「血の法明戦」を演出した名脇役たち~(1)明治大・糸原健斗
■「血の法明戦」と呼ばれるほど、法政大‐明治大は伝統的に熾烈な戦いが続く。今季も同じ。決着がつくまでに4度の死闘を重ねた。その戦いの中で、ボクが注目した選手の一人は明治大・糸原健斗(3年、開星高)だった。■一言でいえば、「いやらしい選手」だ。大技小技、何でもこなす。そして相手チームにとって最も嫌なタイミングで安打を打つ選手である。例えば対法政大2回戦(5月26日)。2点差を追う6回裏、この回先頭の3番・菅野剛士(2年、東海大相模高)が中前安打で出塁した。次打者は4番・岡大海(4年、倉敷商高)だったが一飛で倒れ、明治のチャンスはしぼんだように見えた。しかし、そこで登場したのが糸原である。糸原がカウント2-1から4球目をフルスイングすると、打球はあっという間に右中間を抜ける三塁打となった。もちろん一塁走者の菅野は一気に生還し、1点差に迫った。そして糸原の一打が反撃の狼煙となって、その後に適時打が続き、明治はこの回4点を挙げて逆転、法政のエース・船本一樹(4年、桐蔭学園高)のノックアウトに成功した。さらに対法政大4回戦(5月28日)。4打席の内、3度は送りバントをきっちりと決めた。そして残る1打席は、1点差を追う6回裏に訪れた。敵失と四球で一死一・二塁のチャンスを迎えると、法政は先発・納富秀平(4年、九州国際大附高)を諦め、石田健大(3年、広島工高)をマウンドに送った。その石田にまず相対したのが糸原だった。そして糸原は、登板直後で制球が定まらない石田を捉え、同点の適時打を右前に放ち、逆転勝利の口火を切ったのだ。相手投手の代わり端を攻略するのは鉄則である。それをいとも簡単にやってのけたのだから凄い。ここぞという時に快打する糸原。相手チームにとってはイヤな、そしてまったく「間の悪い」選手である。【糸原、今季の成績】※順位は5月28日現在。打率.292(リーグ12位)、打点9(同4位)、四死球10(同2位)。■申し訳ないけれど、ボクは糸原のことをあまり知らなかった。調べてみると、海星高ではなく島根の開星高出身だから、あの「腹切り」発言で有名になった野々村直通監督の教え子である。「腹切り」発言が飛出しのは2010年センバツ。ならば当時3年生だった糸原は、この時試合に出場していた可能性がある(詳細を調べきれなかった)。ただ同年夏の甲子園に出場していたのは間違いない。この時は1回戦で仙台育英高に逆転負けを喫した。開星のエースは白根尚貴(現・ホークス)。それまでリードしていたものの、9回表二死で打者を中飛に打ち取って勝利を決めたと思ったら、なぜかセンターが落球。それがきっかけで開星が敗れ去った、あの試合である。■スポーツナビによると、高校時代は「安打製造機」+「一発長打も秘める」+「三振の極端に少ない打者」であり、野々村監督をして「これまで30年以上高校野球の指導をして5本の指に入る、天性の打撃センスをもつ打者」と言わしめた選手である。そして大学に入り、さらに「イヤらしさ」にも磨きをかけた。糸原健斗は、まさに明治好みの選手なのだ。(写真)糸原健斗、この直後に送りバントを決める~対法政大4回戦~ 今日も1クリックお願いします