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近代日本文学史メジャーのマイナー

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2009.07.06
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カテゴリ:大正期・白樺派

  『多情仏心』里見とん(新潮文庫)

 (「とん」が、出ません。悲しいけれど、平仮名にします。)

 以前からぼちぼちとそうしていたのですが、このブログを書き出したせいもあって、近代日本文学史中のマイナーっぽい作家の文庫本を漁っています。

 自然主義や白樺派、日本浪漫派やプロレタリア文学、そんな辺りの地味ーーな作者の本を追っかけているわけです。(ただし文庫本に限る。)
 そうすると結構、あるんですね。

 まず岩波文庫。以前にも少し触れましたが、あいかわらず、よーこれだけ「売れ筋」を外した品揃えをしているなと感心します。

 次に、新潮文庫が数年前に新潮文庫の復刊シリーズを出しまして、それが古本屋市場に出ています。また、去年あたり流行った小林多喜二の影響でか、プロレタリア作家の文庫本が新刊で出ています。

 さらに、相変わらず腰が抜けるほど高価な講談社文芸文庫は、タカビーな顔をして、新刊書店の棚にツンと澄ましています。
 というわけで結構あるんですね。

 おかげで、ネット、古本屋、新刊書店、はては近隣の大学生協書籍部でも(大学生協書籍部は、なんか、もうひとつ品揃えが良くないように思いました。大きな大学ですがねぇ。今の大学なんてこんなものなんでしょうかね。でもジュン○堂レベルの文学系文庫本は一応ありましたよ。)一冊買いまして、で、現在、この先半年間に読む量ぐらいの文庫本がそろってしまいました。
 せいぜい頑張って読まねばと、うーん、ややプレッシャー。

 さて、前掲本、これまた結構長い本なんですね。650ページほどもあります。
 この作者、ご存じですか、読んだことありますか。僕は今回初めて読みました。

 この作者は、白樺派「有島三兄弟」のひとりですね。
 日本文学史的キーワードを幾つか挙げますと

  「小説の小さん」「まごころ哲学」

となります。ご存じでしたか。
 前者のキーワードは落語の「名人芸」のように、読ませるお話を作ると言うことでしょうか。後者は、いかにも白樺派らしい、「まごころ」があれば何をしてもいいのだというポリシーの元、早い話が、何人もの女性と恋をするという、まー、おきらく手前勝手な話です。

 そんなわけで、本作についても、基本的な「コンセプト」は金持ちのお坊ちゃんの気楽な話です。ただ、そんな話を650ページも続けるに当たっては、これはなかなか感心するくらい、次から次へどんどんいろんなストーリーやエピソードを、これでもかこれでもかと惜しげもなく畳みかけるように作品に込めています。
 これは感心しました。
 そういう意味でいいますと、きわめて「贅沢な」つくりの小説と言い切っていいと思います。

 いやー、あほらしい話ですが、なかなか侮れない話でした。
 お気楽な現代の光源氏か世之介の話、650ページ、どうですか、読んでみませんか?

 じゃ、そゆことで。

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Last updated  2009.07.06 06:27:49
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