高尾山頂を目指す人たち~NHK『72hours』より
久しぶりにNHK『72hours』より。■番組のカメラは、高尾山に登る人々を追った。休日に都会の喧騒を離れ高尾山に登ることで、自分自身に向き合おうとする人は多い。職場の経営が芳しくなく、山頂で退職を決意した男性看護師は、近く東京を去ることも決めたという。頭髪や髭が伸び放題の40歳代男性は現在失業中だった。突然勤務先の企業が倒産したが、そのことをまだ遠くに住む両親に知らせていないことが悩みの種だ。近く里帰りして失業したことを伝える、と言った後に、少し間をおいて「かもしれない!?」とつけ加えた。どうやら、まだ決意は固まっていない様子だ。介護施設で働く介護士は、高齢の利用者とその家族を伴って登頂した。利用者は下肢が不自由だが、介護士が車いすを押して高尾山を登りきった。自然の中で、家族に向き合っていただく。そんな意図があるのかな? と、ボクは勝手に想像した。 ■そしてもう一人、高尾山頂で自分自身に向き合おうとする人がいた。横縞の薄手のセーターとジーパンのいでたちで、ベンチに腰掛けて高尾山頂から富士山を眺めている。一見フツーのサラリーマン風のおじさんだが、実は違った。リュックにかけたカードには、こんな文字が見えた。「私は人工透析者です。たおれた時はよろしくお願いします」。「(高尾山に登った理由は)やっぱり登ってみなきゃと思って、挑戦してみた(笑) 人工透析やってるから、病気だからさ」。話を聞くと、その男性は66歳。体に不安があるため登るのをためらっていたが、今日は一念発起して高尾山にやってきたという。「この心臓破りの階段を登れるかな?と思ったら、登れたもんね。『やったー!』って。素晴らしい。命が洗われるみたい。こんな自分でも達成できた、よかった来て、やっぱ(^^)/」。■この人は働き盛りの40歳代の頃、突然、病に襲われた。週3回の透析が欠かせず、思うように次の就職ができなかった。就職活動では100社ぐらいまわったが、倒れられたら困るという理由で断られ続けた。失業期間がほぼ20年にも及ぶ。「働きたいんだけど働けない。だから働いている人を見ると羨ましいよね。何も知らずに私を見ると普通の人に見えるでしょうけどね、ハハハ。正直言ってちょっとつらいですよ。でも、みんな頑張っているからね、俺も頑張る! 今日、高尾山に登ることでができて、何か『よし!』って勇気をもらいましたよ」といって、へへへ・・・と恥ずかしそうに笑った。