【甲子園1973年夏】作新学院・江川卓の「最高の一球」
■この夏の甲子園決勝、作新学院ー北海の試合。結局作新が勝利しましたが、2回裏、作新の好守備が印象的でした。1点を先制され、なおも二死一・二塁のピンチに打者の放った強烈な打球は三遊間へ。北海がさらに1点追加か、そう思った瞬間に作新・ショートの山本拳輝が横っ飛びで打球を掴み、素早く送球して打者走者を一塁で刺しました。このプレーは凄かった! 「たられば」は禁物ですが、もしこの打球が抜けていれば「流れ」はどちらに行っていたか分からない、それぼどに試合を左右するプレーと思いました。■さて、昨年NHKで放送された『高校野球100年のものがたり』、作新のある【栃木編】では、1973年(昭和48年)夏の甲子園2回戦・作新ー銚子商が取り上げられていました。作新投手はもちろん怪物江川卓。0-0で迎えた延長12回裏、江川は一死満塁のピンチを作ると、後続の打者・長谷川にフルカウントから押し出し四球を与えてサヨナラ負けしました。しかし4つ目のボールになった最後の一球が、チームメイトの信頼を一身に受けつつ「力いっぱい投げた直球」だったことから、これが「最高の一球」だったと、後日、江川自らが語っていました。ま、江川が主人公として語られることの多いこの試合ですが、過去練習試合を含めて江川に4連敗中だった銚子商の斉藤一之監督およびナインの「打倒江川!」の気合は凄まじかった。「バットをコンパクトに振る」「高めの球に手を出さない」を意思統一し、そして「江川は、晴れの日はバテやすい。曇りの日は絶好調でノーヒットノーランが生まれやすい。雨の日は苦手」というデータを用意し、この試合途中から雨が降り出すと、銚子商は勝利を確信したそうで・・・。さらに最後の場面、打者長谷川がフルカウントになると、斉藤監督が出したサインはスクイズだったとか(ふつう満塁でスクイズは考えられませんが)。オーソドックスな作戦と奇想天外な策を弄して勝利にこだわった、銚子商の執念の勝利だったと云えるかもしません。<写真>作新のショート・山本拳輝の好プレー。(NHKより。以下も同じ)<写真>押し出し四球でサヨナラ負け。でも江川にとって「最高の一球」だった。打者は銚子商・長谷川。<写真>銚子商・斉藤一之監督の執念「打倒、江川、打倒・作新」が実った勝利。<写真>銚子商スタメンに並ぶ懐かしい名前。土屋(のちに中日)、そして岩井(現・国際武道大監督)・・・なお、篠塚(のちに巨人)が甲子園に出場するのは翌74年センバツから。