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2009.08.14
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カテゴリ:昭和期・後半男性

  『希望の国のエクソダス』村上龍(文春文庫)

 先日職場の上司が、酒の席とはいえいつになく真面目に、

 「仕事や職場において自己実現が図れなければ、それはしんどいものになるから、そうならないように様々な職場環境を整えたい」

ということを言いはったんで、みんな「へー」と驚いて、そして

 「実際はなかなかそうもイカンよねー」と、こそこそと囁き合ったのでありました。

 まぁ基本的には、なかなかそうは行かないものでありましょうなぁ。

 この間僕が読んでいた本にも、仕事で「自分探し」をしていると、いつまでも最初の一歩が踏み込めないという内容があったように思います。

 しかしこういった「自分探し」とか「自己実現」とかいう考え方は、一体どの辺から来たんだろうなと思っていたんですが、やはり今の流行なんでしょうかねー。

 あるいは、「お国」のキャンペーン?

 高校生のうちからいろいろと仕事について理解して、体験して、あれこれと考えて、そして、フリーターにならずニートにならず、ちゃんとした仕事に就きましょう、それから、「君、君、二十歳になったら国民年金の掛け金は、もちろんしっかり払うように」というやつですかね。

 数年前に少し話題になりましたこの本、

  『13歳のハローワーク』村上龍

なんかの影響もあるように思うんですが、この本の基本的なコンセプト、「興味あることを仕事にする」というのは、今改めて考えてみると、とても素晴らしくはありますが、ちょっと「ムリっぽい」主旨じゃあないでしょうか。

 何が「ムリっぽい」かと言うと、そもそも「仕事を通じて自己実現を図る」ということがですね。そんなことないでしょうかね。

 えー、細かな内容はもう忘れたんですが、そんな一連の本の中で、村上龍は確かこんな風に言っていたと思います。

 まず、仕事に就かない者はいないと説き始めて、つぎにやはりその仕事に充実感が覚えられなければそれはとても厳しいと説きます。まー、このへんまでは、他の人なんかもけっこう言っていることでしょう。

 でも村上龍がもう一歩突っ込むのは、実はここからです。

 彼は、仕事に充実感を覚えることができなくても、それ以外の趣味などで充実させるからいいという、当然考えられそうな反対意見に対して、自分はかつて充実した仕事を持つことなしに、本当に充実した趣味を持っている者を見たことがない、と喝破するんですねー。

 ここが、「ミソ」なんですねー。ここのツッコミかたは、いかにも村上龍らしい、強引というか、力業というか、メチャクチャというか、あの村上龍の外見そのままの押しの強い・アクの強い迫力であります。

 こう居直るように言い切られてしまうと、その迫力に負けてつい説得されてしまいそうですねー。確かに、めっちゃ説得力ありそうに感じてしまいますよねー。
 こういう弁論のテクニックは、ぜひともよく覚えておきたいものです。今後の私の人生にとっても、大いに有効そうですねー。(ほんまかなー。)

 で、とにかく、僕も一時はそんな風に思っていたわけです。

 でも、落ち着いて考えれば、うーむ、それはまー、正論かも知れないけれど、そんなことが叶うのは限られた人達、おそらく「才能」と呼ばれるものを持って生まれたあんた(村上龍のことだ)みたいな人だけでねー、大概の人はそーはいきませんて。

 実は今、私は少々ペシミズムに陥っており、仕事・勤労に対して前向きな姿勢が取れないでいる、と、まー、こんなわけですかね。

 うーん、困ったものです。
 以下、次回。


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Last updated  2009.08.14 07:16:47
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