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2011.05.21
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カテゴリ:大正期・白樺派

  『友情』武者小路実篤(岩波文庫)

 えーっと、今回私は、近代日本文学史上極めて有名なこの小説を読んで、つくづくいろんな事を、ホントいろんな事を考えました。
 それは、本作についてだけではなくて、本作から触発され、派生したいろんな事柄であったりもするんですが、それでもとにかくそんなこんなを引っ張り出してくれたのは、何といってもこの小説の力であり、いやー、まったく、わたくしはこの小説を、近代日本文学を代表する「名作」とまでは依然思わないものの(えー、すみません)、私個人の中では、なかなかいろんな力を持った「快作」であると、大いに思うに至りました。
 では、もう少し、順を追って考えてみますね。

 この小説を読んだのは、私は二回目であります。
 なぜそのように読んだ回数を断言できるのかと言えば、前回本作を読んだのは、私の高校時代でしたが、私は本作を読んで浅はかにも

 「くだらねー! 二度と武者なんか読むもんかー!」

と思ったのを、今でもはっきりと覚えているからであります。

 「♪若いという字は、苦しい字に似てるわ~」

 という歌が昔ありましたが(これ、あんまり関係ありませんかね)、しかし実際、人と人との出会いだけではなく、本との出会いについても、ちょっとボタンを掛け違えると修正するのにすっごい時間が懸かることが、この件からもつくづくと分かります。(単にお前が愚かなせいじゃないかという見方も、まー、確かにありますがー。)
 私は、自分の中の武者小路実篤像の修正に、30年ほどもかかって、そして未だに十分修正しきれないでいます。コワイもんですねー。

 今回本作を読み終えて、私は、大いに感心しました。
 今、「感心」と書きましたが、なぜ「感動」ではないのか。
 感心と書いて感動と書かないのは、くだらぬ「強がり」、おのれの権威付けではないのか。

 「反省したと言いつつ、まだおのれを棄て切っていないではないかっ!」

 ……まー、そんな気もしますが、とにかく、私は感心しました。
 感動と書かなかったのは、シンプルに言えば、私が年を取ったからですね。

 しかし、では十代でこの小説を読んでいたら私は感動していたのかと言えば、それは既に上記の通りであります。リフレイン。

 「くだらねー! 二度と武者なんか読むもんかー!」

 まーそれは、十代の私が、ヘンに拗くれた文学青年であったということもありましょうが、その程度の多寡は置くとして、そもそも本作の特質の一つとして、十代で読めば「侮ってしまう」という要素が、十分にあるとわたくし思うんですが、いかがでしょうか。

 今、「侮ってしまう」と書きましたが、それは

 (1)若者に、本作並びに筆者をも侮らせるものである。
 (2)若者に侮らせる力は、本来本作が持っている力である。


 十代のヘンな文学青年は(私のこと並びに、私のようなおっちょこちょいのことですね)、この作品の中に張り巡らされた重層的・輻輳的な作者の視点に気づききれないと私は思います。(えっ? そんなことに気づかないのはお前だけだって。)
 だとすれば、この小説は、極めて不思議な特質を持っていることになります。
 
 「感動するはずの世代の者には侮られ、感動できるようになった時には、既にその世代には感動する能力がない。」

 ……うーん、ここまで書いてきまして、今回はどうもちょっとわたくし調子が「ヘン」な気がします。調子、悪いです。
 ひょっとしたらこれって、この私の「変調」の原因は、本作のせいではないかしらん。
 私はやはり本作に「感動」していて、その余韻がまだ残っているのではないかしらん。

 そーかー。やはり感動の名作なのかー。
 ……あ。ちょっと、アタマ、冷やしてみますね。次回に続きます。


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Last updated  2011.05.21 05:31:12
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