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2009.07.27
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カテゴリ:大正期・白樺派

  『出家とその弟子』倉田百三(岩波文庫)

 えー、今、私の手元に、上記の文庫本が二冊あります。同じ本です。……うーむ。

 はは、はははは。
 でも、こういう事ってよくあることですよねー。
 読書好きのお方なら、必ずや、そんな体験、私にもあるあると、おっしゃってくださると思いますがー、そんなことってないですか?

 私の場合、「本」はまだましな方です。同じ本を買ってしまうケースが少なからずあるとしても、買った本の総量に対するパーセンテージで考えれば、(きっと)少ないです。(かな。)

 同種の誤謬で、最近、私にとって看過できなくなりつつあるのが、CDであります。
 これも、まー、安くなりましたからねー、昔のレコードに比べますと。

 CD一枚が安くなったことは、しかし、あまりよくない影響を生み出しました。
 一枚のCDを、真剣に聴かなくなっちゃったことですね。(だから同じCDを二枚も買ったりしてしまうんですね。)
 昔は、レコードを一枚買ったら、一ヶ月くらい、日がな一日、そればっかり聴いていましたもんねー。しまいの方は、しゃりしゃりノイズが鳴っていましたよ。
 うーん、古き良き時代ですよねー。もう、戻ってきませんねー。

 えー、話題を、少しだけ元に戻します(放っておけば、戻りませんから)。
 『出家とその弟子』が手元に二冊あるということです。

 しかし、この本のケースは、わたくし、思いますに、「微罪」だな、と。

 「なにが微罪やねん!」と、お怒りの方もいらっしゃろうかとは思いますが、この本の場合は、本棚を探して、無いことを確認して新たに買ったのに、後で思わぬ場所から以前買った本が出てきてしまったというケースですから、罪は軽いですよね。
 ほとんど「正当防衛」と紙一重であります。(なんのこっちゃ。)

 というわけで、倉田百三です。
 私が最初にこの文庫本を買ったのは、おそらく高校時代だったと思います。(そして、読んでいなかったんですね。)
 
 さっきから僕は、この本を誰から(何から)教わったのかと、思い出しているんですが、同時期に買ったり探したりしていた記憶のある、一連の書籍が思い出されます。こんなのです。

『三太郎の日記』阿部次郎
『人生論ノート』三木清
『愛と認識との出発』倉田百三


 えー、これは、よーするに、「旧制高校的教養主義」の本ですね。
 旧制高校世代ではない私が誰に教わったのか。
 つらつら思い返してみるに、……ひょっとしたら、北杜夫?

  北杜夫『どくとるマンボウ青春期』

ですかね。うーん、当たりのような気がしますねー。

 「最後の旧制高校生」のような北杜夫氏の青春に、一時期憧れましたものねー。
 同様の感情をお持ちになった方もきっと多くいらっしゃると思います。

 えー、というわけで、同じ本が二冊ある謎が解けたところで(どこに謎が解けたんやー)、この本の読書報告です。

 上記にも触れましたが、私が高校3年生くらいの時に、きっと初めてこの本を知ったんだと思い出します。だからその前後か、遅くとも大学時代には、この文庫本も買ったと思います。しかし、ずっと僕は読んできませんでした。
 二冊目の本は、ここ一年ほどの間に(おそらくブックオフで)買ったものです。

 この度読んでみて、改めて、
 「やー、いい本だなー。」
と、思いましたね。難しいところの全然ない、とても遠くまで見通しの効く、本当に良い本だなーと思いました。

 そして、なぜ私は今までこの本を読んでこなかったのだろうかと考え、さらに、もしもっと若い時にこの本を読んでいたら(まさに高校時代に)、どうであったろうと思いました。

 なぜなら、この本には、恋愛と性欲について、極めて繊細に、誠実に触れられてあるからです。

 このテーマは、さすがに現在の「人生の黄昏時」に読むと、少し「他人事」になってしまいます。
 でももしも、せめて僕が二十歳の時に読んでいたら、きっと別の感じ方をしただろうなと考えると、何というか、少し残念なような、そうでもないような、そんな少し切ない感じがします。

 もちろん本書は、優れた古典的作品として、定まった評価を持つ本ですから、今更私がびっくりしたように褒めたところで、どうということもないんですが、とても「爽やかな」、まさに「良書」という言葉に相応しい本でありました。

 いやー、読書って、本当におもしろいですねー。

 というわけで今回の読書報告、以上です。


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Last updated  2009.07.27 06:17:22
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