【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

近代日本文学史メジャーのマイナー

近代日本文学史メジャーのマイナー

Calendar

Archives

Recent Posts

Freepage List

Category

Profile

analog純文

analog純文

全て | カテゴリ未分類 | 明治期・反自然漱石 | 大正期・白樺派 | 明治期・写実主義 | 昭和期・歴史小説 | 平成期・平成期作家 | 昭和期・後半男性 | 昭和期・一次戦後派 | 昭和期・三十年男性 | 昭和期・プロ文学 | 大正期・私小説 | 明治期・耽美主義 | 明治期・明治末期 | 昭和期・内向の世代 | 昭和期・昭和十年代 | 明治期・浪漫主義 | 昭和期・第三の新人 | 大正期・大正期全般 | 昭和期・新感覚派 | 昭和~・評論家 | 昭和期・新戯作派 | 昭和期・二次戦後派 | 昭和期・三十年女性 | 昭和期・後半女性 | 昭和期・中間小説 | 昭和期・新興芸術派 | 昭和期・新心理主義 | 明治期・自然主義 | 昭和期・転向文学 | 昭和期・他の芸術派 | 明治~・詩歌俳人 | 明治期・反自然鴎外 | 明治~・劇作家 | 大正期・新現実主義 | 明治期・開化過渡期 | 令和期・令和期作家
2009.09.10
XML

  『少年H・上下』妹尾河童(新潮文庫)

 この小説を取り上げるについても(以前にも同種の迷いがありましたように)、私事ながら、少し迷いました。
 この筆者は小説家ではありませんよね。
 小説らしいものも、現在のところこの一作しか書いていらっしゃらないようですし、ちょっと迷うところでありました。

 もう、10年以上前、だいぶ前になりますが、ベストセラーになった本です。
 今回読んでみて、僕は、この本がベストセラーになった事自体に、とても「感心・感動」しました。
 迷いつつも本作を取り上げたのは、その辺のあたりを、少し書いてみたいと思ったからであります。

 私の読んだ新潮文庫は、活字が大きくて、沢山の漢字にふりがなが付けてあって、とても読みやすかったです。
 本文に入る前に、「小さい人にも読んで貰いたくてこうした」と書かれてありましたが、読み終わってみて、その配慮にはとても好感を覚えました。

 ところが、この本は上下巻で、合わせて970ページほどあります。
 これはどうなんでしょうかね。
 長すぎはしませんかね、あるいはそんなことないのでしょうか、僕にはよくわかりません。
 ただ、ストーリーとして有機的・構造的に動き出すのは、明らかに後半になってからであります。

 あたかも『源氏物語』が、ほぼ真ん中、「若菜」の巻以降になって初めて構造的に進んでいくようになり、前半はいわば、光源氏のラブ・アフェア・エピソードの積み重ねのようになっているのと同様であります。

 では本書において、なぜ後半からストーリーが動き出すのかというと、それも明かですね。
 「戦争」が始まるからであります。あるいはそのもう少し手前の時期、日本国中がとてもきな臭い匂いを発しはじめるからであります。

 およそ国家というものが、一人の人間の生殺与奪権を持ち始めるのは、日本の場合は明治以降であるということを、私は以前司馬遼太郎の文章で読みました。
 もちろんこれは、江戸時代までが「よい」社会であったなどという単純なものではなくて、世界史規模の歴史の「発達」の一段階と捉えるべきでありましょう。

 (これは少し言葉を選びつつ書くのですが、「お国」などという観念的なもののために死ぬことを要求する社会は、歴史的に見ると極めて近年の「新参者」であります。)

 しかしそのような状況が、本書において、小説として、具体的・日常的にかつ丁寧に描かれているのを読むと、そこに「国家」とか「国体」とかいうものの、いかんともしがたい胡散臭い構造があぶり出されていることを感じずにはいられません。

 司馬氏や先人の言を待つまでもなく、もとより国家とは、厳然として「利己的」な存在であります。

 そしてそういったことを読者に自然に感じさせる本書は、実はなかなかによくできた本だと言うことができます。

 もうすでに私の子供は成人してしまいましたので、現在どのような形になっているのかよく知らないのですが、私が子供の宿題を見ていた頃に、子供と一緒に読んだ小学校の国語の教科書には、かなり多くの反戦教材があったように覚えています。
 そしてそのことに、私はわりと感心したのでありました。

 さて、冒頭にも述べましたが、この本はベストセラーになりました。
 そのことを考えますと、なかなか世間も棄てたものではないと思うのですが、奥付を見ると、平成9年刊行とあります。

 その時からすでに12年。
 混迷の度を年々濃くする世界情勢の中で、今でも日本の世相の中に、この「反権力性」ははたして残っているのでありましょうか。
 少々戸惑い、そして不安とするところであります。


 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓

 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末

/font>

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.09.10 06:25:42
コメント(0) | コメントを書く
[平成期・平成期作家] カテゴリの最新記事


PR

Favorite Blog

イリヤ・ポボロツキ… New! シマクマ君さん

やっぱり読書 おい… ばあチャルさん

Comments

analog純文@ Re[1]:父親という苦悩(06/04)  七詩さん、コメントありがとうございま…
七詩@ Re:父親という苦悩(06/04) 親子二代の小説家父子というのは思いつき…
analog純文@ Re:方丈記にあまり触れない方丈記(03/03)  おや、今猿人さん、ご無沙汰しています…
今猿人@ Re:方丈記にあまり触れない方丈記(03/03) この件は、私よく覚えておりますよ。何故…

© Rakuten Group, Inc.