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カテゴリ:昭和期・二次戦後派
『花影』大岡昇平(新潮文庫) 大岡昇平といえば、やはり第一印象は「戦後派」ですよね。 高校の国語の教科書にも載っていた『野火』、その後僕も読んでみました。 すでにだいぶ昔の事なので、細かいところは忘れてしまったんですが、確か 「極限状況におけるインテリゲンチャの苦悩」 という印象を持ちましたね。極めて観念的・形而上学的な小説で、それが悪いとは決して思わないものの、何故かその頃の私にとっては、少々興味の対象外というイメージを持ったのを微かに覚えています。 今回、少しだけぱらぱらと、文庫本のページを繰ってみたのですが、本当に、キッチリ見て、キッチリ書いてありますね。やはり、理のまさった書きぶりだなーと、思いました。 こういう理の勝り方って、ひょっとしたら第一次戦後派の共通項でしたっけ。何かそんな気がしますね。 その後、こちらも読みました。『俘虜記』です。 大岡氏の小説の第一印象があまりよくなかったもので、いつものようにブックオフ105円本でありながら(かつあれだけのボリュームでありながら)、少し(ほんの少しだけ)買うのを躊躇した本です。 ま、しかし、買って、読みました。 これは読むのに時間が掛かりましたねー。なにしろ、長い。 それにこの本は、小説と言うより「記録」なんですね。 作者がミンドロ島で米軍の俘虜となったその事実を、ドストエフスキーの『死の家の記録』ばりに片っ端から書いて、そして分析・考察しているわけです。これは、しんどい。 でも、去年の後半くらいから、こういった第二次大戦後の「戦後派」の小説群をぼつぼつ読んでいますが、みんな真面目ですよねー。実に誠実に、時代と自分について分析・考察していると、つくずく感じます。頭が下がりますよねー。 でもそのおかげで作品が「重く」なりすぎて、その後あまり読まれなくなってしまったわけでしょうが。 というわけで480ページもある本でしたが、あまり面白くもなくも、しかし、とても感心する本ではありました。 自らについて真面目に誠実に振り返る事なんて、わたくし自身ここんところあまりありませんもので、『野火』の時と一転して、この筆者の小説も、もうちょっと探して読んでもいいかなと思いました。 そして、冒頭の小説に至ったわけです。 冒頭に、大岡氏といえば、「戦後派」イメージと書きましたが、実はこの筆者は昭和の初めより文学研究者(スタンダール研究)としてすでに一定の評価を持っていた人だったんですね。 そんな人が戦地に行き、捕虜になり、そのことを小林秀雄に文章にしろと勧められて、そして、人生の新しい局面が開けたわけですね。 人生って面白いですね。 さて、本作を読みながら、僕は、ずっと一つの事が気に掛かっていました。 よく考えれば、この作品だけでなく、僕は小説を読む時、ほとんどいつも頭のどこかでそんな事を考えている事に気が附いたのですが、いわく、こんな事です。 「なぜ筆者はこんな作品を書いたのか」 こういった作品理解の仕方は、どうも今は全然流行じゃないみたいですね。 今は、作品から作者に関係する要素はことごとく取り外して、ついでに作品も要素レベルに分解して、なんか「コード」って言うんですか、そんなのに変えてくっつけたり離したりして読むのが流行だそうですね。 まー、もちろん、多くの偉い文学者の先生方がなさっている事ですから、それなりに重要な意味と価値があるんだろうとは考えますが、ロートルな僕としては、少し、淋しいです。 ともあれ僕は、「なぜ筆者はこんな作品を書いたのか」を切っ掛け並びに先導にしつつ、この小説を読んでいったのでありました。 次回に続きます。 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓ 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末 /font> にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.10.17 07:24:24
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