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近代日本文学史メジャーのマイナー

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2009.07.20
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  『インストール』綿矢りさ(河出文庫)

 もうこの小説の発表も、10年ほども前になるんですよねー。はやいもんですねー。
 その後この作者は、別の作品で芥川賞取りはりましたもんねー。
 その本の方は僕は読んでませんがー。

 本ブログの基本的コンセプトは(あくまで「基本的」であります)、

 「作品選定の基準は、高校の『近代日本文学史』の教科書に準拠する。」
 (『近代日本文学史』の教科書は、ブックオフで105円で買ってくる。)

ってのがありましてー(私がそう作った)、うーん、ちょっと困ったなーと思いながら今回は書いております。(どうでもええことようなこと書いてすみません。)

 さて、『インストール』です。
 うーん、なんて言うか、どうってことないお話なんですよねー。
 別に非難するような箇所といってありはしませんが、かといって、どこが良いのかもよく分からない。実際、どこがどう、良いんでしょうか。

 ところで、この文庫の解説文を高橋源一郎が書いているんですね。
 高橋源一郎氏といえば、新しい文学に極めて好意的な、なかなかの理論派の小説家です。
 (僕もとても好きですが、その作品には少々当たりはずれがあるような気がします。)
 その彼が、この作品を絶賛しているんですね。

 まー解説文ですから、半分「仲人口」で読まねばならないとは思っております。
 でも、私には、そんなに言うほど本当にこの本はすごいものなのかと、なんか、よくわかんなくなってくるんですね、文学の評価というものが。

 ちょっと別の例を挙げてみますね。
 例えば村上春樹は、『華麗なるギャツビー』をいろんな文章で、ほとんど絶賛していますね。実は、やはりあれについても、僕はよくわからないんですね。
 主人公のギャツビーに、僕はほとんど魅力を感じないんですが、そんなのって「えーっ、サイテー」って事なんでしょうか。
 「このヒト、文学のこと何にも分かってないヒトじゃないのー」って事なんでしょうかね。

 そう言えば少し前に、ある新聞紙面で、川上弘美が吉行淳之介のある短編集について偏愛告白をしていたのを思い出しました。
 吉行淳之介という作家は、生き方が作品より高評価を得ている感じがして、私も何作か読みましたが、残念ながらどうも「偏愛告白」をされるようなお方とは、少し読めませんでした。
 (きっとこれも私の不徳の致す所だとは思っておりますが。)

 えーしかし、こうして三つ並べてみると、分からないと言いながら、実はちょっとは分かってくるんですね。

 要するに「文章力」なんですね。
 文章の美しさというか、素晴らしさというか、「言葉の力」ですよね。
 これに小説家達は反応しているんですね。

 これは、まー、考えれば当たり前といえば当たり前で、例えば音楽家は流れ来る「音の力」に感動し、画家はキャンバスの「色の力」にやはり感動しますよね。

 かつて三島由紀夫は、死ぬ間際まで書いていた『小説とは何か』という随筆で、動物園の檻の中の昼寝をするアザラシの姿に、一つの小説の典型を見ていました。

 小説はやはり「思想」ではないんですね。存在そのものが「思想」を表すことはあっても、少なくとも、そこに盛られた「思想」が小説なのではない。

 僕が、その高評価についてよく分からないながらも、読んでいて、結局すとんと腑に落ちるのはこの辺なんですね。
 と、思うと、この『インストール』ですが、なんというか、上品な明晰さを感じさせる文章ではありましたですね、確かに。

 というわけで、今回はこんなところで。はい。

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Last updated  2009.07.20 06:23:51
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