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2009.08.16
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カテゴリ:昭和期・後半男性

  『希望の国のエクソダス』村上龍(文春文庫)

 本作の読書報告の三回目であります。
 やっと上記の小説にたどり着きました。(って、お前が勝手にあっちこっち行っているだけだろー。……すみません。)

 さて、この本の後書きとか奥付とかを見ると、この本は20世紀末に書かれているんですね。つまり、あの、2001.9.11アメリカ同時多発テロの前です。

 「アメリカ同時多発テロ以前の世界」
 うーん、なんかすっごーーーーーーい、隔世の感がありますねー。
 100年くらい昔のような気がしませんか。

 今でも覚えているんですが、後、数分で21世紀になるという、20世紀最後の夜の大晦日、僕はいつになくセンチメンタルになりまして、子供達に「21世紀はお前達の世界である。世界はきっと、人類の英知により、平和な時代に入っていくだろう」などと、当時の、破裂は時間の問題であった世界情勢を、何にも知らないままに語っていました。

 で、21世紀になりました。
 ええこと、なーーーーんにもあらしません。
 世界中、さっぱし、沈みっぱなしです。

 ……えーっと、やや、感情のトーンを落とします。

 しかし実際、あれから本当に世界は、大激震ですものねー。
 あの事件以来、世界は全く別のものになってしまいましたねー。

 で、さて、この小説の舞台が21世紀初頭なんですね。
 つまり流行りの「近未来小説」というわけです。

 こうして読んでみると、近未来小説というのはなかなかむずかしいものですね。
 だって、数年経てば現実が小説上の時代を通り越してしまい、書かれた未来予測について、嫌でも断罪されてしまうというのが、近未来小説ですよね。そんなのを書くというのは、本当はかなり度胸がいるんじゃないでしょうかね。
 あるいは、書く時はそんな先のことなんて、何も考えないのかも知れませんね。
 (しかし、それも変ですね。)

 この作品の未来予想について、もちろんこのテロの予測まではできていませんが(ということは、今となっては、ほとんど何も予測できていないと言うことかも知れませんが、まー、それは結果論として)、にもかかわらず、僕はわりとよくできていると思いました。

 でも考えてみれば、僕が村上龍の長編小説を読むのは全く久しぶりで、作家の生のプロセスを辿っての感想ではまるでありません。

 かつて小林秀雄が、一人の作家の全集を読むことを大いに薦めておりましたが、確かに一人の作家を追っかけて、あるいは全ての作品を虱潰しに読んでいくと、個々の作品の出来不出来はあまり気にならなくなるようですね。

 しかし何となく読んでいて、とても懐かしいものを感じたのは、これは何でしょうかね。
 むかーーし、昔の『限りなく透明に近いブルー』とか『海の向こうで戦争が始まる』とか『コインロッカー・ベイビーズ』なんかを直ちに、思い出しましたものね。

 で、その延長上に、あー、この作家はこんなのだったっけと、思ってしまいました。
 どう「こんなのだったっけ」かというと、後半、失速気味になっちゃうんですね。

 真ん中やや後ろよりの、「国会中継」という山が終わった後、なんと言うんでしょうか、急に「つるつる」の話になってしまったという印象であります。

 そんな感想でした。でも、よかったです。失礼ながら、才能、あります。はい。
 今回はこんな所です。少々ペシミズムです。では。


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Last updated  2009.08.16 07:46:48
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