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カテゴリ:大正期・大正期全般
『陰獣』江戸川乱歩(春陽文庫) 以前にも一度、本ブログでも触れたことのある文庫本ですが、この本。 『文学全集を立ちあげる』丸谷才一・鹿島茂・三浦雅士(文春文庫) 奥付を見ますと、2010年2月発行となっています。去年発行の比較的新しい本です。 架空の文学全集を作ると言うことで、そこにどの作家を収録するべきかについて、三人の筆者達が侃々諤々の鼎談をするという本です。 これが、結構おもしろいんですね。 例えば、芥川龍之介の巻は本当に必要か、なんて事まで話し合っています。 普通の近代日本文学史的常識で考えると、芥川なんて入って当然の作家についても、そんなところから話し合っているんですね。 ちょっとおもしろいので、その部分を抜き出してみます。 三浦 僕は極端に言うなら、中島敦入れるなら、芥川はいらないと思う。 鹿島 えっ。それはできないでしょう。 三浦 じゃあ、一巻じゃなくて、二分の一巻。 たとえば佐藤春夫と抱き合わせ。 丸谷 僕もそんなもんだと思うな。 と、こんな感じです。 こんな話のどこがおもしろいかというと、どの作家の作品をどのくらいの分量で取り上げるかということは、つまりその作家・作品の「評価付け」をすることになるからです。 この本のテーマでいうと、「まったく新しい文学観・いま読んで面白いもの」という大原則で、歴史上のあらゆる作家を縦横無尽・言ったもん勝ちにぶった切って再評価するってのが、おもしろいんですね。 で、僕はこの本を読む前に、密かに二人の作家の再評価について、果たしてどんなものになるかと興味を持っていました。 そのひとりは、山田風太郎であります。 本ブログでも、取り上げたのは一回だけですが、彼に触れたり彼の作品の部分を取り上げたのは再三でありますし、何よりも私が大好きな作家なんですね。 そこで注意して読んでいたのですが、うーん、評価、余り高くありません。 ほとんど触れられていません。こんな感じで少しだけ。 鹿島 僕は山田風太郎と司馬遼太郎を比較して、『警視庁草紙』のほうが上だ! ということを密かに言いたかったんだけど。 (略) 丸谷 風太郎は、最初からこれは嘘っぱちですよ、というので、ケツを まくってやっているでしょう。だから、その嘘っぱちな世界に同 調してしまえば面白いわけね。それが同調できないときには、別 にどうってことないんだね。 そしてもう一人の作家が、江戸川乱歩であります。 ところがこちらは、結構高い評価です。 乱歩を取り上げるかどうかなんて話は一切なしです。収録が前提でこんな感じで話し合っています。 丸谷 江戸川乱歩。これを一巻にするか二分の一巻にするか。 三浦 一巻は無理。三分の一か四分の一。 鹿島 僕は、乱歩はもうちょっと再評価していいと思うよ。確かに小説 としての出来ははなはだ悪いよ。だけど、それとは別の次元で、 江戸川乱歩の評価は一巻入れてもいいような気がする。『一寸法師』 とか、『芋虫』とか、エログロ系のへんてこりんな作品があるで しょう。その変ちくりんぶり、つまり「変態」というものをつく り出したことは評価したい。それに、後の推理小説に与えた影響 を考えると、入れないわけにはいかないでしょう。 とまぁ、こんな評価で、この後も谷崎潤一郎と比較しながら、三人はもうしばらく話し合っています。(天下の谷崎との比較!)さらにその後も、安部公房との比較(!)でまたちらっと名前が出てきたりもしています。 さて、冒頭の作品の読書報告ですが、私がこの小説(『陰獣』)を初めて読んだのは、今でもはっきり覚えています。高校一年生の時でした。 クラスメイトに推理小説ファンのK本君がいて、彼が貸してくれたのです。 しかしなぜこの小説が選ばれたのか迄は忘れてしまいました。なぜ乱歩で、なぜ『陰獣』だったんでしょうね。 とにかく、私の読後感としては、すっごく気持ちの悪い話だったというのがずっと(それこそ今回再読するまで)残っていました。 ところが今回読んでみて、はて、あの頃の私はどこを気持ち悪いと感じていたのか、まるで見当が付きません。 この小説は、きわめて「乱歩的常識」に従った、いかにも「乱歩的本道」の小説ではありませんか。 うーん、きっとあの頃の私は「ウブな紅顔の(美)少年」だったんでしょーねー。 ということで、この短編集中には(『陰獣』が全体の四分の三くらいの長さで、後は三つの短編小説が入っています)、鹿島茂が発言した『一寸法師』も「変態」性欲(サディズム・マゾヒズム)も入っています。 私としては、『芋虫』や『人間椅子』や『押絵と旅する男』などに比べると、「変ちくりんぶり」がすこし物足りない感じもしますが、十分「エログロ系のへんてこりんな」乱歩的「健康優良」小説であります。 とても面白かったです。 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓ 俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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