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~ドイツ帰省時、ドラちゃん第二の故郷にて、 初夏、花火がはじまるのを待つ~
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ドイツ語でジャズを歌う歌手を聞きに、
コンサートホールまで二人で歩いた。 そもそものはじまりから、 ドイツ語の響きが嫌いだった。 演説と議論と喧嘩にしか、ドイツ語は向かないと思っていた。 音楽とドイツ語は、思いつく限り最低の組み合わせだと信じていた。 彼の歌を知るまでは。 そういうわけで、 クラシック以外のコンサートに行くのは、 今夜がドイツで初めてだ。 入り口を入ってすぐの長蛇の列は、 もちろんビール購入待ちの列だ。 気温が20度以下でビールを飲みたいと感じたことがいまだかつてない私には、 ドイツ人のこのビールに対する激しい欲求は、 いつまでも世界の不思議のひとつだ。 振り返ってみればドラちゃんは既に、 列の中の一人となっている。 すばやい。 ぐるりと建物内を一巡してみる。 無口なその心の中に熱い反バイエルン魂を燃やし続けている北ドイツのわりに、 売り子によってさばかれているのはブレッツェルだ。 ミュンヘンを愛してやまない私は、 バイエルン文化への敬意をこめて、 やたらと高いそれをひとつ、お買い上げ。 「ビールいかがですか」でもなく 「この線からさがってきちんと並べ」でもなく 歌手のポスターが声高に売られているでもなく 何か音楽が流れているでもなく、 日本人の私には例によって異様に静かに感じられる、 ドイツのイベント会場。 やがて歌手が現れ歌い始める。 最初に彼のCDを贈ってくれたのはドラちゃんだった。 ミュンヘンでの通学の朝晩にくりかえし聞いた。 大好きな一曲が始まる。 ああここのところのこのドイツ語の響きが好きだなあと思う。 今だってやっぱり、 明日にでも日本へ帰れるものなら帰りたいと、 毎日毎日泣きたい気持ちをのみくだす。 それでも。 明日の飛行機で今すぐ帰れるわけではないのだったら、 こういう瞬間を紡いでゆくしかないのだろう。 ドイツの何かについて、 ああ好きだなあと思える瞬間を、 あつめてつなげてまたあつめて、 そうしていつかどこかへ行き着ける日まで。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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