一本釣りと伝えられていた東海大・菅野智之を日本ハムが強行指名し抽選で交渉権を獲得したのだ。読売の落胆ぶりといったら・・・。原辰徳監督の談話:「くじを引く状況にならない、と信じていました」■原監督の信じていたものは何だったか? 今年年初から早々に菅野1位指名を公言し、さらに親戚関係にあることも材料に十二分に他球団を牽制できたから準備は万端。他の11球団は腰が引けて指名しないだろうという思惑だったか。だとしたら自らドラフト破り(=事実上の逆指名)を認めたようにも聞こえる。万一、読売の単独指名で終わっていたら、事実上の「逆指名」が読売によって3年連続で行われることになっていた。そんなドラフト制度を根幹から揺さぶる最悪の事態を救ったのは日本ハム。悪行の限りを尽くす読売に対し、良識派・日本ハムが待ったをかけた構図にも見える。大沢親分じゃないけれど、日本ハムに「あっぱれ!」を贈りたい。■これまでの歴史を見ても、日本ハムの良識派ぶり、特にドラフト制度遵守の姿勢は一貫している。直近では5年前、読売を熱望し読売以外なら社会人(ホンダ)に進むと公言していた長野久義(当時、日本大)をあえて4巡目で強行指名し、交渉権を得たことがある(結局は破談したが)。長野だけではない、他にも例がある。例えば1977年のこと。読売入団を希望していた江川卓(当時、法政大)はドラフトでクラウンライターが交渉権を得たためこれを拒否、浪人生活を余儀なくされた。このことが社会問題化し(いわゆる「江川問題」)、ドラフト制度の是非を巡って、国会の場で論議される事態になった(参議院法務委員会、1978年2月)。この時、プロ野球関係者たちが参考人として呼ばれ、川上哲治や日本ハム球団社長の三原脩らが証言した。ドラフト制度撤廃派(いわば読売サイドの代弁者)として証言したのは川上だった。「くじ引きでその人の人生が変わっていくことには疑問を感じる」と、ドラフト制度の撤廃を訴えたのに対し、三原は川上発言を真っ向から否定した。「何の実績もない新人選手に1億とか2億という噂がささやかれていること自体、異常だ。ドラフトの是非を選手に聞けば(契約金が高い方がいいから)『ドラフトはないほうがいい』と言うに決まっている。監督も自分がお金を出すわけではないから、チームを強くするためにはドラフト制度は弊害と感じるかもしれない。しかし球界全体の発展のためには必要だ。ドラフト制度は十分に意義を果たしている」と、ドラフト制度の存続を主張した。また同年12月、金子鋭コミッショナーの「強い要望」が物議を醸した江川を巡る「空白の一日」事件。この時も読売に遠慮して口を噤んだ他球団を尻目に、協約遵守をコミッショナーに強く迫ったのは日本ハム・三原一人だけだった。■話を現在に戻す。日本ハムの強行指名に対し、「読売・東海大連合軍」はどういう手を使ってくるか? 読売にとっては「空白の1日」も「三角トレード」も「政治家利用」もすでに陳腐化した。次の新手に何か、興味は尽きない。まさかここで「新リーグ結成」なんて伝家の宝刀を抜くわけもないだろうが。 今日も1クリックお願いします