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2009.09.18
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カテゴリ:明治期・耽美主義

  『春琴抄』谷崎潤一郎(新潮文庫)

 先日家のそばの図書館に行って、いくつか借りた中からこんな本を読みました。

  『名作の戯れ』秦恒平(三省堂)

 秦恒平氏の本は、確か大昔、大学卒論時(やー、懐かしいなー)に読んで以来ではなかったかと思います。
 この本には、二つの「文芸評論」が収録されてあります。ひとつは谷崎潤一郎『春琴抄』に関する評論、もう一つは夏目漱石『こころ』に関する評論です。

 どちらも、かなりいろんなところで、おそらくは顰蹙を買ったであろう大胆な仮説であります(懐かしいです。確かにこの筆者は、こんな感じでした)。二つあるうち、僕は、谷崎の方に、より説得力を感じました。『こころ』の読みは、ちょっと無理があるように思いました。

 でも、『こころ』の方を、先に簡単に紹介してみます。
 そういえば何かの本で、この筆者がそんなことを言っているというのを、ちらりと読んだ気がすることを思い出しました。
 簡単に言うと、こんな内容です。

 「先生」が自害したあと「奥さん」と「私」(一部二部の一人称の青年)は結婚し、子どもまでできようとしている。

 うーん、ちょっとこれはなー、と今でも思いますが、ただこの説を採ると、先生の自殺がなぜこの時機に決行されたのか(明治天皇崩御後の乃木将軍の殉死に触発された、実はわかったようなわからないような「明治の精神への殉死」という理由でなく)という疑問と、自殺を決行するにあたって、残される「奥さん」のことは何も考えなかったのかという「先生」の自分勝手さへの非難が、かなり解決・緩和されます。

 つまり、「先生」は、「奥さん」を「私」に託すことの確信を得たので、後顧の憂い無くKに殉じたのだと読むわけですね。

 これはちょっと面白いですね。
 ただこの説の裏付けとなる本文の読み方が、ちょっと「牽強付会」な気がしました。
 それに、「私」と「奥さん」が夫婦になるってのも、どうですか、うーん、ちょっと感覚的に違和感がありませんかね。

 そしてもう一方の、『春琴抄』についての文芸評論であります。
 ここにもかなり大胆な仮説が展開されています。
 どんな大胆な仮説かと言いますと、あの『春琴抄』のクライマックスのひとつ、賊が春琴の顔面に熱湯をかけるというところのことですが、あれは「春琴の自傷」だったのだという仮説であります。
 これもなかなか、なんと言いますか「突飛」といいますか、大胆な仮説ですね。

 以前から僕も少し、あの部分について、犯人は「賊」ではなくて佐助自身であるという説があることは知っていましたが、春琴の自傷というのは初めて読みました。

 しかしその論証については、うーん、ちょっと贔屓目に見ても「玉石混合」、ですかね。
 なにより筆者が、少し過激に興奮気味で、「大人げない」感じがしました。
 まぁ、なんとかひとつの読み方としては、理解できないことはない程度かな、という感じでした。

 というわけで、久しぶりに読む「文芸評論」は、それなりには面白くはありましたが、筆者の主張については、どうも後まで気にかかるところが残りました。

 で、『こころ』と『春琴抄』ですから、単純に文庫本の厚みで考えて、とりあえず後者かな、と。(『こころ』の再読も捨て難けれど。)

 ということで、最初は、秦恒平氏の読みを確認するつもりで読み始めました。
 ところが、やはり谷崎はうまいものですねー。
 考えてみれば『春琴抄』を読むのは、きっと大学四年生時以来でありましょう。
 (卒論なんかで選んでしまうと、その後読み直すなんてことは、よほどのことがない限りないんじゃぁないでしょうかね。そんなことありませんかね。)

 とにかく、やはり谷崎作品はたっぷりと贅沢で、あっという間に、「谷崎ワールド」に(昔はこんな言い方しなかったですよねー。でもきっと谷崎は、村上春樹以上に「ワールド」にふさわしい作家であります)、引き込まれてしまいました。

 さてその顛末は、次回に。


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Last updated  2009.09.19 05:01:28
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