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2009.07.09
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  何回かに分けて、夏目漱石の「前期三部作」を書いてみたいと思います。
 漱石の「前期三部作」といえば、私のフェイヴァレットであります。何度目かの再読になりますが、漱石は、何歳で読んでも面白い、と半ば信じつつ、でも、そんなことって本当にあるのだろうかという疑い心も少々あるようで、とにかく、始めます。

 まずは、

  『三四郎』夏目漱石(新潮文庫)

からですが、そもそもなぜ漱石の「前期三部作」を読もうとなんて思ったのかというと、実は、そう思わせてくれた本が、二冊も、あったんですねー。

 まず、この本。

  『闊歩する漱石』丸谷才一(講談社)

 ここんところよく図書館に行くもので、自分で本を買うことがなくっていいような、少し寂しいような、ちょっと微妙な感情です。
 私が小さい時に住んでいたところは公共の図書館から少し離れていたので、図書館で本を借りて読むという習慣づけが、私にできていなかったんですね。

 現在、図書館から自転車で五分の所に住んでいますが、上記に「よく図書館に行く」と書いてありますが、実は図書館の本を読むことについては、いまだにほんの少し「違和感」というか、なにか、一枚、膜がありますね。

 さて、閑話休題、上記本についてです。

 丸谷才一は好きな作家で、以前にもブログでちょっと触れましたが、小説の新刊については追っかけて買っています。(最近は御高齢故か、少し新刊を見ないように思うのですが。)

 エッセイ・評論のたぐいは、まぁ、文庫になってから買うかな。(じゃないのもありますが。)
 エッセイもとてもおもしろいのですが、最近は、ちょっと難しめ。きっと僕の方が日々馬鹿になっているせいだろうけれど、博引旁証・ディレッタンティズムが少々煩わしく、ぼんやりと読む、ということがちょっとできにくくなっているように感じています。
 何かの拍子に、途中で眠くなったりすることもあります。

 この本には漱石の三つの小説『坊っちゃん』『三四郎』『猫』のことが書いてあるのですが、『三四郎』の部分が一番おもしろかったように思います。

 丸谷氏曰く、この小説はもっとガラの大きい社会小説になるはずだったと。
 冒頭、三四郎は上京途上で二人の人物に出会うが(若い女と広田先生)、その時広田先生が話していた富士山の話(例の、日本の国は滅びるねというやつです)が、上京後発展していないと、作者は述べます。
 そこにもう一つのあり得たであろうリアルタイムの社会小説の片鱗を見るわけです。

 残念ながら、登場人物並びに当時の日本の社会風俗描写の限界から、その可能性は失われ、恋愛小説的側面が(これが最初の若い女の象徴するひとつのもの)残ったものの、中盤あたりから登場人物の動きがさらに取れなくなり(作者は登場人物たちの社会的階層にその原因をおいてます)、漱石作品の中では構成に比較的破綻のない展開でありながら、ややスケールを小さくして終わってしまった、と。

 この分析はおもしろかったですね。うーん、そうだったのか、と思わず膝を叩いてしまいます。よし、久しぶりに『三四郎』を読み直してみよう、と。
 そう思わせるに充分でした。

 そんなところに、さらに興味深い『三四郎』話を、この後、私は読んでしまうのですね。

 以下、次回。

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Last updated  2009.07.09 06:19:36
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